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「ゲーム4」6
しおりを挟むガチガチと奥歯を鳴らしながら、俺はバイロン、続いてルイス、セルの順番に見渡し、懇願した。
裂けたら終わりだ。想像するだけで涙が出そうになる。何なら、ワンカウントされた時点ですでに涙目だった。
如何せん身体がままならない。腹を括ったところで、これだよ。
せっかく三人が覚悟を決めておっ始めようとしてくれているっていうのに、申し訳無さが半端ない。
もしもこれでやる気が削がれてしまったら……? そこまでの考えに至る余裕は微塵もなかった。
……が、微塵もなくて問題はなかった。
誰かがゴクン、と喉を鳴らした。
誰だろう、とすぐに正面のバイロンを見上げると、彼は「グルル……」と唸りながら、目元に手の平を添えて天井を仰いでいた。
「ば、バイロン……?」
「……それは、意図してやっているのか?」
「え、何? 糸?」
「うん。これは予想外……。不意打ちもいいところだ」
「ルイス……?」
背後の声に眉を中央に寄せながら振り返ると、ルイスもまた口元に手を添え、俺から顔を背けていた。
今度は何? また何か、やらかしちゃったのか? 俺は。
「あ、あの……」
「スグル」
「は、はいっ……!」
今度は、なんだか必死に怒りを抑えているようなセルに名を呼ばれ、俺は上擦りつつも返事をした。
か、顔が怖いっ。あのセルが? ほんとに何か、まずいことを言っちゃったのか、俺!?
青くも険しい瞳がこちらに近づき、俺は堪らずぎゅっと目を瞑った。
すると、耳元で妙に艶めかしい吐息とともに、こんな言葉が落ちてきた。
「あまり……煽るな」
「……はい?」
今、なんと仰ったの? セルさん?
意味がわからず目元の力を抜くと、突如、下の方からヌルリとした棒状の何かが俺の中へと侵入した。
「あっ!? ぁんっ、ん、んんんぅ……!?」
ズブズブ、と中へ入っていくそれに躊躇いは感じられず、俺はくぐもった声を上げた。
それがいったい何なのか、きっと「ゲーム3」を経験していなかったら、己では永久に答えられなかったのかもしれない。
「ぅ……ぐぅ……んん……!」
また、それはもう一本、二本と徐々に増えていった。たちまち、腸壁が圧迫され、間接的に近くの臓器を刺激される。
うねうねと蠢くそれらが、まるで蛇のようにも感じられた。
「ぁ……だ、誰っ…んっ、だ、れの……ゆ、指……ぁんっ……なの……あっ……ああぁぁ……!」
悲鳴にも近い声を上げると、誰かがクスリと笑った気がした。
「さあ、誰のでしょう?」
口調からして、答えたのはルイスだろうか? なら、この指はすべて彼のもの? でも、俺の中で蠢く蛇達はそれぞれが別の意識を持っているようだ。
全身が擽ったいような、もどかしいような、痺れるような、そんな複雑な感覚に襲われ、俺はバイロンに抱きつきながら抵抗の声を上げた。
「あ、ん……や……ぁ……や、だぁ……んっ、か、掻き回さない……でぇ……!」
しかしその程度の台詞で中の動きが止まるはずもなかった。
思考がだんだんと鈍くなっていく中で、頭より上の方では俺を除いた三人が、声を潜めて話し合っていた。
「一度入ったからか、スムーズだな」
「ああ、それなんだが……スグルは経験済みだ」
「何……?」
「ということは、まさか……"奴"が?」
「おそらくな。スグルにはその記憶がない上に、中を漁られないよう頭にプロテクトをかけられているが、まず間違いなく開発されている。でなければ、唾液程度の潤滑剤でこうも受け入れられるわけがない」
「なるほど。この感度にも合点がいく、というものか」
「あっ……ああぁっ……!?」
誰かの指が、俺の中のある一点を擦り始めた。
一層高い声が口から漏れる。萎えていたはずのペニスはいつの間にか硬度を増しており、先の方からはテラテラと体液を垂らし始めた。
「んっ……ぉ、ねがっ……も……やぁ……! からだっ……あっ……変……へん、に……なる……んんっ……んぁああ……!?」
最初よりは少なく、色も薄くなったものが、ビュルッと吹き出た。
直後、機械的な音がこの空間に響いた。
「これで二回目か」
セルが言うと、ジュプッ、ジュプッ、と俺の中から順番に指が引き抜かれていく。
その中で、最後の一本が抜かれた途端……
「んっ、ふあぁんっ……!」
痙攣のように、身体が震えた。そしてなぜか、今しがた耳にしたばかりの音が再度ポーン、と鳴った。
「まさか、スグル」
「抜いただけでイったのか?」
ルイスとバイロンが俺の顔と壁面を交互に見ながら問いかけた。まさか、そんな……だって、今のに至っては射精もなかったのに。
ゼエゼエと息をしながら、俺は緩やかに首を振った。
「ち、ちが……」
違う。だけど、射精した時と変わらない快感が身体を襲ったのも事実だった。
「ああ、なるほど……」
と、ルイスが、
「これまでの積み重ねで身体が鋭敏になっているのか。ふふっ。ますます楽しみになってきたよ」
心底愉快そうに言った。なんだか無性に、このダークエルフが恨めしくなった。
「さて」
と、俺の身体を支えながら、バイロンが切り出した。
「決めるか。順番を」
ん? それは何の順番?
疑問はすぐ頭に浮かんだ。が、疲弊した身体でそれを口にすることはできなかった。
息を整えながら、しばし様子を見ていると、三人は……
「しかしどうやって決める? ここにはクジもないぞ」
「公平な決め方がある。スグルから教えてもらった」
「ああ、ジャンケンというやつか」
「そうか。それなら」
じゃ……ジャンケン? 確かにそれは、過去彼らに教えたことがあるけれど、なぜ急にジャンケンが?
「ね……ねぇ……さっき、から……いったい……何を……話してるの……?」
やや掠れた声だったが、俺はようやく三人に尋ねることができた。そして当然のように返ってきたのは……
「何って、決まっているだろう?」
「スグルのアナルに、誰が最初に挿れるのか、だよ」
瞬間、ヒュッ、と喉へ冷たい空気が流れ込んだ。
誰が最初に挿れるのか? 何を? 何って……ナニを、だよな??
もう? もう……!?
「……っ、そ、そんな……俺っ……ほんとに、経験ないし……ゆ、指は入ったけど……それ以上のものは……まだ……な、慣らさない、と……」
絶対に裂けてしまう。それに、ここにはローションのようなものもない。未経験の俺が、何もなしで男性のアレを受け入れられるはずがない。そうだろう!?
「無理じゃないさ。それに、入念に解すことくらい私やセルならできるしね」
と、ルイスは自身の真っ赤な舌を、かの有名な物理学者の如く出してみせた。
なぜ、バイロンは省かれたのか。「ゲーム3」までクリアしてきたのだ。さすがにそれが、わからないではなかった。
「というわけで、ジャンケンをしよう」
「……っ」
帝国最強の騎士と、帝国最強の魔術師と、帝国最強のビーストテイマーが……じゃ、ジャンケン……? この絵面、俺はどう受け止めればいいの!?
それよりも! おおお、お願いしますっ……! どうか……どうか、初手はバイロン以外でお願いします、せめて! 俺は神に祈り出した。
やっぱりどう考えたって、アレのサイズが規格外だろ獣人の場合! ならせめて……せめて、同じヒト科であるセルか、まだ形状が近いであろうルイスがいい!
……いや、全員ご立派そうだけど!!
お願い!!
「お、勝ったな」
バイロンんんんん!!
数度のあいこの後、パーを出すセルとルイスに対して、バイロンはチョキを出していた。
お、終わった……。
この瞬間に、俺は明日から先のオムツ生活が確定した。
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