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武虎
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ギシギシと軋むベッドのスプリング。今年に入ってまだ一年と経っていないキングサイズのそれは、本来の寝台としての役割以上の働きをしてくれていた。決して安くはないそれがすぐに壊れてしまうのではないかと、少し後になってから心配した。
しかしこの時の俺の理性という理性は、すっかり何処かへ飛んでしまっていたわけだけど。
「ああっ……シキ……シキぃっ……!」
俯せになり、その上体をマットレスの上に被せつつ、尻だけは突き上げた形で俺は必死に喘いでいた。
依れたシーツを掴みながら、シキの名を何度も呼んだ。当のシキは俺の腰を両手で掴み、すっかり赤くなった後孔の中へ昂る自身を挿入し、何度も激しく腰を打ちつける。抜き挿しが繰り返される結合部からは、俺の後孔を解す為に使用された潤滑剤がじゅぷじゅぷと卑猥な音を立てていた。
腹の中を掻き乱される感覚がはじめは気持ち悪くてしょうがなかったのに、今ではすっかりそれを受け入れられるようになってしまっていた。
「んっ……シキ……お尻っ、やあっ……あっ、へんっ……変に……なるっ……あっ、ああっ!」
シキの陰茎が抜かれそうになる度に捲り上がる肉壁はきっと酷い色になっていることだろう。それでも彼を求めずにはいられない。
溢れる唾液と共に出るのはシキの名前。腹の中から昂るものが、俺の頭を真っ白にする。
「んあっ、ああっ……シキ、シキぃっ」
反り立つ前から何度目か知れない白濁の体液が飛び散った。喉が痛い。声が掠れて身体も重い。
「はあっ……ん、はあっ……あっ……はあっ……」
急に力の抜けた身体は貪るような呼吸を繰り返す。全身を上下にさせて、握り締めていたシーツがその手から離れると、シキがぐったりと沈む俺の上体を抱き起こした。
背後から伸びた手が頬に宛がわれ、シキの方へと顔を向けさせられる。必死に喘ぐ俺の唇を食むように塞ぐと、口内にある舌を同じそれで引っ張り出しながら絡ませる。
「んっ……ん、んんぅっ」
ザラリとした舌が俺の舌を擽ると、俺の身体は射精することなく達していた。
なんてはしたない。淫乱な劣等種。
そんな言葉が脳裏を過る。事実そうなんだろう。俺は淫乱だ。その用途でしかこの身体を使われてこなかったのだから。
それでも今は、シキが欲しい。
イきっぱなしの俺に、シキが愉快そうに微笑む。唇を離すと、俺を抱えたままベッドに座る形をとった。いわゆる背面座位だ。まだ硬度を保つシキの陰茎が深く突き刺さり、俺は悲鳴に近い声を上げた。
シキはそんな俺に構わず両脚を大きく広げさせると、すっかり萎えた陰茎の奥にある俺のあそこに中指を挿し込んだ。
「あっ……やめっ……シキ、やっ……やだあっ……!」
「すごいね、滴。蜜が溢れすぎて泡のようになっているよ。聞こえる? この音……」
ぐちゅぐちゅとわざと音を立てて俺に聞かせるシキが少しだけ恨めしい。カッと熱くなる頭を、俺は払うように横に振った。
「や……鳴らさない、でっ……」
「後ろを突きながらここを弄ってあげようか? それとも乳首を弄られる方がいいかな? 射精はこれ以上キツいだろうから、前は縛っておこうか?」
後ろから囁くシキは俺の耳介を舐め上げた。シキ曰く性感帯のそこは、彼の声だけで身体を震わせてしまう。瞼を閉じると、ボロボロと真珠のような涙が溢れた。
さっきも目元から何かが零れていた気がする。でも、これは違う種類のものだ。
後孔の前を、シキは指の動きを速めて抜き挿しを繰り返す。反対の手は俺の胸の愛撫へと回っていた。
「んっ、だめ……だめぇっ……指、挿れない、でっ……乳首も、嫌ぁ……!」
「どっちの孔もきゅうきゅうと締めつけてくるね。そんなにイイの?」
「ちがっ……あっ、ちがうっ……あっ、ああっ!」
射精ではなく、今度は別の透明な何かが弾けた。ズルリと力が抜ける身体を、シキがしっかりと抱きかかえる。
あれ、なんだろ……脚に力が、入らない。
シキが俺から陰茎を抜くと、俺の身体をベッドの上に横たわらせる。まだ荒い呼吸を繰り返す俺の頭をシキが優しく撫でてくれた。
「髪が伸びたね。鴉のように黒くて艶やかで、本当に綺麗だ」
シキはよく俺の髪を褒める。俺はシキの髪と同じ色だと思っているけれど、彼曰く、違うらしい。あまり鏡を見ないから違いがわからないけれど。
まだ呼吸を弾ませながら、俺はシキを見上げた。
「ほん、と?」
「お前のその瞳と同じ色だ。私には無いものだね」
確かに、青い目を持つシキには無いものだ。でも、黒髪黒目なんて珍しくもない。こんなにシキが褒める理由が俺にはわからない。
「俺は……シキの青い目、好き……だよ」
「目だけ?」
「う……」
目、だけじゃないんだけど……これ以上は言葉がつっかえて出てこない。
出てこない代わりに……
「シキ……」
俺はシキの首に手を回した。こっちに来て、と自分に引き寄せるとシキは「参ったな」と苦笑する。
「俺ばっかり……やだ」
「なるほど。私を満足させたいわけだ」
「ん……」
仰向けになった俺は力が入らない両脚の間に手を挿し込むと、先程シキが指を埋めていたあそこを人差し指と中指で割り開く。
「こっち……挿れて?」
「壊れても知らないぞ」
力の抜けた俺の両脚を、シキが持ち上げ割り開いた。まだ一度も達していないシキの陰茎は硬度を保ったままだ。
シキはゆっくりと自身を俺の中へ挿入させると、そのまま最奥まで貫いた。
「んああっ……!」
「明日はズル休みだな」
盛りのついた猫相手に、シキは意地悪そうに笑った。
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