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「ヘルボックス」4(※)
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※以下、主人公以外の登場人物の受け(SM)描写があります。苦手な方はご注意ください。
「まあ、答えてもいいけどよ……」
黒幕はポリポリと衣装越しに頭を掻きながら、しかし俺に答える前にある質問を口にした。
「お前。そんなに弟が大切か?」
何を当たり前のことを、と。俺は声に苛立ちを含ませ即答する。
「あ、当たり前だろ……! 兄弟なんだから……。だから……」
だから早くこちらの質問に答えろ、と。俺は続けようとした。
だが、黒幕はすかさず……
「じゃあ、兄弟じゃなかったら?」
「え……?」
と、予想外の問いを俺に投げかけた。
兄弟じゃなかったら? 何を言っているんだ? 雅は兄弟だ。それは間違いないのに、そうじゃなかったらだなんて……。
俺は質問の意味がわからず、黒幕を見上げたまま固まった。
対して、黒幕は不思議そうに首を傾げた。
「難しい質問か? 血の繋がり云々は置いといて、あの男と兄弟じゃなかったら、どうなんだと聞いているんだ」
「そ、それは……」
そんなこと、考えたこともない。だって雅は、両親から大切にされてきた子どもで、俺の弟なんだ。好きや嫌いで答える存在じゃない。大切なのは当たり前のことだ。それを……
血の繋がりが、なかったら? なかったとしたら、俺は……雅が……
「……っ」
「散々、お前を蔑んできた奴だぞ。金だって、お前が汗水垂らして働き得たものを脅し、掻っ攫う。身内であっても、それは犯罪行為だ。そんな最低な奴を、ただ『兄弟』だからという理由で気にかけるのか?」
改めて、他人の口から雅にされてきた行為を聞かされると、「ああ、最低だな」と思わないでもない。けれど、それももう俺にとっては日常的なことで、特別彼を嫌う理由にはならない。
ただ、俺は雅の兄だから。やはりそれしか、雅を大切に思う理由はない。
俺が黙り込むと、黒幕は苛立ったように「チッ」と舌打ちをした。
「こっちに来たら、その"呪い"から解けるもんだと思っていたのによ……」
「……何?」
「ま、いいや。そろそろ来るはずだから」
何かをボソボソと言った後、黒幕はスッと、俺とは反対の方向へと指を向けた。素直に視線を辿っていくと、その先からは生暖かい風とともに、ペタペタと音を立てて、"あるもの"がやって来た。
僅かな明かりはあっても、この異様な空間自体が暗くてよく見えないから、それが何なのかわかるまで数秒かかった。はじめは四足歩行の生き物だと捉えた。次に犬。それにしては、サイズが大きいな……と。"彼"が黒幕の足元にやって来るまで、俺はのんびりと考えていた。
「うわっ……!?」
やって来たものを理解した瞬間、俺はまたも声をあげて驚いた。犬じゃない。人間だ。それも大人の男。髪は肩下ほどまで長いが、俺よりも遥かにいい図体をしている。
いったい何のプレイを見せられているんだ……?
黒幕の足元で、"おすわり"をする彼は、胸から陰部にかけてが丸見えの、黒いボンデージスーツを纏っていた。また犬らしく、薄茶色の頭には垂れた獣耳のカチューシャと、尻の方には長い尻尾をつけていた。
「か、彼は……?」
「ん? お前が望んでいた野郎だけど」
「……っ、まさか……!」
あまりの変わりように気づけなかった。俺はベッドから急ぎ離れると、素っ裸のまま彼の下へと駆け寄った。
「雅っ……!」
「フッ……フッ……」
俺の呼びかけに雅は言葉を発しない。それもそのはず。彼は喋れないよう、口元にボール状の猿ぐつわを噛まされていた。
また、よく見ると雅の身体には赤や紫といった鬱血痕が無数に散っていた。尻に関しては特に酷く、猿のように赤く腫れ上がっている。
臭いも酷い。様々な体液が乾いてシールのように全身に貼り付いていた。
「なんだよ、これ……惨い……」
口元を押さえて呟くと、黒幕は心外だとばかりに言った。
「酷い? どこが?」
「どこがって……こんなに身体がボロボロなんだぞ……! あちこちが痣だらけで……それに、尻なんか真っ赤で……!」
「そりゃ、スパンキングされたからだ。あちこちが痣だらけなのはただのキスマークだし……そもそも、ひでぇことされて感じる変態なんだから、仕方ねえだろ」
「…………は?」
変態? 雅が? いやいやいや。酷いことをしている変態は黒幕だろ? 雅がこんなSMプレイのMのようなことを喜んで受け入れるわけがない。だってあの俺様雅だぞ!
「ぅ……っ……フゥッ……!」
弟の苦しそうな呼吸に、俺は一旦黒幕から視線を外し、彼の両肩を支えた。
「く、苦しいのか? そうだよな……えっと、この猿ぐつわを外せばいいのか……?」
「う……うぅ……」
何だ? 雅の身体がやけに震えているような気が……
他に苦しいところがあるのかと、俺は彼の身体を細見する。すると、尻に装着されている犬の尻尾が、アナルから直接生えているものだと知り、さらに驚愕した。
これ……アレか? いわゆる、大人の玩具的な……アレか?
それに微かに聞こえる、スマホのマナーモードのような音。つまり、先端をモザイクかけないと駄目なやつが雅のアソコにブチ込まれている、ってことだよな?
そういうこと、だよな……?
「ま、待ってろ……! すぐに抜いてやるから……って、これ……そのまま、ぬ、抜いていい、んだよな?」
言ったものの、大人の玩具なんて実際に見たこともなければ触れたこともない。こういうものに、抜き方とか、作法ってあるの? と、俺はあわあわしながら黒幕を見上げた。
「まあ、答えてもいいけどよ……」
黒幕はポリポリと衣装越しに頭を掻きながら、しかし俺に答える前にある質問を口にした。
「お前。そんなに弟が大切か?」
何を当たり前のことを、と。俺は声に苛立ちを含ませ即答する。
「あ、当たり前だろ……! 兄弟なんだから……。だから……」
だから早くこちらの質問に答えろ、と。俺は続けようとした。
だが、黒幕はすかさず……
「じゃあ、兄弟じゃなかったら?」
「え……?」
と、予想外の問いを俺に投げかけた。
兄弟じゃなかったら? 何を言っているんだ? 雅は兄弟だ。それは間違いないのに、そうじゃなかったらだなんて……。
俺は質問の意味がわからず、黒幕を見上げたまま固まった。
対して、黒幕は不思議そうに首を傾げた。
「難しい質問か? 血の繋がり云々は置いといて、あの男と兄弟じゃなかったら、どうなんだと聞いているんだ」
「そ、それは……」
そんなこと、考えたこともない。だって雅は、両親から大切にされてきた子どもで、俺の弟なんだ。好きや嫌いで答える存在じゃない。大切なのは当たり前のことだ。それを……
血の繋がりが、なかったら? なかったとしたら、俺は……雅が……
「……っ」
「散々、お前を蔑んできた奴だぞ。金だって、お前が汗水垂らして働き得たものを脅し、掻っ攫う。身内であっても、それは犯罪行為だ。そんな最低な奴を、ただ『兄弟』だからという理由で気にかけるのか?」
改めて、他人の口から雅にされてきた行為を聞かされると、「ああ、最低だな」と思わないでもない。けれど、それももう俺にとっては日常的なことで、特別彼を嫌う理由にはならない。
ただ、俺は雅の兄だから。やはりそれしか、雅を大切に思う理由はない。
俺が黙り込むと、黒幕は苛立ったように「チッ」と舌打ちをした。
「こっちに来たら、その"呪い"から解けるもんだと思っていたのによ……」
「……何?」
「ま、いいや。そろそろ来るはずだから」
何かをボソボソと言った後、黒幕はスッと、俺とは反対の方向へと指を向けた。素直に視線を辿っていくと、その先からは生暖かい風とともに、ペタペタと音を立てて、"あるもの"がやって来た。
僅かな明かりはあっても、この異様な空間自体が暗くてよく見えないから、それが何なのかわかるまで数秒かかった。はじめは四足歩行の生き物だと捉えた。次に犬。それにしては、サイズが大きいな……と。"彼"が黒幕の足元にやって来るまで、俺はのんびりと考えていた。
「うわっ……!?」
やって来たものを理解した瞬間、俺はまたも声をあげて驚いた。犬じゃない。人間だ。それも大人の男。髪は肩下ほどまで長いが、俺よりも遥かにいい図体をしている。
いったい何のプレイを見せられているんだ……?
黒幕の足元で、"おすわり"をする彼は、胸から陰部にかけてが丸見えの、黒いボンデージスーツを纏っていた。また犬らしく、薄茶色の頭には垂れた獣耳のカチューシャと、尻の方には長い尻尾をつけていた。
「か、彼は……?」
「ん? お前が望んでいた野郎だけど」
「……っ、まさか……!」
あまりの変わりように気づけなかった。俺はベッドから急ぎ離れると、素っ裸のまま彼の下へと駆け寄った。
「雅っ……!」
「フッ……フッ……」
俺の呼びかけに雅は言葉を発しない。それもそのはず。彼は喋れないよう、口元にボール状の猿ぐつわを噛まされていた。
また、よく見ると雅の身体には赤や紫といった鬱血痕が無数に散っていた。尻に関しては特に酷く、猿のように赤く腫れ上がっている。
臭いも酷い。様々な体液が乾いてシールのように全身に貼り付いていた。
「なんだよ、これ……惨い……」
口元を押さえて呟くと、黒幕は心外だとばかりに言った。
「酷い? どこが?」
「どこがって……こんなに身体がボロボロなんだぞ……! あちこちが痣だらけで……それに、尻なんか真っ赤で……!」
「そりゃ、スパンキングされたからだ。あちこちが痣だらけなのはただのキスマークだし……そもそも、ひでぇことされて感じる変態なんだから、仕方ねえだろ」
「…………は?」
変態? 雅が? いやいやいや。酷いことをしている変態は黒幕だろ? 雅がこんなSMプレイのMのようなことを喜んで受け入れるわけがない。だってあの俺様雅だぞ!
「ぅ……っ……フゥッ……!」
弟の苦しそうな呼吸に、俺は一旦黒幕から視線を外し、彼の両肩を支えた。
「く、苦しいのか? そうだよな……えっと、この猿ぐつわを外せばいいのか……?」
「う……うぅ……」
何だ? 雅の身体がやけに震えているような気が……
他に苦しいところがあるのかと、俺は彼の身体を細見する。すると、尻に装着されている犬の尻尾が、アナルから直接生えているものだと知り、さらに驚愕した。
これ……アレか? いわゆる、大人の玩具的な……アレか?
それに微かに聞こえる、スマホのマナーモードのような音。つまり、先端をモザイクかけないと駄目なやつが雅のアソコにブチ込まれている、ってことだよな?
そういうこと、だよな……?
「ま、待ってろ……! すぐに抜いてやるから……って、これ……そのまま、ぬ、抜いていい、んだよな?」
言ったものの、大人の玩具なんて実際に見たこともなければ触れたこともない。こういうものに、抜き方とか、作法ってあるの? と、俺はあわあわしながら黒幕を見上げた。
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