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「ゲーム4」2
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確かに今回のゲームも、クリアに向けて条件のどちらか一方を選ぶスタイルだ。何も十回、エクスタシーを感じなくとも、ゲームを終わらせることはできる。
できるけれど……
「も、もう一方は……」
俺はもう一度、壁面に表示されているルールを読んだ。
『プレイヤー全員が生贄の中で1回ずつ射精をすること』
つまり、セル、ルイス、バイロンの三人とヤれってことだ。俺は頭を抱えた。
ゲームをクリアするに連れて、内容がよりハードになっていく流れは、とっくに理解したはずだった。また、そのベクトルは真逆で、より残酷になっていくか、よりエッチになっていくかの二択だった。
それでも、誰かとセックスすることはないと思っていた。それだけは、ないだろうって。頭が勝手に思い込んでいたんだ。
だから今、俺は絶望している。自分の顔から、サッと血の気が引いていくのがわかった。
「む、無理っ……だよ……だ、だってこれ……俺の中に、さ、三人の……アレを挿れて……射精するってことだろ? 俺の中、なんていったら……」
俺には女性のように、男のペニスを受け入れられる器官など、もちろん備わっていない。では、どこを使ってクリアしろというのか?
「く、口か……尻で……受け止めるしか、ないじゃんか……!」
奥歯をカチカチと鳴らしながら、俺は声を振り絞りそう言った。
駄目だ……怖い。三人のペニスを、そういった目的で使ったことのない尻で受け止めるなんて。それを一人でも相手にしようものなら、今度こそ身体がどうにかなってしまいそうで、怖い。
セルやルイスはまだ、人としてのサイズが予想されるけれど、バイロンは獣人だ。身体がすでに大きいし、それに伴ってアレは規格外かもしれない。赤ん坊の腕……いや、ペットボトル並み? どちらにせよ、凶器のようなそれを挿入されようものなら、一発で裂けてしまうだろう。
想像しただけで、身体の内側から何かが迫り上がるような感覚に襲われる。震える手で口元を押さえながら、俺は頭を振った。
「絶対……そんなの……無理、だから……」
でも仕方がないだろう? 好きな人が相手ならともかく、そうじゃない、ましてや男となんて……できるわけが……
「大丈夫だ、スグル」
「バイ、ロン……?」
その時、バイロンがポンと俺の頭に手を乗せて、柔らかく微笑んだ。瞬間、何が大丈夫なのかと問いたい気持ちよりも、なんの確証もない不思議な安堵感の方が勝り、俺の身体から震えが止んだ。
また、俺の身体を抱き締めたままのセルも、同じく大丈夫だと言わんばかりに、一層強く俺を抱いた。
「言っただろう? スグル。私は君を傷つけることは絶対にしない、と。それはセルやバイロンも同じだよ。だからどうか、我々を信じて欲しい」
彼らに続くように、今度はルイスが俺の頬に手を添えながら、あやすように優しく声をかけた。
「……っ」
それがなんだか、たまらなく嬉しくて、たまらなく辛かった。
どこまでも弱気で、自分のことばかりを考えていて、常に逃げ腰の俺に、どうしてこの人達はこんなにも優しいのか。
俺は元の世界で、血の繋がった両親にも弟にも蔑まれ、疎まれているような、そんなちっぽけな人間だ。肝心な時に役に立たない。見返りを求められても、返せるものなんてない。お金もなければ魔法も使えない、賢者のような知識も頭脳もない。ただ映画が好きなだけの陰キャオタクだ。
優しくするメリットなんてない。される理由もない。何もできない俺には、誰かに大切にされる価値なんて……これっぽっちもないのに。
『なら、どうしてあの時……お前は…………を、助けた?』
「……え?」
突如また、声が聞こえた。頭の中で、例の黒幕だろう声が。だけど、その声の調子はいつもと違った。
怒っている? 声は俺を窘めるような物言いだった。ふざけた調子は一切なくて、真剣な声音だった。
俺がうじうじと物事を考えているから? マイナスでいっぱいのネガティブ思考で頭の中を埋め尽くしていたから? けれどそんなこと、この黒幕には関係がないだろう?
それに……助けた? 俺が……誰を? 俺はこの異世界に来てから、特に交流の深かった人はいない。ましてや人助けなんて……むしろこっちに来てからは、周りに助けられてばかりだったというのに。俺が誰かを助けたことなんて……
「例の声が聞こえたのか? スグル」
俺の耳元で、セルが囁くように尋ねた。ハッとして顔を上げると、三人が三人とも一様に、険しいような、困ったような、悲しいような、そんな複雑な顔を浮かべていた。
「ぁ……う、うん……」
頷くとともに、俺はそれ以上、考えることをやめた。そうしないと、また誰かに怒られる気がしたからだ。
代わりに、ついて出たのは、こちらを見下ろす三人に対して、ずっと聞きたかったことだった。
「三人は、どうして……俺相手に、こんなことができるの?」
こんなこと、とは言わずもがなだ。彼らは呆気に取られたように、うっすらと目を見開き、こちらを見返した。
「い、命が懸かっているから、というのはわかるけれど……その相手は、俺……なんだよ。嫌だろ……普通。じ、実の弟だって……」
雅だって、嫌がった。ゲームを拒んだ未来で、俺が死ぬとわかっていても。
実際は死ななかったし、罰も受けなかったけれど。俺がそうなってもいいと、彼は思っていたんだ。
それほど、雅は俺のことを嫌っている。どうしてこんなに嫌われるのかはわからない。でも、きっと理由なんてなくて、ただ俺の存在が気に食わないのだろう。昔はそんなに……それほど仲が悪くなかったような気は……するけれど。よく思い出せない。
でも、実の兄弟でこれなんだ。ましてや、他人が俺を好いてくれるかもなんて、思えないだろう。
できるけれど……
「も、もう一方は……」
俺はもう一度、壁面に表示されているルールを読んだ。
『プレイヤー全員が生贄の中で1回ずつ射精をすること』
つまり、セル、ルイス、バイロンの三人とヤれってことだ。俺は頭を抱えた。
ゲームをクリアするに連れて、内容がよりハードになっていく流れは、とっくに理解したはずだった。また、そのベクトルは真逆で、より残酷になっていくか、よりエッチになっていくかの二択だった。
それでも、誰かとセックスすることはないと思っていた。それだけは、ないだろうって。頭が勝手に思い込んでいたんだ。
だから今、俺は絶望している。自分の顔から、サッと血の気が引いていくのがわかった。
「む、無理っ……だよ……だ、だってこれ……俺の中に、さ、三人の……アレを挿れて……射精するってことだろ? 俺の中、なんていったら……」
俺には女性のように、男のペニスを受け入れられる器官など、もちろん備わっていない。では、どこを使ってクリアしろというのか?
「く、口か……尻で……受け止めるしか、ないじゃんか……!」
奥歯をカチカチと鳴らしながら、俺は声を振り絞りそう言った。
駄目だ……怖い。三人のペニスを、そういった目的で使ったことのない尻で受け止めるなんて。それを一人でも相手にしようものなら、今度こそ身体がどうにかなってしまいそうで、怖い。
セルやルイスはまだ、人としてのサイズが予想されるけれど、バイロンは獣人だ。身体がすでに大きいし、それに伴ってアレは規格外かもしれない。赤ん坊の腕……いや、ペットボトル並み? どちらにせよ、凶器のようなそれを挿入されようものなら、一発で裂けてしまうだろう。
想像しただけで、身体の内側から何かが迫り上がるような感覚に襲われる。震える手で口元を押さえながら、俺は頭を振った。
「絶対……そんなの……無理、だから……」
でも仕方がないだろう? 好きな人が相手ならともかく、そうじゃない、ましてや男となんて……できるわけが……
「大丈夫だ、スグル」
「バイ、ロン……?」
その時、バイロンがポンと俺の頭に手を乗せて、柔らかく微笑んだ。瞬間、何が大丈夫なのかと問いたい気持ちよりも、なんの確証もない不思議な安堵感の方が勝り、俺の身体から震えが止んだ。
また、俺の身体を抱き締めたままのセルも、同じく大丈夫だと言わんばかりに、一層強く俺を抱いた。
「言っただろう? スグル。私は君を傷つけることは絶対にしない、と。それはセルやバイロンも同じだよ。だからどうか、我々を信じて欲しい」
彼らに続くように、今度はルイスが俺の頬に手を添えながら、あやすように優しく声をかけた。
「……っ」
それがなんだか、たまらなく嬉しくて、たまらなく辛かった。
どこまでも弱気で、自分のことばかりを考えていて、常に逃げ腰の俺に、どうしてこの人達はこんなにも優しいのか。
俺は元の世界で、血の繋がった両親にも弟にも蔑まれ、疎まれているような、そんなちっぽけな人間だ。肝心な時に役に立たない。見返りを求められても、返せるものなんてない。お金もなければ魔法も使えない、賢者のような知識も頭脳もない。ただ映画が好きなだけの陰キャオタクだ。
優しくするメリットなんてない。される理由もない。何もできない俺には、誰かに大切にされる価値なんて……これっぽっちもないのに。
『なら、どうしてあの時……お前は…………を、助けた?』
「……え?」
突如また、声が聞こえた。頭の中で、例の黒幕だろう声が。だけど、その声の調子はいつもと違った。
怒っている? 声は俺を窘めるような物言いだった。ふざけた調子は一切なくて、真剣な声音だった。
俺がうじうじと物事を考えているから? マイナスでいっぱいのネガティブ思考で頭の中を埋め尽くしていたから? けれどそんなこと、この黒幕には関係がないだろう?
それに……助けた? 俺が……誰を? 俺はこの異世界に来てから、特に交流の深かった人はいない。ましてや人助けなんて……むしろこっちに来てからは、周りに助けられてばかりだったというのに。俺が誰かを助けたことなんて……
「例の声が聞こえたのか? スグル」
俺の耳元で、セルが囁くように尋ねた。ハッとして顔を上げると、三人が三人とも一様に、険しいような、困ったような、悲しいような、そんな複雑な顔を浮かべていた。
「ぁ……う、うん……」
頷くとともに、俺はそれ以上、考えることをやめた。そうしないと、また誰かに怒られる気がしたからだ。
代わりに、ついて出たのは、こちらを見下ろす三人に対して、ずっと聞きたかったことだった。
「三人は、どうして……俺相手に、こんなことができるの?」
こんなこと、とは言わずもがなだ。彼らは呆気に取られたように、うっすらと目を見開き、こちらを見返した。
「い、命が懸かっているから、というのはわかるけれど……その相手は、俺……なんだよ。嫌だろ……普通。じ、実の弟だって……」
雅だって、嫌がった。ゲームを拒んだ未来で、俺が死ぬとわかっていても。
実際は死ななかったし、罰も受けなかったけれど。俺がそうなってもいいと、彼は思っていたんだ。
それほど、雅は俺のことを嫌っている。どうしてこんなに嫌われるのかはわからない。でも、きっと理由なんてなくて、ただ俺の存在が気に食わないのだろう。昔はそんなに……それほど仲が悪くなかったような気は……するけれど。よく思い出せない。
でも、実の兄弟でこれなんだ。ましてや、他人が俺を好いてくれるかもなんて、思えないだろう。
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