54 / 60
「ゲーム4」6
しおりを挟むガチガチと奥歯を鳴らしながら、俺はバイロン、続いてルイス、セルの順番に見渡し、懇願した。
裂けたら終わりだ。想像するだけで涙が出そうになる。何なら、ワンカウントされた時点ですでに涙目だった。
如何せん身体がままならない。腹を括ったところで、これだよ。
せっかく三人が覚悟を決めておっ始めようとしてくれているっていうのに、申し訳無さが半端ない。
もしもこれでやる気が削がれてしまったら……? そこまでの考えに至る余裕は微塵もなかった。
……が、微塵もなくて問題はなかった。
誰かがゴクン、と喉を鳴らした。
誰だろう、とすぐに正面のバイロンを見上げると、彼は「グルル……」と唸りながら、目元に手の平を添えて天井を仰いでいた。
「ば、バイロン……?」
「……それは、意図してやっているのか?」
「え、何? 糸?」
「うん。これは予想外……。不意打ちもいいところだ」
「ルイス……?」
背後の声に眉を中央に寄せながら振り返ると、ルイスもまた口元に手を添え、俺から顔を背けていた。
今度は何? また何か、やらかしちゃったのか? 俺は。
「あ、あの……」
「スグル」
「は、はいっ……!」
今度は、なんだか必死に怒りを抑えているようなセルに名を呼ばれ、俺は上擦りつつも返事をした。
か、顔が怖いっ。あのセルが? ほんとに何か、まずいことを言っちゃったのか、俺!?
青くも険しい瞳がこちらに近づき、俺は堪らずぎゅっと目を瞑った。
すると、耳元で妙に艶めかしい吐息とともに、こんな言葉が落ちてきた。
「あまり……煽るな」
「……はい?」
今、なんと仰ったの? セルさん?
意味がわからず目元の力を抜くと、突如、下の方からヌルリとした棒状の何かが俺の中へと侵入した。
「あっ!? ぁんっ、ん、んんんぅ……!?」
ズブズブ、と中へ入っていくそれに躊躇いは感じられず、俺はくぐもった声を上げた。
それがいったい何なのか、きっと「ゲーム3」を経験していなかったら、己では永久に答えられなかったのかもしれない。
「ぅ……ぐぅ……んん……!」
また、それはもう一本、二本と徐々に増えていった。たちまち、腸壁が圧迫され、間接的に近くの臓器を刺激される。
うねうねと蠢くそれらが、まるで蛇のようにも感じられた。
「ぁ……だ、誰っ…んっ、だ、れの……ゆ、指……ぁんっ……なの……あっ……ああぁぁ……!」
悲鳴にも近い声を上げると、誰かがクスリと笑った気がした。
「さあ、誰のでしょう?」
口調からして、答えたのはルイスだろうか? なら、この指はすべて彼のもの? でも、俺の中で蠢く蛇達はそれぞれが別の意識を持っているようだ。
全身が擽ったいような、もどかしいような、痺れるような、そんな複雑な感覚に襲われ、俺はバイロンに抱きつきながら抵抗の声を上げた。
「あ、ん……や……ぁ……や、だぁ……んっ、か、掻き回さない……でぇ……!」
しかしその程度の台詞で中の動きが止まるはずもなかった。
思考がだんだんと鈍くなっていく中で、頭より上の方では俺を除いた三人が、声を潜めて話し合っていた。
「一度入ったからか、スムーズだな」
「ああ、それなんだが……スグルは経験済みだ」
「何……?」
「ということは、まさか……"奴"が?」
「おそらくな。スグルにはその記憶がない上に、中を漁られないよう頭にプロテクトをかけられているが、まず間違いなく開発されている。でなければ、唾液程度の潤滑剤でこうも受け入れられるわけがない」
「なるほど。この感度にも合点がいく、というものか」
「あっ……ああぁっ……!?」
誰かの指が、俺の中のある一点を擦り始めた。
一層高い声が口から漏れる。萎えていたはずのペニスはいつの間にか硬度を増しており、先の方からはテラテラと体液を垂らし始めた。
「んっ……ぉ、ねがっ……も……やぁ……! からだっ……あっ……変……へん、に……なる……んんっ……んぁああ……!?」
最初よりは少なく、色も薄くなったものが、ビュルッと吹き出た。
直後、機械的な音がこの空間に響いた。
「これで二回目か」
セルが言うと、ジュプッ、ジュプッ、と俺の中から順番に指が引き抜かれていく。
その中で、最後の一本が抜かれた途端……
「んっ、ふあぁんっ……!」
痙攣のように、身体が震えた。そしてなぜか、今しがた耳にしたばかりの音が再度ポーン、と鳴った。
「まさか、スグル」
「抜いただけでイったのか?」
ルイスとバイロンが俺の顔と壁面を交互に見ながら問いかけた。まさか、そんな……だって、今のに至っては射精もなかったのに。
ゼエゼエと息をしながら、俺は緩やかに首を振った。
「ち、ちが……」
違う。だけど、射精した時と変わらない快感が身体を襲ったのも事実だった。
「ああ、なるほど……」
と、ルイスが、
「これまでの積み重ねで身体が鋭敏になっているのか。ふふっ。ますます楽しみになってきたよ」
心底愉快そうに言った。なんだか無性に、このダークエルフが恨めしくなった。
「さて」
と、俺の身体を支えながら、バイロンが切り出した。
「決めるか。順番を」
ん? それは何の順番?
疑問はすぐ頭に浮かんだ。が、疲弊した身体でそれを口にすることはできなかった。
息を整えながら、しばし様子を見ていると、三人は……
「しかしどうやって決める? ここにはクジもないぞ」
「公平な決め方がある。スグルから教えてもらった」
「ああ、ジャンケンというやつか」
「そうか。それなら」
じゃ……ジャンケン? 確かにそれは、過去彼らに教えたことがあるけれど、なぜ急にジャンケンが?
「ね……ねぇ……さっき、から……いったい……何を……話してるの……?」
やや掠れた声だったが、俺はようやく三人に尋ねることができた。そして当然のように返ってきたのは……
「何って、決まっているだろう?」
「スグルのアナルに、誰が最初に挿れるのか、だよ」
瞬間、ヒュッ、と喉へ冷たい空気が流れ込んだ。
誰が最初に挿れるのか? 何を? 何って……ナニを、だよな??
もう? もう……!?
「……っ、そ、そんな……俺っ……ほんとに、経験ないし……ゆ、指は入ったけど……それ以上のものは……まだ……な、慣らさない、と……」
絶対に裂けてしまう。それに、ここにはローションのようなものもない。未経験の俺が、何もなしで男性のアレを受け入れられるはずがない。そうだろう!?
「無理じゃないさ。それに、入念に解すことくらい私やセルならできるしね」
と、ルイスは自身の真っ赤な舌を、かの有名な物理学者の如く出してみせた。
なぜ、バイロンは省かれたのか。「ゲーム3」までクリアしてきたのだ。さすがにそれが、わからないではなかった。
「というわけで、ジャンケンをしよう」
「……っ」
帝国最強の騎士と、帝国最強の魔術師と、帝国最強のビーストテイマーが……じゃ、ジャンケン……? この絵面、俺はどう受け止めればいいの!?
それよりも! おおお、お願いしますっ……! どうか……どうか、初手はバイロン以外でお願いします、せめて! 俺は神に祈り出した。
やっぱりどう考えたって、アレのサイズが規格外だろ獣人の場合! ならせめて……せめて、同じヒト科であるセルか、まだ形状が近いであろうルイスがいい!
……いや、全員ご立派そうだけど!!
お願い!!
「お、勝ったな」
バイロンんんんん!!
数度のあいこの後、パーを出すセルとルイスに対して、バイロンはチョキを出していた。
お、終わった……。
この瞬間に、俺は明日から先のオムツ生活が確定した。
257
お気に入りに追加
914
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。


俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる