悪役執事

梛桜

文字の大きさ
上 下
3 / 32
プロローグ

其の三

しおりを挟む
 一応王太子からの手紙を執事に見せても良いのか悩みますが、リーユお嬢様からの信頼の厚さは昔からです。リーユお嬢様が五歳の幼少の頃から護衛も兼ね専属として御使えしておりますので、見せて頂けたのだと思います。

ー が。

 リーユお嬢様が困惑するのも当然でした。まさかこんな意味不明の内容とか。この国終わってますね。

『レリーユエル=ヴェルヴェーヌ公爵令嬢殿

 話があるので本日、中庭にて待つ。

            エアレズ=アイクロメア 』

 
 日付は?時間は?コレを書いたのは何時なんですか?書いて其の日に指定をするなら、郵便配達を頼まず城に居る早馬を出しなさい。とまぁ、色々言いたいことは有りますが、これは旦那様に要相談としか言いようがありません。この王太子頭悪くないですか?教育係はとんだ無能ですよね。

「明日の行事に何か御参加を?」
「私は留学生ですもの、免除されているわ。そもそも王太子殿下と何かを一緒になんて、絶対に嫌よ」

 確かに、リーユお嬢様は初めてアイクロメアの王太子殿下にお逢いになった時、とても嫌な思いをされたと旦那様より聞いております。ですから、自分から近付いていくなんて事はありえません。というか、私がさせません。

(封筒の封蝋は確かに王家の物、ですが…。筆跡が表と裏では違うような…?)

 そもそも、リーユお嬢様はここ二週間程、授業の予定が無かったので、学園には登校されておりません。極寒の寒さの中、こんなにも儚げなリーユお嬢様を中庭といえど外に呼び出すなど以ての外です。
 花の月の朔の日だとしても、漸く暖かくなってきたばかり。大切なリーユお嬢様を、幾らアイクロメアの王太子殿下だからといえ気軽に呼び出さないで欲しいものです。

「旦那様に至急ご連絡を」
「お願い、こんな意味不明の手紙にわざわざ手を煩わせてごめんなさいね?ヴァル」

 着替えを済ませて一階の食堂で朝食を取るとリーユお嬢様が仰ったので、私はそこで侍女と交替して、食事の支度をしているルファエルに話しをする為に、一旦食堂へと向かう。本来なら、リーユお嬢様の着替えを扉の外で待ち、いつも付けられている瞳を隠す為のヴェールを付けるのが私の役目だったのに。

(王太子といえど、私の朝の楽しみを奪うなんて…。徹底的にやらせて頂きましょうか)

「旦那様にお手紙ですか?」
「ああ、急ぎ頼みたいんだが、日にちを思うと手紙の主がこの屋敷に乗り込んで来そうなんだ」
「それでしたら、僕の鳥を使いましょう。ゼルクとイスラを屋敷から離れさせるのは得策ではありませんから」
「そうだな、ゼルクも騒いでいないから大丈夫だとは思うが、速い方がいい」
「面倒な相手ですか?」
「ルファエルに頼む程ではない」

(この手紙の王太子殿下が、昔のままなら私だけでも軽く追い払える)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

婚約破棄にも寝過ごした

シアノ
恋愛
 悪役令嬢なんて面倒くさい。  とにかくひたすら寝ていたい。  三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。  そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。  それって──最高じゃない?  ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい! 10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。 これで完結となります。ありがとうございました!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

処理中です...