「んじゃ、お望み通りにしてやるよ」〜俺様最強チートが不憫な転生美青年をとにかく溺愛するお話(モブありver)

天白

文字の大きさ
上 下
61 / 68
第一章

んじゃ、お望み通りにしてやるよ 11

しおりを挟む
 簡潔にではあるが、自身の罪をすべて告白したレイヴン。シンの顔は見上げるのも怖く、カタカタと全身を震わせた。何度経験していようが、やはり死ぬのは恐ろしい。痛みや苦しみを感じることもそうだが、ただ一度きりの……シンと出会った今の自分の生が終わるのかと思うと、怖くて仕方なかった。

(次、また生まれ変わったら……シンさんはいない)

 どこまでも自分勝手な望みに、胸が苦しくなる。こんな身勝手な性根だから、過去の自分は人を殺めたのだろうか。

(本、当に……?)

 疑いそうになるのを、レイヴンは首を振って遮った。今更考えても、記憶が都合よく捏造されるだけ。思い出したことがすべてだと、自身に言い聞かせた。

 そこにシンが一言、レイヴンの思考を切るように言った。

「おかしい」

 レイヴンは怖々とした様子でシンの顔を覗き込むと、彼は村人達へ説いた時と同様の、真剣な面持ちでこちらを見ていた。

「今の話はかなりおかしいぞ、レイヴン。人を殺めた後に村を燃やした? それじゃあ意味がない。人殺しを有耶無耶にしたくて火を放つのならば、順序が逆だろう。どさくさに紛れて殺せばいい。それに動機もしっくり……いや、おもしろくない」

「おもしろくないって……」

 人を殺めることの理由に、おもしろいものなどあるのだろうかと、レイヴンは唇を尖らせる。そのむくれたような表情に、シンはニヤリと口角を持ち上げた。

「やっぱりな。お前のように心根が優しく、賢くて感受性豊かな人間が、嫉妬という理由で人を殺したりなんかできるわけがねえんだよ。オレのような得体の知れないやつを助けたことがいい例だ」

 何がおもしろいのか、実に楽しそうに笑みを見せるシンが、こんな時だというのにやはり綺麗だとレイヴンは思ってしまった。それほど綺麗な笑みだった。

 それよりも、今のはどういう意味だろうか。自分が罪を告白したというのに違うと断言する理由が、レイヴンにはわからなかった。

(そういえば、記憶喪失だって……シンさんは見抜いていた……)

 シンに尋ねればわかるのだろうか。そう思い口を開こうとした時、

「ああそうだ。お前のその体質のような転生だけどな。今回限りで終わるぞ」

 と、サラリと重大なことを宣言された。開きかけたレイヴンの口からは、「え……?」と蚊の鳴くような小さな声が発せられた。

 人々の怒りの声が増幅する中、シンは自分のことについて少しだけ語った。

「本来なら、オレは人の理に干渉できない。お前達の間に起こるいざこざに関しても、手出しも足出しもできない身だ。それがこうして、"たまたま"とはいえこの村にやって来た。さすがのオレでもこれは不測の事態だったが、レイヴンと出会ったのは僥倖だった」

 そして平伏しながらも怒りの形相をこちらへ向ける村人達に対し、再び問いかける。

「今のオレは寛容だ。人の理にも、少しばかりは干渉しよう。このオレが直々に裁いてやるから、今一度お前達に問うぞ。ここにいる大罪人のレイヴンを、本当に殺していいんだな?」

「殺せえ!!」

 一分の隙もない村人達からの返答に、シンは愉快に笑った。




「んじゃ、お望み通りにしてやるよ」




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

胸キュンシチュの相手はおれじゃないだろ?

一ノ瀬麻紀
BL
今まで好きな人どころか、女の子にも興味をしめさなかった幼馴染の東雲律 (しののめりつ)から、恋愛相談を受けた月島湊 (つきしま みなと)と弟の月島湧 (つきしまゆう) 湊が提案したのは「少女漫画みたいな胸キュンシチュで、あの子のハートをGETしちゃおう作戦!」 なのに、なぜか律は湊の前にばかり現れる。 そして湊のまわりに起こるのは、湊の提案した「胸キュンシチュエーション」 え?ちょっとまって?実践する相手、間違ってないか? 戸惑う湊に打ち明けられた真実とは……。 DKの青春BL✨️ 2万弱の短編です。よろしくお願いします。 ノベマさん、エブリスタさんにも投稿しています。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

処理中です...