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幼少期を楽しみましょう
推しへの道標
しおりを挟む人を惹き付ける真っ赤な炎の様な髪、なのに優しさを醸し出す琥珀色の瞳、アイクお兄様と同年代なのに、大きな身体は絶賛鍛えている最中なのでしょう。今はまだですが、成長すれば腰が砕ける低音ボイスですよ。前世でその声に堕ちて貢いだお嬢様方は数知れずでしたよこの犯罪者(語弊)
テーブルに置いていたクッキーを摘み、パクパクと食べていくお友達様。食べてもいいけど、リモナイト王子の分は残しておいてくださいね?ケーキは渡したけど、クッキーも大好きだから食べに来ると思うんですよ絶対。
(そういえば、今日はラーヴァにもお菓子を用意してきたから大丈夫とは思うけど、ねーたまおっちいね!ってニコニコしながら食べるの見れなくて私涙目。アレが私の製作意欲の源なのになぁー)
「そういやアイク、子供捜してるんだけどよー」
「自分だって子供だよね?それに今日はラズ殿下に合わせて子供ばかりだよ」
「うっ、いや、ちょっと世話を頼まれたんだよ!グラッシュラー伯爵家の二男なんだけど」
「世話を任されたのに目を離したの?何をしてるんだよジャスパー役立たずだよね。残念ながら僕は可愛い妹のエスコートをしているから、グラッシュラー家の御子息には会っていないよ。あ、それと妹を紹介するつもりは無いからさっさと捜しに行って来い」
(アイクお兄様が笑顔で辛辣です…よ?あれ?)
ニコニコの綺麗な微笑みを浮かべたまま、ジャスパー様に対する辛辣すぎるアイクお兄様が凄い。追い出す勢いで捲くし立てられ、ジャスパー様涙目ですご愁傷様です。お菓子持って行ってくださいませ是非とも。
ソワソワしながら二人を見守って居ましたが、すごすごと人捜しに向かうジャスパー様哀れ。でも、ジャスパー様を紹介して貰えなかったの痛い。哀しい推しが遠のいた泣きたい。
設定どおりならアイクお兄様と同じ年のはずの、王道王子様に従えるこれまた王道の護衛騎士。その人気は夢を見る少女達だけではなく、我が家の麗しいアイクお兄様とセットでそっち系の妄想を滾らせる御姉様方の人気No.1でした。魅惑の低音ボイス、ジャスパー=ロードナイト様は勿論攻略対象者です。攻略すると魔法騎士となってジャスパー様と一緒に国王陛下に仕えるのです。そのまま妻になるというのもありますけどね。
「宜しかったのですか?アイクお兄様」
「うん、ちゃんと挨拶を出来ない動物に、可愛いアリアを紹介出来ないからね。それにしても結構食べて行ったけど、リィ殿下の分は大丈夫?」
「はい、こちらにこっそりと取り分けておりますわ」
何てことだ、挨拶はちゃんとしましょうよジャスパー様の馬鹿。暫定ジャスパー様のままじゃないか。いつも名前を教えてくれる吹き出しでも『???』のままなんですよー、紹介しないとちゃんと表示されないじゃないですかー。
「アイドクレーズ、アメーリア嬢お久し振りです。参加されていたのですね」
「久し振りだねマウシット、今日は君も参加していると思ったよ」
「お久し振りで御座います、マウシット様」
同格の侯爵家であり、現宰相の嫡男マウシット=カルシリカ様。銀フレームの細い眼鏡を軽く上げ、視線を私へと向けてくる。この凍えそうな視線、何故か目の敵にされているようで落ち着かない。ご本人は眼鏡キャラで結構好みなんですけどね、この方本当に礼儀に厳しいんです。頭も良くて綺麗な顔をしてるし、笑ったら可愛いのになぁ…マウシット様。
私と同じ歳の七歳の侯爵家の嫡男で、この方も攻略対象です。青味のかかった銀髪に薄い青の瞳で、銀フレームの眼鏡をかけている。氷の貴公子と公式設定の通り、厳しく無表情が板についた美形です。攻略が成功すれば、侯爵夫人エンドか宮廷魔術師エンドです。マウシット様が宰相にまで上り詰めますので、それなりの能力と地位が此方にも必要となるのです。
「それは、リモナイト王子への…?」
「ええ、ご一緒に召し上がるようですわ。宜しければマウシット様も此方をどうぞ、先程幾つか召し上がっていかれた方もおりますし」
「え?リモナイト王子のお菓子を?」
「ジャスパーだよ、人捜しでお腹が空いたそうだよ」
「…仕方のない人ですね」
子供には似合わない呆れた溜息を零し、『折角ですので』とクッキーを摘んで口にいれる。途端に冷たかった顔に赤みがさして口元に浮かぶ笑みと、緩む瞳。可愛いなぁ。
マウシット様もクールデレとかで人気が出た人です。ですが、何故か妄想滾らせたお姉様方に大人気でしてね?ラズ殿下の嫁かジャスパー様の嫁として人気だった。アイクお兄様のライバルだったんです。裏の最大手だったのが懐かしい。いや、表でもちゃんと人気あったよ?ヒロインちゃんとの身分差とか、アメーリアとのハイスペ夫婦とか。
(アメーリアでの攻略スチルでは、綺麗に微笑んでいたスチルはあったけど、もう一人のヒロインの様に照れた笑みや崩れた笑顔は無かったなぁ。お人形さんのような美人なのに勿体無い)
「アイドクレーズ様、アメーリア様!」
パタパタと駆けてくる足音と名前を呼ぶ声に振り返ると、駆け寄ってくるのは可愛い男の子!ふわふわとした緑の髪に、癒しのエメラルドグリーンの瞳。私達を見つけて嬉しそうに微笑みを浮かべる癒し系の年下男の子。マーカサイト=ホーランダイト様。
公式で発表されてる五人の攻略対象者の最後の一人です。後輩枠ってやつです。この乙女ゲームで一番穏やかで、幸せなエンドを目指せるのはマーカサイト様です。伯爵夫人エンドか宮廷魔術師エンドですからね。お得意の癒し系魔法はホーランダイト家の専門魔法です。
「お久し振りです、いつも父上からお菓子を頂いています。ありがとうございます!」
「此方こそ、いつもラーヴァと遊んでくださってありがとうございますわ」
ニコニコと優しい空気が流れるそんな場所になるのが、マーカサイト様の特技かもしれません。このお茶会で攻略対象者全て揃うという事は、やっぱりこれから始まるのですね。オープニングが。
(だけど…、肝心のヒロインちゃん。来て無くない?おや?)
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