異世界での監禁デスゲームが、思っていたものとなんか違った

天白

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 この三人で敵わないって、もう絶望しかないじゃないか。どうやってもゲームをクリアしないと、ここから脱出できない仕様なんて……いや、待て。三人が敵わないような相手が企てたことなら、そもそもゲームをすべてクリアしたとしても、脱出できないんじゃないか?

 約束はちゃんと守るとかなんとか言ってたけれど、顔すら見せない相手の言うことなんて、到底信じられない。

 俺は三人に向かって、不安に思っていることをそのまま口にした。

「俺達、本当に……助かるのかな……?」

「スグル?」

「だってそうだろ? 三人で敵わない相手が黒幕なんだ……本当に、俺達を解放してくれるのかも怪しいよ。たとえこのままゲームをクリアしていったとしても、それがいつ終わるのかもわからないし……黒幕なら、結末だってどうとでもできるだろ。ゲームの内容だってそうだ。この先も俺達は、弄ぶだけ弄ばれて終わり、なんてことも……」

「「「いや、それはない」」」

 は、ハモった……!? 三人が三人とも、息ピッタリと!

「ぇ……そ、そう……なの?」

 あまりにもきっぱりと断言する彼らに、びっくりし過ぎて間抜けた声で聞き返してしまう。

 すると、そんな俺を前に三人は……

「こちらにルールを提示している以上、それを破ることはないだろう」

「セルの言う通りだ。やることなすことは滅茶苦茶だが、己の決めたルールだけは守る奴だ」

「だから我々が一丸となってゲームに挑めば、絶対にここから出られるよ」

「そ……そう、なんだ?」

 まるで黒幕の肩を持つような発言を、彼らは順番に口にした。

 な、なんだかすごく信頼されてない? このデスゲームの黒幕。

 俺が映画で観たデスゲームの黒幕像から、印象がかなりかけ離れていってる気がするんだけど……それって、どうなの?



 ーーーーーー…

 ーーーー…

 ーー…


 ???side


「何これ。すっげぇ信頼度じゃねえか」

 心の中で思ったことを、つい声に出してしまった。いけねえ。音声切っていたか? これ、「生贄」に聞こえてないよな?

 オレは慌てて、水面に浮かぶ彼の様子を窺った。ああ、よかった。様子からして聞こえていないようだ。というか、それどころじゃねえって反応だな。そりゃそうか。今じゃ敵の肩を持つような発言をするんだもんな、あいつら。

 しっかし、あの三人には驚かされるなぁ。何の前触れもなく不気味な空間に閉じ込めて、命懸けのふざけたゲームを作って、それを強制的にやらせているってのに……こっちが引くくらい冷静なんだからよ。しかもバレてるし。何なの、あいつら。実はオレのことが好きなの?

 そんなことをあいつらの前で言おうものなら、きっとゴミでも見るかのような目で蔑まれることだろう。わかってるっての。あいつらが好きなのは一人だけだ。オレじゃない。そんなことは端からわかっている。わかっているさ。

 わかっているからこそ……

「はぁ……」

 ため息が出る。ゲームとしてここまで進めてみたものの、なかなかオレの予想を超えてくれない。ゲームを三つも進めれば、きっと"兆し"が見えると思っていたのに……そう上手くいってくれないか。

 いや、むしろ上手くいくはずがないのか。こんな程度で事が進むようなら、そもそもこのゲーム自体、実行しなかった。それこそ、歯の一本を失うくらいには覚悟して強行したんだ。

 歯の一本で、済むか……? これ。オレは今一度、プレイヤー三人、それぞれの怒りの表し方を思い浮かべた。

 セルだったら、四肢を切り刻むくらいは躊躇いなくやりそうだ。いや、やる。細切れくらいには絶対にする。そんでもってバイロンなら、あらゆる獣を使って相手の身体を食い千切らせそうだ。それも何日もかけて。残るルイスは……考えるだけで恐ろしいな。

 人選、ミスったか? 何にせよ、あいつらが脱出したら、ただでは済まされない。が、後悔は微塵もない。

 オレがすべきことは変わらない。あいつらには、このまま「ゲーム4」へと進んでもらう。体力や精力はともかく、そろそろ「生贄」の気力が切れる頃だろうし、できればこれで最後にしたい。

 オレはどこからともなく、手の平サイズの薄い円盤を出現させた。異世界のアイテムで、Blu-rayディスクというものだ。

 ドーナツ型のそれは扱いが繊細で、特に裏面は手や指で触れてはいけないらしい。じゃないと、このアイテムに収められた記録が見られなくなるからだ。

 それをわかっていながら、オレはあえて、円盤の裏面に触れた。

「本当のことを知ったら怒るかな、あいつも……」


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