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学園編
其の十七
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愕然としたままの従兄妹でもあったルイズ殿に視線を向けたお嬢様が、呆れた顔をして溜息を零し、鈴を転がした様な可愛い声から零れる、容赦のない言葉。
「叔父様が奮闘されている姿を見ていらっしゃるのに、役に立ちませんこと」
「そ、それは…っ、ローザリアの側に居ると、幸せな気持ちになって他の事が考えられなくて!」
「それってー、魔法みたいですよね!」
無邪気に零したイスラの言葉に、その場にいた全員の視線がボールド男爵令嬢へと向けられました。その事に気がついていないのは、発言をしたイスラだけです。後で周りを見ろとの教育も必要なようですね。
「確かあったんですよね、昔お嬢様に助けて頂く前の話なんですけど、アイクロメア王国では魔道具もありましたけど。確か『魔女の瞳』って呼ばれてます。何でも自分の言う事を聞かせようと、我が儘な女の子が使っていたんですけど、僕は気がついたらライラクスにいましたから」
「それが魔道具なら、相当力の強い物だな。国宝級かもしれない」
「え?そうなんですか?」
「イスラが逃げられたのも、貴方の力が働いたのでしょう。何にしても、私利私欲でそんな物を使ったという事は、十分犯罪ですね」
全員の瞳は、しっかりとボールド男爵令嬢を捕らえていた。『魔女の瞳』がリーユお嬢様がお持ちの力と同じ『魅了の瞳』だとすれば、十年以上前にアイクロメアの王妃が逃げるときに持ち出した、魔道具の可能性がある。
先程から言葉を発しないボールド男爵令嬢を見ると、強気に歪んでいた口元が震えている。そして顔色も青ざめていたのから最早白くなっている。
「決まりましたわね、ゼルク」
「はい、お嬢様」
「衛兵、あの娘を城へ!聞かねばならぬ事が山ほどありそうだ」
「はっ!宰相様」
「いや!来ないで!何よ、悪役ならちゃんと悪役をやりなさいよ!どうして私が捕まえられなきゃいけないのよ!何よ魔女の呪いを受けてる悪役令嬢のくせにーっ!」
素早く背後に回ったゼルクが、ボールド男爵令嬢を捕らえ地に押さえ込みました。私達の愛するリーユお嬢様を嵌めようと考えただけでも、死に値します。話を聞くだけでは、勿論済みませんでしょうけど。
「何を喚いているのか理解出来ませんが、リーユお嬢様が悪になる事はありません、私達が全力でリーユお嬢様を正義と致しますので」
「リーユ様は私達のたった一人の天使」
「お嬢様は穢れなき姫君」
「僕達が御守りする限り、リーユお嬢様が地に伏すことなど有り得ません」
ハッキリと断言する私達に、信じられないと言いたげな目を向け、連れられていくボールド男爵令嬢。しかし、リーユお嬢様の横を通り過ぎようとした瞬間、リーユお嬢様が扇を開き口元を隠すと何やらそっと囁かれました。
「力というものは、こうやって使いますのよ。お馬鹿さん」
にっこりと微笑みを浮かべお見送りになられたのですが、絶望したボールド男爵令嬢の顔を見たのは、其れが最後となりました。
「リーユお嬢様、御戯れが過ぎますよ」
「今日はお父様をお見送り致しますわ、ヴァル、ルファ、ゼルク、イスラ帰りましょう」
「はい、畏まりました」
揃って一礼する私達に、悪戯が成功した様な無邪気な笑みを浮かべ、リーユお嬢様は旦那様の腕に手を絡ませるとご一緒に学園を後にされました。
「叔父様が奮闘されている姿を見ていらっしゃるのに、役に立ちませんこと」
「そ、それは…っ、ローザリアの側に居ると、幸せな気持ちになって他の事が考えられなくて!」
「それってー、魔法みたいですよね!」
無邪気に零したイスラの言葉に、その場にいた全員の視線がボールド男爵令嬢へと向けられました。その事に気がついていないのは、発言をしたイスラだけです。後で周りを見ろとの教育も必要なようですね。
「確かあったんですよね、昔お嬢様に助けて頂く前の話なんですけど、アイクロメア王国では魔道具もありましたけど。確か『魔女の瞳』って呼ばれてます。何でも自分の言う事を聞かせようと、我が儘な女の子が使っていたんですけど、僕は気がついたらライラクスにいましたから」
「それが魔道具なら、相当力の強い物だな。国宝級かもしれない」
「え?そうなんですか?」
「イスラが逃げられたのも、貴方の力が働いたのでしょう。何にしても、私利私欲でそんな物を使ったという事は、十分犯罪ですね」
全員の瞳は、しっかりとボールド男爵令嬢を捕らえていた。『魔女の瞳』がリーユお嬢様がお持ちの力と同じ『魅了の瞳』だとすれば、十年以上前にアイクロメアの王妃が逃げるときに持ち出した、魔道具の可能性がある。
先程から言葉を発しないボールド男爵令嬢を見ると、強気に歪んでいた口元が震えている。そして顔色も青ざめていたのから最早白くなっている。
「決まりましたわね、ゼルク」
「はい、お嬢様」
「衛兵、あの娘を城へ!聞かねばならぬ事が山ほどありそうだ」
「はっ!宰相様」
「いや!来ないで!何よ、悪役ならちゃんと悪役をやりなさいよ!どうして私が捕まえられなきゃいけないのよ!何よ魔女の呪いを受けてる悪役令嬢のくせにーっ!」
素早く背後に回ったゼルクが、ボールド男爵令嬢を捕らえ地に押さえ込みました。私達の愛するリーユお嬢様を嵌めようと考えただけでも、死に値します。話を聞くだけでは、勿論済みませんでしょうけど。
「何を喚いているのか理解出来ませんが、リーユお嬢様が悪になる事はありません、私達が全力でリーユお嬢様を正義と致しますので」
「リーユ様は私達のたった一人の天使」
「お嬢様は穢れなき姫君」
「僕達が御守りする限り、リーユお嬢様が地に伏すことなど有り得ません」
ハッキリと断言する私達に、信じられないと言いたげな目を向け、連れられていくボールド男爵令嬢。しかし、リーユお嬢様の横を通り過ぎようとした瞬間、リーユお嬢様が扇を開き口元を隠すと何やらそっと囁かれました。
「力というものは、こうやって使いますのよ。お馬鹿さん」
にっこりと微笑みを浮かべお見送りになられたのですが、絶望したボールド男爵令嬢の顔を見たのは、其れが最後となりました。
「リーユお嬢様、御戯れが過ぎますよ」
「今日はお父様をお見送り致しますわ、ヴァル、ルファ、ゼルク、イスラ帰りましょう」
「はい、畏まりました」
揃って一礼する私達に、悪戯が成功した様な無邪気な笑みを浮かべ、リーユお嬢様は旦那様の腕に手を絡ませるとご一緒に学園を後にされました。
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