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羽柴
外伝 5
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雫を探すのに費やした年数は八年だ。何もなかった状態から始めてこの年数が長いのか短いのかはわからない。危険な目にも遭ったし、もう駄目だと思った時もあった。
それでも、雫を取り戻す。ただこの一つの目的の為に俺達は動いた。シキは戸籍を得て、金を得て、地位と権力を得た。それらを駆使してようやく雫を見つけ出した。
俺はそこがゴールだと思っていた。雫を見つければ、これでまた三人の暮らしが始まる。そう信じていた。
しかしシキはそう思っていなかった。雫を見つけてからが、本当の戦いなのだとわかっていたんだ。
佐々から雫を奪還し、俺達はすぐに高杉先生の下へ向かった。すぐに病室を確保してくれた先生は、雫にかかりきりで診てくれた。
シキが雫の傍につき、俺は佐々の始末にかかった。たとえ殺したとしても俺の気は収まらなかったが、放っておいてももう何もできないとシキは言った。実際、佐々にはもう気力も体力もなく、雫を奪われた後は廃人のようになっていた。葛城の監視下に置くも半年も過ぎない内に亡くなった。
検査が終わり、雫が寝つく頃に俺は病院へ着いた。高杉先生へ容体を尋ねると、命に別状はないと答えてくれた。
「痩せているけれど命に関わるような酷い外傷はないし、感染症とかもないからその辺りはだいじょぶ。でも……」
「でも?」
「精神的なダメージがかなり大きいね。特に私相手だと酷く怯えてしまってね……。きっと私を佐々君と重ねちゃうんだろうね。残念だけど、今の雫ちゃんにとって私は適任ではないね」
「そんな……」
実際のところ、高杉先生は佐々より若い。けれど、雫にとって老いた男という点があの佐々と重なるらしかった。結局、雫には強制的に鎮静剤が投与されたと聞かされた。
先生はタブレットを見ながら淡々と続けた。
「あとはまあ、一応ね。処女は守られてるよ。君達の到着が少しでも遅ければ、破瓜は免れなかっただろうね。ただ……」
「ただ……何です?」
「その代わりなんだろう。後ろの方がね、大分やられちゃっててね……」
「なっ……!?」
「今、シキさんに清拭がてら雫ちゃんの身体を見てもらっているよ。ぐっすり眠っているから、しばらくは起きないと思うし」
パッと見ただけでも雫の身体には無数の赤い痕がつけられていた。それが何によるものなのか、あの惨状を目にすれば調べなくともわかる。
俺は雫がいる病室の扉に手をかけた。それを高杉先生は、俺の腕を強く掴んで引き止めた。
「虎君は止めておいた方がいいね」
「どうしてですかっ!」
感情任せに怒鳴る俺に、先生はいつになく険しい表情を向けた。
「君は見るもんじゃない」
それでも、雫を取り戻す。ただこの一つの目的の為に俺達は動いた。シキは戸籍を得て、金を得て、地位と権力を得た。それらを駆使してようやく雫を見つけ出した。
俺はそこがゴールだと思っていた。雫を見つければ、これでまた三人の暮らしが始まる。そう信じていた。
しかしシキはそう思っていなかった。雫を見つけてからが、本当の戦いなのだとわかっていたんだ。
佐々から雫を奪還し、俺達はすぐに高杉先生の下へ向かった。すぐに病室を確保してくれた先生は、雫にかかりきりで診てくれた。
シキが雫の傍につき、俺は佐々の始末にかかった。たとえ殺したとしても俺の気は収まらなかったが、放っておいてももう何もできないとシキは言った。実際、佐々にはもう気力も体力もなく、雫を奪われた後は廃人のようになっていた。葛城の監視下に置くも半年も過ぎない内に亡くなった。
検査が終わり、雫が寝つく頃に俺は病院へ着いた。高杉先生へ容体を尋ねると、命に別状はないと答えてくれた。
「痩せているけれど命に関わるような酷い外傷はないし、感染症とかもないからその辺りはだいじょぶ。でも……」
「でも?」
「精神的なダメージがかなり大きいね。特に私相手だと酷く怯えてしまってね……。きっと私を佐々君と重ねちゃうんだろうね。残念だけど、今の雫ちゃんにとって私は適任ではないね」
「そんな……」
実際のところ、高杉先生は佐々より若い。けれど、雫にとって老いた男という点があの佐々と重なるらしかった。結局、雫には強制的に鎮静剤が投与されたと聞かされた。
先生はタブレットを見ながら淡々と続けた。
「あとはまあ、一応ね。処女は守られてるよ。君達の到着が少しでも遅ければ、破瓜は免れなかっただろうね。ただ……」
「ただ……何です?」
「その代わりなんだろう。後ろの方がね、大分やられちゃっててね……」
「なっ……!?」
「今、シキさんに清拭がてら雫ちゃんの身体を見てもらっているよ。ぐっすり眠っているから、しばらくは起きないと思うし」
パッと見ただけでも雫の身体には無数の赤い痕がつけられていた。それが何によるものなのか、あの惨状を目にすれば調べなくともわかる。
俺は雫がいる病室の扉に手をかけた。それを高杉先生は、俺の腕を強く掴んで引き止めた。
「虎君は止めておいた方がいいね」
「どうしてですかっ!」
感情任せに怒鳴る俺に、先生はいつになく険しい表情を向けた。
「君は見るもんじゃない」
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