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一年目。
日常其の一
しおりを挟むおはようございます、アメーリア=アトランティですわ。
クラスター学園に入学し、そつなく入学式も終え、一年生の間はゲームの柵も何も無いと思って居ましたが、イヤイヤイヤ、甘かった。
「リモナイト王子様、マウシット様!おはようございますぅ~!」
「また貴女ですか、モルガ男爵令嬢。廊下は走らないように」
「あっ!ごめんなさい、私ってば!お二方を見つけたので早く挨拶したくてついっ!」
ハートとか星が飛びそうな甘えた語尾と甘える声、もう一人のヒロイン『ルチルレイ=モルガ』男爵令嬢は強かった。この人絶対転生者ですよね、って確信するくらいに鋼の心臓だった。
王立の学園とはいえ、メインはやっぱり貴族が多いので、一年の間は階級を考慮されてクラス別けされました。本番のゲーム開始は二年生からですので、のほほんとしていた私もあれだったのですが。
(ルチルレイさんや、貴女のクラスは二つ向こうのBクラスですよ…)
王族と公爵・侯爵・辺境侯の爵位の令息令嬢は少人数制のSクラス、辺境伯・伯爵・子爵はAクラス、男爵・騎士爵以下はBクラス。これは成績の良し悪し抜きです。まずは近くの爵位で学園に慣れましょうって計らいだそうです。
そう、攻略対象者は殆どSクラスなので、Bクラスのルチルレイさんは面識を持てないのです。
ですが、攻略方法を知っているルチルレイさんはそんな事お構いなしだった。
入学式では朝早くから登校していたはずなのに、式の途中で遅れて登場。これは何かのテンプレでもなぞったのか?このゲームは二年生からなので、入学式遅刻はラズーラ殿下からすれば減点対象だと思います。入学式後に教室でリィ様の機嫌最悪でしたので、マウシット様からも評価はマイナス。
初心者用ヒロインなので、好感度はアメーリアに比べて高めといっても、一年の間でこんなに悪い印象を与えるのはどうなんでしょう?
「あの、もうそろそろ授業開始になりますので、その辺りで」
「アメーリア嬢…」
「ひっ…!わ、私、ラズーラ王子様にもご挨拶してきますね!マウシット様、リモナイト王子様また!」
「ですから、廊下をっ!」
(一般常識が違うんだと思うけど、勉強を選択するゲームコマンドあったから、勉強をして能力を上げる考えがあるはず。でも、私が何か話そうとしたら睨まれるし、態と怯えた風にして逃げるし…。いまからラズ様達に挨拶に行ったりしたら、授業に完全遅刻ですよ。サボりですか?)
私も最初のうちは、Aクラスに推しを見に行きたいのを我慢してるんですけどねー…。偶然でもちらっとアズライト様を見れないかと期待しているんですけど、Sクラスって上位貴族のクラスな所為か、移動教室が無いんですよ!ジャスパー様と仲良くしていればいずれ紹介して頂ける予定なんですけどね。
あと、どうせなら同じ転生者どうしゲームの萌え語りとかしたかった。ルチルレイさんとは絶望的なのかもしれなくて哀しい。
ルチルレイさんはリィ様とマウシット様に話しかけた後、ラズ殿下とアイクお兄様とジャスパー様を見つけ、スカートを翻しながら走り去っていきました。
(だから、少しはお淑やかさってやつを…無理か。あんなに元気な子なら、言っても駄目っぽいな)
「全く、クラス別けされている意味を分かってないのでしょうか」
「一応学園では、身分は関係ないとされてますからね。最初は学園に慣れる為の計らいですし」
「それでも、多少はマナーを身につけていてもおかしくないのですが」
「夏季休暇以降の授業で、Bクラス以下は特別マナーの授業があると学園の案内書にもありましたわ。今だけですよきっと」
「そうかなー?僕はそう思わないよ」
「リィ様…」
マウシット様イライラが最高値です。無口・無表情になっているリィ様も同意見のようで、深い溜息が零れています。それでも、私のお渡ししているお菓子をギベオンと一緒になって食べているあたりは、通常運転です。ギベオン、狼の時は机に前足乗せちゃ駄目ですよ。
「あ、このクッキー美味しい!」
『我にもよこせ!』
「ぎい欲しいの?あ、ごめーん。これ1枚しかないねー」
「がう!」
「リィ様、ギベオン。まだ此方にありますから」
(初心者用ヒロインでの攻略はあまりしてなかったんだけど、こんなにアクティブな性格だったかなぁ?アメーリアは気位が高いって感じで、ルチルレイはもっと純朴というか天然っぽいっていうか、可愛い?)
私がヒロインにアメーリアを選んでいたのも、推しと沢山話せる他に、ヒロインとして好きなタイプだったからなのもあります。真面目で頑張りやなのに、其処は見せずに努力するっていう。
ルチルレイは可愛いなーとか娘に欲しいなーとか、愛でる対象だったんですよね。幸せにしてあげたくなるヒロインさんで、好感度は放置でもぐんぐん上がるし学園や恋愛を楽しむ為のヒロインだったんですよ。
(今も学園を楽しんでいると言えば楽しんでいるんでしょうけど、違う気がする)
二年生になったら基礎学科のクラスではなく、魔法特進科、貴族科、騎士科、普通科に分かれるから、稀少属性のルチルレイさんともきっと一緒になると思うけど…。
ちょっと、気が重く感じてしまうのは仕方無いのか、私の我が儘なのか。
(でも、ルチルレイさんは、誰を攻略しようと思ってるんでしょう?)
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