攻略よりも楽しみたい!~モフモフ守護獣の飼い方~

梛桜

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魔法のお勉強

やっと判明しましたよ。

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    目の前に鎮座する大きな大きな水晶は、リモナイト様の手が触れた途端、半分までが黒く染まり其の後点滅するように緑色を照らした。

「これは……、普通の水晶では壊れても仕方無い魔力量です」
「半分というと、ラズーラ王子と同じくらいか。複数属性持ちで闇と風だな」
「ラズーラ殿下で半分より少し上、アトランティ家のアイドクレーズ殿で半分より下でしたから…。クラスター王家でも上位の魔力量です」
「次はアメーリアだな」
「えへへ、アリア!僕闇属性と風属性だって!」
「凄いですよ!リィ様」

 ニコニコ笑顔で戻ってきたリモナイト様は、撫でて撫でてと尻尾を振ってじゃれてくる。まるで小型犬の様な尻尾と耳が見えそうなくらいに可愛いです。思わず撫で撫でしてしまいます。もう本当は、ぎゅーってしたいんですけど、流石に王子様に其れをすると不敬罪ですので堪えています(ギリィ…ッと拳を握り締めて頑張れ私)
 魔術師長様とお父様が何やら話を交わして、お父様の視線が私へと向きました。小さく頷いて私もゆっくりと水晶へと手を伸ばします。優しく触れると一瞬にして黒く染まる水晶は、其の後ゆっくりと其の色を青と緑に変えて元の水晶へと戻りました。

「や、闇属性と水と風の複数属性」
「稀少属性のうえに、水晶を染め上げる魔力量か…」
「アリア凄いね!属性三つもあるよ!」

 驚きに言葉も出ない魔術師長様と、呆気に取られているのかお父様も言葉が出ないようでした。ギベオンと言えば、魔力量に不満があるのか若干難しい顔をしていますが、こんなものだろうとでも言いたげです。
 リモナイト様はキラキラとした笑顔で凄い凄いと飛び跳ねて喜んでくれています。勢い余ってぎゅっと抱き締められましたが、これ幸いと堪能します。(おまわりさん此処です、コイツです。)
    ああ、可愛い。リモナイト様可愛い尊い。
    まぁ、お父様にベリッと剥がされるんですけどね。いつもはアイクお兄様がにっこりと私を止めますので未遂です。

「ギベオン、不満そうね?」
「アリアの魔力量はもっとある」
「そんな事無いわよ、水晶だって変化ないでしょう?」

 何も映し出さない水晶を見上げていると、今までの適性検査を一緒になって見学していた光の神殿の神官様達が、何やら騒がしいです。ひっきりなしに水晶の間と外を行ったりきたりしてますよ。騒がしいなぁ。

(魔力量は確かに驚くかもしれないけど、其処まで騒がしくなるもの?)

 首を傾げていると、魔術師長様がこっそりと教えてくれました。今年、唯一見つかった光属性の女の子は、王宮の水晶でも半分以下の魔力量しか持たなかったと。光の神殿の神官長さえも、魔力量は王宮の水晶の三分の一程度です。
 つまり、ルチルレイの今の魔力量は、ジャスパー様よりも下という事で。

(いいのか!?初心者用ヒロインんんん??)

 光属性がついてるって事は、聖獣である『ハウライト』が一緒に居るって事でしょ?ギベオンと出逢ったのと時期が違うとか色々あるかもしれないけど、今日会ったルチルレイの様子からきっと転生者って事で、それなら魔法を面白がって試したりするものじゃないんですか!?
    え、私だけ?ゲームの育成に力入れるのってそんなに珍しい部類なの?だって恋愛もいいけど、私の最推しモブだし!

「アリア、頭の中が騒がしいぞ」
「煩い、今それどころじゃない」
「ルチルレイとは、さっき会ったあの女か?」
「初心者用ヒロインちゃんです」
「アレには確かに光の聖獣の加護は付いていたが、我とアリアの様な絆は全くもって無い」

 一人で廊下を歩いていたルチルレイ。きっと隠しキャラの神官長様を攻略しようと、此処に来ているはずですよね?だって、今は他の攻略対象者とは会えませんから。
 光属性が出ているなら、聖獣として側に居るはずのハウライトが居ないのはおかしい。だって、あの白ネコさんですよ?ふわふわした耳に、しなやかな尻尾。瞳は確か金色で初心者用だから、とりあえず全キャラ一周だけはしたけど、どんなにあのハウライトの頭を撫で撫でしたかったか!猫の姿で肩に乗るとか是非やってくれ!
 まるでお抱えの執事とか従者のように、微かに表情を変えて『ルチルレイ様』って付いてくる光の聖獣様は、もしかして今はルチルレイの実家の屋敷で留守番をしているというの?

「初心者が何かは知らんが、光の聖獣は代替わりしたと闇の精霊が言っていた」
「代替わり?」
「まだ、何も知らぬ聖獣に成りたての子供だ」
「それって…」
「主となる者が成長する事で、聖獣としても育つという事だ」
「なんてこった、私が是非とも育てたい」
「アリアは我のものだ」

 私の呟きに拗ねてしまったのか、ギベオンに抱き上げられて強く抱き締められた。宥める為によしよしと頭を撫でてどさくさ紛れに耳をふにふにして、旋毛の辺りに軽くキスを落とした。拗ねたギベオンは、こうやって甘やかしていると機嫌を直すというちょっと子供っぽい所があるのです。めんどくさいけど可愛いですよね。

 拗ねてしまったギベオンがさっさと屋敷へと帰ろうとしてしまったので、リモナイト様も一緒にギベオンに抱き上げてもらい、お父様と魔術師長様をお呼びして帰る事にしました。
 ウキウキと光の神殿を後にした私達でしたが、私達が帰って直ぐ後。音も無く大きな水晶は崩れ落ちたそうです。欠片で王宮用の水晶は作れたそうですから、新しいのを見つけるまで当分は大丈夫…ですよね?

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