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これが噂の倦怠期?
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「宗佑……」
今度は宗佑の番だ。俺が宗佑を満足させるのだ。俺は意気込んで宗佑の股間へと手を伸ばした。それを……
「ごめんね、圭介。今はここまで」
「え……?」
宗佑は俺の手をそっと掴み、やんわりと止めた。そしてそのまま手を俺の胸元へと戻す。
拒まれたことに落胆した俺は、大きく眉を下げた。
「……しないの?」
「このまま可愛がってやりたいのは山々なんだけれど、残念なことに今日は午前から会議があってね。これ以上圭介を味わっていると、遅刻してしまうだろうから」
そして再度、ごめんねと謝られた。俺ははっと我に返る。謝罪をするのはこちらの方だ。今日は休日ではない。彼には仕事があるというのに、朝っぱらから何を発情しているのか。
見境なしのΩはこれだから質が悪い。
「ごめんなさいっ」
「謝らなくていい。むしろご褒美だ。美味しかったよ」
「そ、そういうこと、言わない……」
絶対に美味しくはないはずなのに。感想を言われて急に恥ずかしくなった。
「そうだ……朝食、すぐに準備するからっ……」
ようやく頭にエンジンがかかった俺は、大事なことを思い出す。朝食は脳を動かす大事なエネルギーだ。働く者にとって一日が始まるそれを怠らせてはいけないというのに。馬鹿も馬鹿の大馬鹿だ。
にも関わらず、慌てて起き上がろうとする俺を宗佑はやんわりと制止した。そして乱れた俺の寝間着を整えながら……
「朝食は二日前に君が焼いてくれたパンを食べていくから、まだゆっくりしていなさい」
そう言って俺の額にキスを落とした。
「愛してるよ、圭介」
「……俺も」
俺が素直に頷くと、宗佑は嬉しそうに尻尾をパタパタと動かした。
やがて宗佑が自身の服装を整え部屋を出ると、俺は自分の枕に顔を突っ伏しつつ、宗佑の枕を抱き寄せた。
いい香りのするそれに鼻先を擦りつけながら、「宗佑」と呟く。もちろん、名前を呼んで相手が戻ってくることはない。俺は一人、嘆息する。
番となり素敵なプロポーズを受けてから、すでに一ヶ月近くが経っていた。もう一ヶ月。そしてまだ、一ヶ月だ。
俺と宗佑の夜の営みの回数は激減した。もちろん、今みたいに俺がしたくなった際は相手をしてくれるし、スキンシップがないわけではない。ちゃんと俺に触れてくれるし、この家の中では相変わらず優しく接してくれる。
しかし最後まで致すことがなくなった。あのプロポーズの夜みたく、宗佑が俺の中で達することがなくなったのだ。
少なくともこの二週間は、いわゆる中出しをされていない。あれ? と思い始めてからの起算だから、すでにそれ以上は経っている。
俺が達すればそれで終わり。俺の中に入るどころか、宗佑自身が達するところなど、しばらく見ていない。
はじめは仕事が忙しくなったから、と捉えていた。確かに以前よりも家を空ける時間は多くなり、俺の前でもよく眠るようになった。まだまだ若いとはいえ、彼は仕事を多岐に渡ってこなしている。休息はしっかり取るべきで、身体を労ってもらいたい。それは俺もわかっている。
しかし何かが引っかかる。それが顔に出ているわけではないし、また面と向かって何かを言われたわけでもないが、宗佑は何かを隠しているような気がしてならない。あえて俺から距離を取っているような気がするのだ。
まさか、これがかの有名な倦怠期というものなのだろうか。それとも、番となったら皆一様にこうなるのだろうか。
いや、それよりも何よりも、可能性の高い理由があるではないか。
「俺に、飽きた……」
美人は三日で飽きるというが、昨今は平凡も三日で飽きられるのだろうか?
圭介としての俺は性技など知らない初心も初心だ。セックスに関して、これまでは宗佑にされるがままで行ってきたのだが……
「うーん……」
恵の時に培ったその技術を、宗佑に対して行っても良いものか迷う。恵はΩで美人だったとはいえ、それだけで子を養うことはできなかった。娼館は性技を覚えてなんぼだ。相手を喜ばすような技術があれば、平凡だろうが附子だろうが、稼ぐことができた。その為俺も、否応なしにそれを覚えた。
数々のそれを今でも覚えているとはいえ、こと宗佑に披露してしまえば、いったい何処で覚えてきた! と、追及されることだろう。最悪の場合、入籍前に捨てられてしまう。
考えたくはないが、その可能性も捨てきれない。宗佑だって人なのだから。いつかは飽きがくるだろう。
俺達はいまだ、正式に結婚をしていない。彼は里中宗佑で、俺は田井中圭介だ。互いの家族への挨拶も、両家の顔合わせも、行ってはいない。別れようと思えば、彼の方からいつだって別れられるのだ。
俺のことは仕方がない。そうなってしまったら、自分の見る目がなかったということになる。だが子供は? 子供のことも、諦めてしまったのだろうか?
宗佑はあんなに望んでいた。そこに嘘は感じられなかった。プロポーズ後はさらに、この人との子供を産みたいと俺も望んだ。しかしこれも、俺の独りよがりだったのだろうか。
「俺が我が儘、なのかな……」
あの夜は、あんなに嬉しかったのに。今は彼が、とても遠くに感じた。
今度は宗佑の番だ。俺が宗佑を満足させるのだ。俺は意気込んで宗佑の股間へと手を伸ばした。それを……
「ごめんね、圭介。今はここまで」
「え……?」
宗佑は俺の手をそっと掴み、やんわりと止めた。そしてそのまま手を俺の胸元へと戻す。
拒まれたことに落胆した俺は、大きく眉を下げた。
「……しないの?」
「このまま可愛がってやりたいのは山々なんだけれど、残念なことに今日は午前から会議があってね。これ以上圭介を味わっていると、遅刻してしまうだろうから」
そして再度、ごめんねと謝られた。俺ははっと我に返る。謝罪をするのはこちらの方だ。今日は休日ではない。彼には仕事があるというのに、朝っぱらから何を発情しているのか。
見境なしのΩはこれだから質が悪い。
「ごめんなさいっ」
「謝らなくていい。むしろご褒美だ。美味しかったよ」
「そ、そういうこと、言わない……」
絶対に美味しくはないはずなのに。感想を言われて急に恥ずかしくなった。
「そうだ……朝食、すぐに準備するからっ……」
ようやく頭にエンジンがかかった俺は、大事なことを思い出す。朝食は脳を動かす大事なエネルギーだ。働く者にとって一日が始まるそれを怠らせてはいけないというのに。馬鹿も馬鹿の大馬鹿だ。
にも関わらず、慌てて起き上がろうとする俺を宗佑はやんわりと制止した。そして乱れた俺の寝間着を整えながら……
「朝食は二日前に君が焼いてくれたパンを食べていくから、まだゆっくりしていなさい」
そう言って俺の額にキスを落とした。
「愛してるよ、圭介」
「……俺も」
俺が素直に頷くと、宗佑は嬉しそうに尻尾をパタパタと動かした。
やがて宗佑が自身の服装を整え部屋を出ると、俺は自分の枕に顔を突っ伏しつつ、宗佑の枕を抱き寄せた。
いい香りのするそれに鼻先を擦りつけながら、「宗佑」と呟く。もちろん、名前を呼んで相手が戻ってくることはない。俺は一人、嘆息する。
番となり素敵なプロポーズを受けてから、すでに一ヶ月近くが経っていた。もう一ヶ月。そしてまだ、一ヶ月だ。
俺と宗佑の夜の営みの回数は激減した。もちろん、今みたいに俺がしたくなった際は相手をしてくれるし、スキンシップがないわけではない。ちゃんと俺に触れてくれるし、この家の中では相変わらず優しく接してくれる。
しかし最後まで致すことがなくなった。あのプロポーズの夜みたく、宗佑が俺の中で達することがなくなったのだ。
少なくともこの二週間は、いわゆる中出しをされていない。あれ? と思い始めてからの起算だから、すでにそれ以上は経っている。
俺が達すればそれで終わり。俺の中に入るどころか、宗佑自身が達するところなど、しばらく見ていない。
はじめは仕事が忙しくなったから、と捉えていた。確かに以前よりも家を空ける時間は多くなり、俺の前でもよく眠るようになった。まだまだ若いとはいえ、彼は仕事を多岐に渡ってこなしている。休息はしっかり取るべきで、身体を労ってもらいたい。それは俺もわかっている。
しかし何かが引っかかる。それが顔に出ているわけではないし、また面と向かって何かを言われたわけでもないが、宗佑は何かを隠しているような気がしてならない。あえて俺から距離を取っているような気がするのだ。
まさか、これがかの有名な倦怠期というものなのだろうか。それとも、番となったら皆一様にこうなるのだろうか。
いや、それよりも何よりも、可能性の高い理由があるではないか。
「俺に、飽きた……」
美人は三日で飽きるというが、昨今は平凡も三日で飽きられるのだろうか?
圭介としての俺は性技など知らない初心も初心だ。セックスに関して、これまでは宗佑にされるがままで行ってきたのだが……
「うーん……」
恵の時に培ったその技術を、宗佑に対して行っても良いものか迷う。恵はΩで美人だったとはいえ、それだけで子を養うことはできなかった。娼館は性技を覚えてなんぼだ。相手を喜ばすような技術があれば、平凡だろうが附子だろうが、稼ぐことができた。その為俺も、否応なしにそれを覚えた。
数々のそれを今でも覚えているとはいえ、こと宗佑に披露してしまえば、いったい何処で覚えてきた! と、追及されることだろう。最悪の場合、入籍前に捨てられてしまう。
考えたくはないが、その可能性も捨てきれない。宗佑だって人なのだから。いつかは飽きがくるだろう。
俺達はいまだ、正式に結婚をしていない。彼は里中宗佑で、俺は田井中圭介だ。互いの家族への挨拶も、両家の顔合わせも、行ってはいない。別れようと思えば、彼の方からいつだって別れられるのだ。
俺のことは仕方がない。そうなってしまったら、自分の見る目がなかったということになる。だが子供は? 子供のことも、諦めてしまったのだろうか?
宗佑はあんなに望んでいた。そこに嘘は感じられなかった。プロポーズ後はさらに、この人との子供を産みたいと俺も望んだ。しかしこれも、俺の独りよがりだったのだろうか。
「俺が我が儘、なのかな……」
あの夜は、あんなに嬉しかったのに。今は彼が、とても遠くに感じた。
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