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乙女ゲームの王子様
貴族の義務?(カーネリアン視点)
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「お父様!セラフィナお願いがありますの」
きゅっと胸元に両手を組んでお願いのポーズをとると、セラフィナは瞳を瞬かせて父上を見上げていた。昔から、お強請りをするときには大体このポーズをしていたが、最近は専ら父上用となっている。
(フォルスにならまだ効果があるけど、私やクレイオには効果が無いからね。ルシアンは一緒になって行動をするからお願いする必要もない)
お強請りされている父上といえば、外見は熊や魔獣並みに厳つい顔をデレっと蕩けさせて既に頷く準備は出来ているようだ。相変わらずセラフィナには甘い。
「どうした、セラフィナがお強請りとは珍しいな」
「あのですね、暫く第一王子を我が家に御泊めできませんか?」
「ん?」
「どうしたんですか、セラフィナ?最初は早くお帰り願いたいと話していたのに」
セラフィナのお願いに固まってしまった父上に代わって私が疑問を口にすると、言い難いのか視線を彷徨わせつつもジッと私を見つめる。理由があるにはあるけど、言っても大丈夫なのか気にしているのだろう。
「話が分かれば、私も王宮へと手紙を出せるからね」
「……弱いの、です」
「ん?」
「は?」
「フローライト領でも最弱といわれるDランクの魔獣と戦っても、今の第一王子殿下ではきっと負けますわ。セラフィナは、自分よ…んんっ、お父様や兄様方よりも弱い殿方の婚約者などなりたくありません!」
(今、自分より弱い男は嫌だと言い掛けたね?)
第一王子が弱いと言ってもセラフィナと同じ年齢だし、王宮で近衛騎士から武術は習っているはずだが…?首を傾げてふと涙を流して訴えていたはずのセラフィナを見ると、私と同じ事を考えていた父上が視線を王宮方面へ向けている一瞬の隙に、やさぐれた顔をしていた。あの顔をする時は、本当にどうしようも無い時だとルシアンが言っていた事がある。
「何にしても、王宮でも近衛騎士から手ほどきは受けているでしょう。それを私達が指導していいものか悩むところですね」
「リアン兄様、こちらを」
「ん?」
父上と話し合おうとした時、セラフィナから渡された一枚の紙。
セラフィナには精霊様達が力を分け与えているので、『鑑定』という特殊スキルが使える事も分かっている。昔は其れをやってもらい各々自分の力を高めていたのだ。勿論、そのことは父上もご存知なので、二人でその用紙を確認する事にした。
が。
*********************
【名前】アレクシス=ガーデンクォーツ
【種族】人族
【年齢】十歳
【職種/レベル】
・王子Lv 5
【スキル】
・言語学 Lv5
・政治 Lv3
・舞踊 Lv5
・マナー Lv2
【称号】
・転生者
・ガーデンクォーツ王国第一王子
*********************
「よわっ」
「……」
思わず音にしてしまったが、父上は言葉も無い様で固まっているので、コレは仕方無い。
「第一王子ともなれば王太子となる可能性もあります、なのに武術を何一つ得ていないというのは…」
「コレでは、心配も仕方無いね」
「リアン、暫く仕事を頼めるか?王子は暫く我が屋敷にお泊り頂くように手配と話をしてくる」
「父上畏まりました」
ぷるぷると震えていた父上をそのままにしていたが、何を思ったのか出掛ける用意をして出て行ってしまった。王宮へ向かったと思うけど、感情のままに近衛騎士隊を指導しないといいけどね。
「王子は、目覚めているのかな?」
「はい」
「そうか、なら少し腕を見ようかな。朝の日課分なら簡単だろう」
***
可愛い可愛い妹から『婚約者候補を鍛えなおして欲しい』と頼まれ、それなら勿論と頷いて最初は我が家の朝の日課に連れ出してみたのだが、正直言って使えない。
走りこみは直ぐにばてるし、剣の素振りをさせてみたけれど、まず持ち方がなっていない。魔物との戦い方を確認するのに、フローライト領の最低ランクの魔物をアズナブルに用意させたけれど、それにもやられそうになる。
(魔法特化のルシアンでも、5歳の時には軽く討伐していたんだけどな…?)
「王子は魔法も使えないのでしたか…」
「は、はい…。学んで、いません」
「ならば、私は魔術をお教えしましょう。武術はクレイオに任せる」
「畏まりました」
地面に倒れこんだまま起き上がれない王子を見下ろし、セラフィナに教えてもらった鑑定結果をメモしたものを眺めているが、コレは教育を施されていない以前の問題だと思う。それに、こんなに低レベルな王子の護衛があの自称勇者かと思うと頭が痛い。
「アズナブル、宰相の領地に誰か駒はいるか?王宮のにも連絡を」
「はい、直ぐに動ける者も居ります」
執事アズナブルに宰相の領地の監視を頼み、集められた資料にも眼を通す。ジークフリード家の財産を狙っているのは予想できるが、フローライト家を滅ぼしてしまうと困るのは自分という事を理解していないのだろうか?
今まで興味も無くて放置していたが、王族の情報を再度確認する必要がある。
「兄上、これでいいか?」
「ああ、というか…いたな。そんな魔物も」
「うちの領地には生存してないからなぁ…、こっちの兎ならセラが喜ぶだろうけど」
「可愛いモノが好きだからな、一応王子の練習に使うのだから渡すなよ?」
「コレくらい、直ぐに捕まえにいけるけどな」
力を見る予定の鍛錬の後、フォルスには他の領地に生息しているという『スライム』と呼ばれる魔物を捕獲しに行って貰った。危険レベルはFランクの最底辺なので、王子でも討伐の練習には出来るだろう。ジークフリード領に近い場所に生息している、Cランクの魔物でも練習にならなかったのだから仕方無い。
「戦闘術以外は父上待ちだな。セラフィナと一緒に出来そうなのはマナーくらいか?」
「戦闘ははっきり言って、セラフィナのが上だな。フローライト領で一年でも過ごせばそれなりにはなると思うが、生存できての話だろうな」
こんなのが将来国の頂点かと思うと、痛む頭を抱えたくなった私達は悪くないとはっきりといえる。まずは、宰相への報復から始めようか。
きゅっと胸元に両手を組んでお願いのポーズをとると、セラフィナは瞳を瞬かせて父上を見上げていた。昔から、お強請りをするときには大体このポーズをしていたが、最近は専ら父上用となっている。
(フォルスにならまだ効果があるけど、私やクレイオには効果が無いからね。ルシアンは一緒になって行動をするからお願いする必要もない)
お強請りされている父上といえば、外見は熊や魔獣並みに厳つい顔をデレっと蕩けさせて既に頷く準備は出来ているようだ。相変わらずセラフィナには甘い。
「どうした、セラフィナがお強請りとは珍しいな」
「あのですね、暫く第一王子を我が家に御泊めできませんか?」
「ん?」
「どうしたんですか、セラフィナ?最初は早くお帰り願いたいと話していたのに」
セラフィナのお願いに固まってしまった父上に代わって私が疑問を口にすると、言い難いのか視線を彷徨わせつつもジッと私を見つめる。理由があるにはあるけど、言っても大丈夫なのか気にしているのだろう。
「話が分かれば、私も王宮へと手紙を出せるからね」
「……弱いの、です」
「ん?」
「は?」
「フローライト領でも最弱といわれるDランクの魔獣と戦っても、今の第一王子殿下ではきっと負けますわ。セラフィナは、自分よ…んんっ、お父様や兄様方よりも弱い殿方の婚約者などなりたくありません!」
(今、自分より弱い男は嫌だと言い掛けたね?)
第一王子が弱いと言ってもセラフィナと同じ年齢だし、王宮で近衛騎士から武術は習っているはずだが…?首を傾げてふと涙を流して訴えていたはずのセラフィナを見ると、私と同じ事を考えていた父上が視線を王宮方面へ向けている一瞬の隙に、やさぐれた顔をしていた。あの顔をする時は、本当にどうしようも無い時だとルシアンが言っていた事がある。
「何にしても、王宮でも近衛騎士から手ほどきは受けているでしょう。それを私達が指導していいものか悩むところですね」
「リアン兄様、こちらを」
「ん?」
父上と話し合おうとした時、セラフィナから渡された一枚の紙。
セラフィナには精霊様達が力を分け与えているので、『鑑定』という特殊スキルが使える事も分かっている。昔は其れをやってもらい各々自分の力を高めていたのだ。勿論、そのことは父上もご存知なので、二人でその用紙を確認する事にした。
が。
*********************
【名前】アレクシス=ガーデンクォーツ
【種族】人族
【年齢】十歳
【職種/レベル】
・王子Lv 5
【スキル】
・言語学 Lv5
・政治 Lv3
・舞踊 Lv5
・マナー Lv2
【称号】
・転生者
・ガーデンクォーツ王国第一王子
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「よわっ」
「……」
思わず音にしてしまったが、父上は言葉も無い様で固まっているので、コレは仕方無い。
「第一王子ともなれば王太子となる可能性もあります、なのに武術を何一つ得ていないというのは…」
「コレでは、心配も仕方無いね」
「リアン、暫く仕事を頼めるか?王子は暫く我が屋敷にお泊り頂くように手配と話をしてくる」
「父上畏まりました」
ぷるぷると震えていた父上をそのままにしていたが、何を思ったのか出掛ける用意をして出て行ってしまった。王宮へ向かったと思うけど、感情のままに近衛騎士隊を指導しないといいけどね。
「王子は、目覚めているのかな?」
「はい」
「そうか、なら少し腕を見ようかな。朝の日課分なら簡単だろう」
***
可愛い可愛い妹から『婚約者候補を鍛えなおして欲しい』と頼まれ、それなら勿論と頷いて最初は我が家の朝の日課に連れ出してみたのだが、正直言って使えない。
走りこみは直ぐにばてるし、剣の素振りをさせてみたけれど、まず持ち方がなっていない。魔物との戦い方を確認するのに、フローライト領の最低ランクの魔物をアズナブルに用意させたけれど、それにもやられそうになる。
(魔法特化のルシアンでも、5歳の時には軽く討伐していたんだけどな…?)
「王子は魔法も使えないのでしたか…」
「は、はい…。学んで、いません」
「ならば、私は魔術をお教えしましょう。武術はクレイオに任せる」
「畏まりました」
地面に倒れこんだまま起き上がれない王子を見下ろし、セラフィナに教えてもらった鑑定結果をメモしたものを眺めているが、コレは教育を施されていない以前の問題だと思う。それに、こんなに低レベルな王子の護衛があの自称勇者かと思うと頭が痛い。
「アズナブル、宰相の領地に誰か駒はいるか?王宮のにも連絡を」
「はい、直ぐに動ける者も居ります」
執事アズナブルに宰相の領地の監視を頼み、集められた資料にも眼を通す。ジークフリード家の財産を狙っているのは予想できるが、フローライト家を滅ぼしてしまうと困るのは自分という事を理解していないのだろうか?
今まで興味も無くて放置していたが、王族の情報を再度確認する必要がある。
「兄上、これでいいか?」
「ああ、というか…いたな。そんな魔物も」
「うちの領地には生存してないからなぁ…、こっちの兎ならセラが喜ぶだろうけど」
「可愛いモノが好きだからな、一応王子の練習に使うのだから渡すなよ?」
「コレくらい、直ぐに捕まえにいけるけどな」
力を見る予定の鍛錬の後、フォルスには他の領地に生息しているという『スライム』と呼ばれる魔物を捕獲しに行って貰った。危険レベルはFランクの最底辺なので、王子でも討伐の練習には出来るだろう。ジークフリード領に近い場所に生息している、Cランクの魔物でも練習にならなかったのだから仕方無い。
「戦闘術以外は父上待ちだな。セラフィナと一緒に出来そうなのはマナーくらいか?」
「戦闘ははっきり言って、セラフィナのが上だな。フローライト領で一年でも過ごせばそれなりにはなると思うが、生存できての話だろうな」
こんなのが将来国の頂点かと思うと、痛む頭を抱えたくなった私達は悪くないとはっきりといえる。まずは、宰相への報復から始めようか。
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