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プロローグ
目が覚めました。
しおりを挟む「ここは、どこ…?」
天蓋付きのふわふわなベッド、小さな子供が過ごすには広すぎな部屋は二間続きで、片方はピンクを基調とされたとても可愛らしい部屋。
例えるなら、ヨーロッパとかそんな辺りの、金持ちが持ってそうな屋敷の子供部屋の一室。
頭に流れ込んでくるのは、この身体の持ち主『アメーリア=アトランティ』が過ごした、これまでの記憶。今は五歳で、ベッドで目覚めたのはお昼寝をしていたからでした。
「……アメーリア=アトランティって、二人のヒロインが好敵手になって成長していくゲームのヒロインでしょ?しかも、侯爵令嬢の方って、高難易度のヒロインじゃない!」
記憶が情報として処理された後は、自分の元の記憶が巻戻る。絡み合うには、元に持っている記憶の量が多すぎて、幼女のアメーリアでは精神が負けてしまったのか、大人の私の意識の方が強い。
『目が覚めたら、乙女ゲームの高難易度ヒロインになってました☆』
って、なんでやねーん! 簡単に済ませられる訳あらへんやろ!
「いやいやいや、夢!?まさかの夢落ち!?何で今更乙女ゲームなのよ、自分が痛いわ!」
鏡の前で座り込み自分に対して突っ込みを入れていても、試しに柔らかなモチモチしている頬を引っ張ってみても、無駄だった。痛いものは痛い。
美幼女の赤くなった頬が痛々しい。誰だよ、こんな可哀想な事したのは!?私だよ!ごめんね、考えなしだったよ!
金色の腰までのサラサラストレートな髪も、人を惹き付けて放さないアメジストの瞳も、白い肌に薔薇色の唇。何から何まで可愛くて将来は美人のヒロインに絶対になると断言できる。あえて言わせて頂くのなら、こんな娘が欲しかった!着せ替えしたりぎゅーってして可愛がりたいいいいい!
「いやいや、落ち着け自分。そう、これは私だ、今の姿なんだ。ステイステイ」
(あー……。頭がオーバーヒート起こしそう)
もしかして、これがネットや小説で流行っていた『異世界転生』というやつなのでしょうか?そういう不思議体験は是非とも若くて元気な夢見る年齢の女の子に任せたかった。
(何が哀しくて、アラフォー主婦に回ってきたよ…)
自分の子供のような中・高校くらいの若い子なら、こんな夢のような世界は瞳をキラキラ輝かせていたかも知れない。だけど、私は人生の酸いも甘いも噛み分けてきた大人…のつもり。
そもそもこのゲームは、恋愛は勿論なんだけど、RPG要素も盛り込まれていて、自分が操作するヒロインを育成していかないと攻略が出来ない使用だ。恋愛イベントがおきなかったり、出逢えるはずの攻略対象と会えなかったりする。
(まぁ、その辺は前世の記憶っていうチートな部分が働いてるのか、覚えてる。うん。アメーリアでの攻略法も、もう一人の低難易度のヒロインのも覚えてるわ。無駄知識がてんこ盛りだね…)
どちらのヒロインでも、シナリオは好きだし、キャラデザインも大好きだ。声優にいたっては神配役で、それはもう即買い待ったなしだった。
メインである攻略対象者は五人。第一王子様(メイン攻略対象、ハイスペック王子様)・第二王子様(ツンデレ美人の若干ブラコン王子)・伯爵家嫡男(年上騎士様)・宰相嫡男(クール眼鏡)・伯爵家嫡男(年下癒し系)と要点は抑えていた。とんでもない設定の乙女ゲームではなく、王道の乙女ゲームだったのが特徴です。
「そう、攻略対象も本当によかった。良かったんだけど…!」
声を大にして言わせて貰うなら、脇役の声優にもお金を使い過ぎって事だ!私の一押し声優さんは、これまた一押しなキャラの声で、もうもう!!転がるしかないでしょう!?何度画面に向かって貴方を攻略させてくださいー!と喚いたことか。
しかーし!お気づきでしょうか?此処重要ですよ!皆さん!
「ふふふ…、攻略しなくてはいけないと誰が言った?幸い此処は乙女ゲームに良く似た世界(希望)。攻略をしなければいけないという縛りは無い!」
ぎゅっと拳を握り締めて立ち上がり、もう一度鏡の中の姿を見つめた。
これが夢なのか現実なのかは要検証案件だけど、目が覚めるのならば楽しむのもいいかもしれない。
今の見た目年齢は五歳くらい、ゲームスタート時には側に居た狼の守護聖獣の姿は無い。
これから出逢うのか、ゲームの中だけの設定だったのかは分からない。もし、アメーリアを育成する事無く怠惰に過ごしたとして、侯爵家の令嬢としては激しく叱られるのが簡単に想像できるし、駄目駄目令嬢と呼ばれるよりは、私は育成を頑張ってみたい。程ほどに。というか、育成ゲームは好きでしたので寧ろやりこんでみたい。
育成する為にはミニゲームで最高得点を出すのが一番でしたね。あとは情報として初心者設定のヒロインは初期好感度が高いとか色々あるんだけど、アメーリアをヒロインとして選ぶと攻略対象との関係性が低いのが一番。貴族なのに!此処大事、貴族なのに、攻略対象とは何故か好感度が低いままスタートなのですよ!何でかは公式にも出てなかったので知らん。
「今の知識からいくと、ゲームの設定通りなのは王侯貴族の社会で、魔法もあるし人族だけじゃなく獣人族も存在する。それなら、あの推しキャラにも出逢えるし、魔法を使える可能性だってある!」
画面越しに見つめていたサラサラふわふわモフモフなあの外見、ヒロインとして動かすアメーリアは何とも思ってなかったけど、モフモフ大好きな私には最高です!ドンと来い!そして、あわよくばあの一押しキャラと会話もできるかもしれないこの期待感。
「よっしゃー!目標、モフモフ撫で撫で!ついでに現れるなら、闇の守護聖獣の捕獲だー!」
腕を振り上げ気合を入れると同時に、寝室と子供部屋を繋ぐ扉が開き、其処に居たのはくりくりの大きな瞳を驚きに丸くした、これまた可愛い可愛い男の子でした。
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