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第一章
蜂蜜よりも甘いもの… 11(過激・残酷な表現注意)
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ふと、シンはあることに気づいたようで蔑むように嘆息を漏らした。
「こんな時でも勃起するのか、人間という生き物は。……ああ、こんな時だからこそ、子孫を残そうと本能が働くのか?」
そう言って、マキトのまだなお反り勃つものを、服越しからもう一方の手で鷲掴んだ。マキトの口から、豚が轢き殺されたような悲鳴が上がった。
「や、やめ……はなっ……離してっ……離してくださいいぃっ……!」
顔面のあらゆる場所から噴き出す体液が、シンの手元を濡らした。すっかり口調も変わり、必死に懇願するマキトに、シンはいくらか機嫌が直ったのか、笑みを含んだ声音で極めて明るく言い放つ。
「嫌よ嫌よも好きのうちって言葉、知ってるか? あれは嫌がる相手に多少なりとも好意的な感情がある場合に当てられる俗語らしいが……お前のように相手を思いやることもできん、理性の利かない直情的なやつは、将来子孫を残してもろくなものに育たないだろうからな。性欲もコントロールできていないようだし、何より今後、お前に付き合わされる女子供が可哀想だ。だから……」
「うぎゃあああ!?」
それとほぼ同時に、レイヴンの口からも短い悲鳴が上がった。
「要らないよな? こんなもの」
プラン、とシンが指で摘むものは、つい今までマキトの一部だったものだ。
顔色一つ変えないシンは、今度は自身の声音に善意を乗せて、マキトに言った。
「良かったな。これでもう、性欲に振り回されることなく、余生を過ごせるぞ」
それは死刑宣告と同義だった。雄の象徴とも呼ぶべきそれを失くしてしまっては、マキトはもう二度と子種を作ることも、血筋を後世に残すこともできはしない。
この村で子を成せない男は、ただの穀潰し……畜生以下として扱われる。それをシンが知ることはないにしても、同じ男であれば今やってのけたことがどれだけ残忍なものであるか、わからないはずがない。
マキトはぐるんと白目を剥いたかと思うと、口からブクブクと泡を吹いて失神してしまった。
シンはパッと手を開くと、マキトは脚から順に床へ倒れた。その広い背の上に、塵でも捨てるかのようにシンは手の中のマキトだったものを放り投げる。
「ああ、悪いな。レイヴン。家の中を汚してしまった」
くるりと振り返るシンの足元は、瞬く間にできた血溜まりで満たされていた。
普段と変わらぬ微笑を浮かべるシンを前にしても、レイヴンから震えは消えなかった。当然だ。たった今、凄惨な光景を目に焼きつかせた張本人が、まるで人が変わったように自分の前で振る舞うのだから、恐怖を感じないはずがない。
レイヴンは小刻みに震える身体をそのままに、シンからゆっくりと視線を落とした。しかしピタリと、ある部分で首が止まり、レイヴンは魂がその身体に戻ったかのように声を張り上げた。
「そんな……そんなことよりっ……シンさんっ! お、お腹の傷がっ……!」
「ん? ……ああ、裂けたか」
やはり、よほどの力だったのだろう。順調に回復しつつあった腹の傷が裂けたらしい。服越しからもはっきりとわかる、ダラダラと流れる真っ赤な血が、マキトの床のそれと混ざり合うのに時間はかからなかった。
「こんな時でも勃起するのか、人間という生き物は。……ああ、こんな時だからこそ、子孫を残そうと本能が働くのか?」
そう言って、マキトのまだなお反り勃つものを、服越しからもう一方の手で鷲掴んだ。マキトの口から、豚が轢き殺されたような悲鳴が上がった。
「や、やめ……はなっ……離してっ……離してくださいいぃっ……!」
顔面のあらゆる場所から噴き出す体液が、シンの手元を濡らした。すっかり口調も変わり、必死に懇願するマキトに、シンはいくらか機嫌が直ったのか、笑みを含んだ声音で極めて明るく言い放つ。
「嫌よ嫌よも好きのうちって言葉、知ってるか? あれは嫌がる相手に多少なりとも好意的な感情がある場合に当てられる俗語らしいが……お前のように相手を思いやることもできん、理性の利かない直情的なやつは、将来子孫を残してもろくなものに育たないだろうからな。性欲もコントロールできていないようだし、何より今後、お前に付き合わされる女子供が可哀想だ。だから……」
「うぎゃあああ!?」
それとほぼ同時に、レイヴンの口からも短い悲鳴が上がった。
「要らないよな? こんなもの」
プラン、とシンが指で摘むものは、つい今までマキトの一部だったものだ。
顔色一つ変えないシンは、今度は自身の声音に善意を乗せて、マキトに言った。
「良かったな。これでもう、性欲に振り回されることなく、余生を過ごせるぞ」
それは死刑宣告と同義だった。雄の象徴とも呼ぶべきそれを失くしてしまっては、マキトはもう二度と子種を作ることも、血筋を後世に残すこともできはしない。
この村で子を成せない男は、ただの穀潰し……畜生以下として扱われる。それをシンが知ることはないにしても、同じ男であれば今やってのけたことがどれだけ残忍なものであるか、わからないはずがない。
マキトはぐるんと白目を剥いたかと思うと、口からブクブクと泡を吹いて失神してしまった。
シンはパッと手を開くと、マキトは脚から順に床へ倒れた。その広い背の上に、塵でも捨てるかのようにシンは手の中のマキトだったものを放り投げる。
「ああ、悪いな。レイヴン。家の中を汚してしまった」
くるりと振り返るシンの足元は、瞬く間にできた血溜まりで満たされていた。
普段と変わらぬ微笑を浮かべるシンを前にしても、レイヴンから震えは消えなかった。当然だ。たった今、凄惨な光景を目に焼きつかせた張本人が、まるで人が変わったように自分の前で振る舞うのだから、恐怖を感じないはずがない。
レイヴンは小刻みに震える身体をそのままに、シンからゆっくりと視線を落とした。しかしピタリと、ある部分で首が止まり、レイヴンは魂がその身体に戻ったかのように声を張り上げた。
「そんな……そんなことよりっ……シンさんっ! お、お腹の傷がっ……!」
「ん? ……ああ、裂けたか」
やはり、よほどの力だったのだろう。順調に回復しつつあった腹の傷が裂けたらしい。服越しからもはっきりとわかる、ダラダラと流れる真っ赤な血が、マキトの床のそれと混ざり合うのに時間はかからなかった。
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