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そうだ。新婚旅行へ行こう。【真城 side】

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「ああ? 何? 聞こえねえよ……電話口で喚くなっての。逆に聞こえねえんだよ。それにお前、この前自分の携帯だかスマホだかをぶっ壊したばかりだろ……ああ? 柳が紫瞠と旅行に行くのを止めさせろだぁ? 馬鹿言え。俺が止められるわけねえだろ。俺は柳の保護者じゃねえ。それに彼奴ら夫婦だぞ」

 俺は耳元でキンキンと騒ぎまくるガキ共に、自身の頭を掻きながら適当に答える。ガキ共が誰かって? 柳のダチとかいうガキ共だ。名前? 知るかよ。俺は保護者じゃねえんだ。知るわけがねえ。だが、ガキ共の代表でキンキン吠えてやがんのは、あの背の高え金髪の野郎だろ。柳が金髪にしていたときがあったからな。その代わりか何か……此奴も髪を傷めることをよくやるねえ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。俺は此奴らに答えてやった。何が不満なのか、紫瞠と柳の二人が、俺が与えてやった旅館へ出掛けることが嫌なんだと。だったら柳に直接言えって話だ。なあ?

「何? ふざけんなだ?」

 このガキ……目上の人間に対してふざけんなだと。言うねえ今時の若いモンは。しかしまあ、なんだ。言いたいことはわからんでもねえわな。つまりこういうことだろ?

「確かにふざけんなって話ではあるな。男である柳が、どうして紫瞠の妻になれんのかって……今のこの国の常識で考えれば普通できんわな」

 すると、電話口のガキ共は静かになった。ったく……これだからガキは苦手なんだよ。柳みたいなガキは、今時珍しいのかね。彼奴はまだ可愛いと思える。キンキン高い声だったが礼儀を弁えていたし、何より賢いガキだ。俺の子だったら、と思わなくもないが……残念ながら、俺の子じゃあない。そう。俺の子供ではない。

 そんなガキの彼奴が、紫瞠の妻になれるのか? いや、なれるわけねえだろ。法律上、彼奴は紫瞠の妻――つまり配偶者ではない。だが、柳は。確かに紫瞠と名乗ることが出来る。

「どうした? 急に静かになったな? そう聞きたかったんじゃねえのか?」

 ガキ共は考えているんだろう。俺に何を聞けばいいのか。そして俺が、何を答えてくれるのかを。別に苛めているわけじゃあない。俺は今、言える事実を言うことができて、言えない事実は言わないだけだ。

 これは賭け。そうだろう?

 俺はとっくに、この状況に飽きているんだよ。

「何が聞きたい? 今の俺は寛容だ。うっかりぽろっと、お前らに話しちまうかもしれねえぞ? そう。例えば……お前らが心底憎んでいるあの男――真藤蒼と、紫瞠海の二人の関係性についてとか、な」

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