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ドキドキ? 学園生活♪ 【葉月 side】
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――――…
あっぶね~。登校初日で遅刻するところだった。
門までが若干下り坂で助かったなぁ。滑り込み……いや、飛び込みセーフだわ。
あ、でも飛び込む直前に後ろから腰をぎゅっとされたのは、ちょこっとラッキー……ん、いやいや。そうじゃなくて、大丈夫だったかな?
俺は振り返ることなく、チャリを漕いだまま。後ろに乗せてる同級生に声をかけた。
「大丈夫~? 舌噛んでない? ケツは無事?」
飛ばす直前に合図はしたけど、タイミングが合ってなかったらケツを痛めかねない。俺の愛しい人のケツは俺なんかより皮膚も薄くて柔いから、さっきの衝撃で叩きつけられたりなんかしたらすんげー痛いわ。もしそうだとしたらすんげー悪いことしたわ、俺。
でも……。
「だいじょうぶだよっ! それにしても、すっごい飛んだね~。門番の人たち、葉月の飛び込みにびっくりしてたよ!」
俺の飛び込みに感心している。若干、興奮気味に喋るところがすんげぇ可愛い。まじ天使。
ま、俺の愛して止まない柳のことだから。こんな飛び込みくらい余裕っしょ。
「降りようか? もう校舎内みたいだし」
「い~よ。チャリ置き場まで漕いでく」
もうちょっとぎゅっとされていたいし。
「ありがとう。……あ、ねぇねぇ葉月っ! あの天幕ってなんだろうっ!? 売店かなっ!」
「ん~? ん~……かもね」
そっからはゆっくりと漕ぎながら駐輪場を目指していると、すでに校舎内だというのにその馬鹿広いグラウンドでは何やら売店のような天幕がいくつも設置してあって、同じ制服を着た野郎たちが群がっていた。
おい。さっき予鈴って鳴ったよな?
そんな疑問を抱えたのは俺だけなのか、後の柳はきょろきょろと辺りを見渡して、興奮気味に校舎内の感想を口にし出した。
「すっごいね、葉月っ! これが男子校なんだね!」
「そう? 野郎ばっかでむさいだけじゃない。柳は別だけど」
「本当に女の子がいないんだね。でも、あそこできゃーきゃー言ってる子たち、女の子の制服着ても違和感なさそうだね。きゃーきゃー言ってても可愛く感じるね」
「そう? きゃーきゃー言う野郎なんてなよなよしてて女々しいだけじゃない。柳は別だけど」
「わぁ! あそこでブロマイドも売ってるよ! たくさんの子たちが買ってるねぇ。あ、会長が一番人気みたいだよ」
「そう? ちょっとスタイルが良くて、ちょっと顔が整ってるってだけの写真で金取るの? 俺だったら絶対買わないわ。柳は別だけど」
ホントに大丈夫かよこの学校……まぁ、柳が楽しそうだからいいけどさ。疑惑抱いたら負けなんだろうし。
「あ、葉月っ! 自転車置き場、あそこみたい」
「ん」
ずらりとチャリが並んでる僅かな隙間に自分のチャリを捻じ込み、駐輪する。こんだけ広い敷地だから、寮生といえどチャリくらい持つわな。鍵を掛けると、隣のチャリが倒れそうになっていた。当然、その向こう側にもチャリが並んでいるわけなんだが。
あ。これ、ドミノになるわ。
この事態に気づかず、校舎側を見渡している柳を連れ、俺はその場からそそくさと立ち去ることにした。駐輪場に目が行かないよう、でかい俺の図体でカバーしながら、柳の両耳を塞いだ。
「どうして耳を塞ぐの?」
「ん~? 柳の耳があったかいから、かな」
「そっか。……? なんかすごい音、聞こえない?」
「気のせい。気のせい」
背後から阿鼻叫喚のような叫びが聞こえてきたけど、まぁ大丈夫だろ。それよりも、柳の耳たぶってぷにぷにしてるな。ほんと、中学ん時から変わんねぇな。今度噛ませてもらえねぇかな。
そうして校舎内に入ると、まずは下駄箱を捜した。前に学校側から二年生の下駄箱まで案内はしてもらったけど、その時はまだ俺と柳の下駄箱はなかったんだよな。一つ一つがロッカー形式になってるから、それぞれに個人の名前が割り振られている。え~と、確かAクラスだから……ああ、ここだな。
……ん? あ~。なるほどね。だから鍵付きなわけか。
たかが下駄箱。なのに、俺らは鍵を渡されていた。その理由が、わからんでもない。ちゃっと学校指定の上靴に履き替えると、柳と二人で校舎内廊下を歩き、まずは職員室を目指した。
本校舎とは別にある委員会用限定校舎、その中に職員室が併設されている。特に用件がない場合は入れないというそこは、本校舎から連絡通路があった。ただ一つの通路だが、その周りには不思議と生徒がいない。いや、紫の腕章をしている生徒が二人程いたけれど、それは委員会の関係者だろう。ふうん。委員会と教師しかそれを利用する者がいないから、余分な生徒はここで足止められるってわけね。要は検問か。
俺と柳が連絡通路を渡ろうとすると、案の定、紫の腕章をした二人に呼び止められた。二人は俺を見てちょっとたじろいでたけど、転校生だって事を伝えて柳と二人で生徒手帳を見せると納得して通してくれた。去り際になんだか二人の頬が赤くなってたけど……え、やめてよね。俺、野郎は柳しか興味ないんだからさ。
あっぶね~。登校初日で遅刻するところだった。
門までが若干下り坂で助かったなぁ。滑り込み……いや、飛び込みセーフだわ。
あ、でも飛び込む直前に後ろから腰をぎゅっとされたのは、ちょこっとラッキー……ん、いやいや。そうじゃなくて、大丈夫だったかな?
俺は振り返ることなく、チャリを漕いだまま。後ろに乗せてる同級生に声をかけた。
「大丈夫~? 舌噛んでない? ケツは無事?」
飛ばす直前に合図はしたけど、タイミングが合ってなかったらケツを痛めかねない。俺の愛しい人のケツは俺なんかより皮膚も薄くて柔いから、さっきの衝撃で叩きつけられたりなんかしたらすんげー痛いわ。もしそうだとしたらすんげー悪いことしたわ、俺。
でも……。
「だいじょうぶだよっ! それにしても、すっごい飛んだね~。門番の人たち、葉月の飛び込みにびっくりしてたよ!」
俺の飛び込みに感心している。若干、興奮気味に喋るところがすんげぇ可愛い。まじ天使。
ま、俺の愛して止まない柳のことだから。こんな飛び込みくらい余裕っしょ。
「降りようか? もう校舎内みたいだし」
「い~よ。チャリ置き場まで漕いでく」
もうちょっとぎゅっとされていたいし。
「ありがとう。……あ、ねぇねぇ葉月っ! あの天幕ってなんだろうっ!? 売店かなっ!」
「ん~? ん~……かもね」
そっからはゆっくりと漕ぎながら駐輪場を目指していると、すでに校舎内だというのにその馬鹿広いグラウンドでは何やら売店のような天幕がいくつも設置してあって、同じ制服を着た野郎たちが群がっていた。
おい。さっき予鈴って鳴ったよな?
そんな疑問を抱えたのは俺だけなのか、後の柳はきょろきょろと辺りを見渡して、興奮気味に校舎内の感想を口にし出した。
「すっごいね、葉月っ! これが男子校なんだね!」
「そう? 野郎ばっかでむさいだけじゃない。柳は別だけど」
「本当に女の子がいないんだね。でも、あそこできゃーきゃー言ってる子たち、女の子の制服着ても違和感なさそうだね。きゃーきゃー言ってても可愛く感じるね」
「そう? きゃーきゃー言う野郎なんてなよなよしてて女々しいだけじゃない。柳は別だけど」
「わぁ! あそこでブロマイドも売ってるよ! たくさんの子たちが買ってるねぇ。あ、会長が一番人気みたいだよ」
「そう? ちょっとスタイルが良くて、ちょっと顔が整ってるってだけの写真で金取るの? 俺だったら絶対買わないわ。柳は別だけど」
ホントに大丈夫かよこの学校……まぁ、柳が楽しそうだからいいけどさ。疑惑抱いたら負けなんだろうし。
「あ、葉月っ! 自転車置き場、あそこみたい」
「ん」
ずらりとチャリが並んでる僅かな隙間に自分のチャリを捻じ込み、駐輪する。こんだけ広い敷地だから、寮生といえどチャリくらい持つわな。鍵を掛けると、隣のチャリが倒れそうになっていた。当然、その向こう側にもチャリが並んでいるわけなんだが。
あ。これ、ドミノになるわ。
この事態に気づかず、校舎側を見渡している柳を連れ、俺はその場からそそくさと立ち去ることにした。駐輪場に目が行かないよう、でかい俺の図体でカバーしながら、柳の両耳を塞いだ。
「どうして耳を塞ぐの?」
「ん~? 柳の耳があったかいから、かな」
「そっか。……? なんかすごい音、聞こえない?」
「気のせい。気のせい」
背後から阿鼻叫喚のような叫びが聞こえてきたけど、まぁ大丈夫だろ。それよりも、柳の耳たぶってぷにぷにしてるな。ほんと、中学ん時から変わんねぇな。今度噛ませてもらえねぇかな。
そうして校舎内に入ると、まずは下駄箱を捜した。前に学校側から二年生の下駄箱まで案内はしてもらったけど、その時はまだ俺と柳の下駄箱はなかったんだよな。一つ一つがロッカー形式になってるから、それぞれに個人の名前が割り振られている。え~と、確かAクラスだから……ああ、ここだな。
……ん? あ~。なるほどね。だから鍵付きなわけか。
たかが下駄箱。なのに、俺らは鍵を渡されていた。その理由が、わからんでもない。ちゃっと学校指定の上靴に履き替えると、柳と二人で校舎内廊下を歩き、まずは職員室を目指した。
本校舎とは別にある委員会用限定校舎、その中に職員室が併設されている。特に用件がない場合は入れないというそこは、本校舎から連絡通路があった。ただ一つの通路だが、その周りには不思議と生徒がいない。いや、紫の腕章をしている生徒が二人程いたけれど、それは委員会の関係者だろう。ふうん。委員会と教師しかそれを利用する者がいないから、余分な生徒はここで足止められるってわけね。要は検問か。
俺と柳が連絡通路を渡ろうとすると、案の定、紫の腕章をした二人に呼び止められた。二人は俺を見てちょっとたじろいでたけど、転校生だって事を伝えて柳と二人で生徒手帳を見せると納得して通してくれた。去り際になんだか二人の頬が赤くなってたけど……え、やめてよね。俺、野郎は柳しか興味ないんだからさ。
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