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インターバル 5
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自ずと、視線は床の方へと落ちる。表面上は当然何もなく、声すらも聞こえない。今頃雅はどうしているのだろう。こういうデスゲームって、だいたい中盤辺りに差しかかると、人質の様子を見せてくれたりするものだけれど、このゲームではそういった計らいはないのだろうか。
うーん。でもなぁ……毎度、軽い調子で俺の頭の中へ直接語りかけてくる黒幕のことだから、それは期待するだけ無駄なのかも……
「あ、そうだ。ルイスに言おうと思っていたことがあるんだった」
「私に?」
突如、思い出したように、黒幕だろう例の声について、ルイスへ話すことにした。
「この『ゲームステージ』に来てから、俺は黒幕だろう奴の声を何度か聞いているんだ。こう、外から耳を介して聞くものじゃなくて、何というか……頭に直接響くような感じで」
ルイスの反応を見ながら、「たぶん、聞いているのは俺だけだと思う」と後に付け加えると、彼は俺から鑑賞スペースへと視線を移し、「だろうね」と頷いた。
そして再び、こちらへ向き直ると、
「その声に心当たりは?」
と尋ね、俺は俯きつつ首を横に振った。
「ふむ。では、直接聞いてみようか」
「直接? わっ!?」
言うや否や、ルイスは俺の両頬にそれぞれ手を添えると、そのまま自身へと引き寄せるようにした。
ぐっと近くなる綺麗な顔。その威力は凄まじく、俺は巻き舌気味に狼狽した。
「る、るるるっ、ルイスっ!?」
「ん? 何?」
「か、かか、顔っ……ち、近、くてっ……」
「顔が近いのは嫌?」
「ちが……うわわっ」
対して冷静な様子のルイスは、熱を測る時のようにそのままコツン、と額を当ててくる。うわうわうわっ、近い近い近いっ……! 顔面偏差値の高い美形怖いっ! 文字通り、キラキラなんだけど、このエルフっ。
銀髪銀目が相まっているのか、眩いほどの美顔に耐えきれなくなった俺は、ギュッと瞼を瞑った。まさにギンギラギンでさりげなくなさっていらっしゃるけれど、これ何!? こんなにどアップになって、今から何をなさろうとしてるの!?
あまりに予想外の行動に、俺が緊張して固まっていると、フッと息が吹きかかった。
「ふふ。そんなに緊張しなくとも、取って食いやしないよ。ただスグルの頭の中を覗いて、黒幕とやらの声を聞くだけだから」
「そ、それって、ここ、こんなに近くないと、いけない……の?」
「こうして直接触れた方が聞き取りやすいんだよ。駄目かな?」
「駄目っていうか……き、綺麗過ぎて……心臓が持たないだけで……」
「それは光栄だな。この桜のような唇にキスをしたいくらいだ」
「きっ……!? も、もう……からかうなよ……」
キスをするのは「ゲーム1」で餌食となったセルだけで充分だ。まったく。俺が言ったら寒いだろう台詞もさらりと格好よく言えちゃうなんて……同性の俺でさえこんなにドキドキしちゃってるっていうのに、相手が女子だったら今のでコロッといっちゃってるぞ、間違いなく。
「からかっているつもりはないんだがな」
「え……?」
「シィ。静かに」
「ご、ごめん」
優しく注意をされて、俺はきゅっと唇を閉じた。バイロンの時もそうだったけれど、ところどころ上手く聞き取れないんだよな。「チュートリアル」の水責めで聴覚でもやられてしまったのだろうか。でも体力回復ならルイスに二度もさせてもらっているし……
「うん。なるほど」
「えっ、早いっ」
さすが最高位の魔術師。仕事が早い。俺には絶対にできない芸当をパパッとやってのけてしまう。
「それで……」
ルイスが額を離したことで瞼を開いた俺は、ややわくわくした様子で彼に尋ねた。
「何かわかった?」
「いや、わからない……ということがわかった」
「んん? どういうこと?」
なぞなぞみたいな返答に頭を傾げてみせると、ルイスは自身の蟀谷をトントンと指で叩きながら、事の説明をしてくれた。
「頭の中を覗こうとした瞬間、魔法によって妨害されたんだ。どうやら、君の頭にはプロテクトのようなものが掛けられているらしい。しかし、わざわざそうするということは、黒幕とやらはよほど私に声を聞かれたくはないのだろう」
「ってことは……黒幕はルイスの知っている人ってこと?」
「その可能性は大いにある。もしくは……」
言いながら、ルイスは自身の蟀谷から指を外すと、今度は俺の蟀谷にトン、と軽く指を添えた。
「スグルの頭の中を、単に覗かれたくなかっただけなのかもしれないがね」
「俺の……頭の中?」
それはいったい、どういうことなのだろう?
うーん。でもなぁ……毎度、軽い調子で俺の頭の中へ直接語りかけてくる黒幕のことだから、それは期待するだけ無駄なのかも……
「あ、そうだ。ルイスに言おうと思っていたことがあるんだった」
「私に?」
突如、思い出したように、黒幕だろう例の声について、ルイスへ話すことにした。
「この『ゲームステージ』に来てから、俺は黒幕だろう奴の声を何度か聞いているんだ。こう、外から耳を介して聞くものじゃなくて、何というか……頭に直接響くような感じで」
ルイスの反応を見ながら、「たぶん、聞いているのは俺だけだと思う」と後に付け加えると、彼は俺から鑑賞スペースへと視線を移し、「だろうね」と頷いた。
そして再び、こちらへ向き直ると、
「その声に心当たりは?」
と尋ね、俺は俯きつつ首を横に振った。
「ふむ。では、直接聞いてみようか」
「直接? わっ!?」
言うや否や、ルイスは俺の両頬にそれぞれ手を添えると、そのまま自身へと引き寄せるようにした。
ぐっと近くなる綺麗な顔。その威力は凄まじく、俺は巻き舌気味に狼狽した。
「る、るるるっ、ルイスっ!?」
「ん? 何?」
「か、かか、顔っ……ち、近、くてっ……」
「顔が近いのは嫌?」
「ちが……うわわっ」
対して冷静な様子のルイスは、熱を測る時のようにそのままコツン、と額を当ててくる。うわうわうわっ、近い近い近いっ……! 顔面偏差値の高い美形怖いっ! 文字通り、キラキラなんだけど、このエルフっ。
銀髪銀目が相まっているのか、眩いほどの美顔に耐えきれなくなった俺は、ギュッと瞼を瞑った。まさにギンギラギンでさりげなくなさっていらっしゃるけれど、これ何!? こんなにどアップになって、今から何をなさろうとしてるの!?
あまりに予想外の行動に、俺が緊張して固まっていると、フッと息が吹きかかった。
「ふふ。そんなに緊張しなくとも、取って食いやしないよ。ただスグルの頭の中を覗いて、黒幕とやらの声を聞くだけだから」
「そ、それって、ここ、こんなに近くないと、いけない……の?」
「こうして直接触れた方が聞き取りやすいんだよ。駄目かな?」
「駄目っていうか……き、綺麗過ぎて……心臓が持たないだけで……」
「それは光栄だな。この桜のような唇にキスをしたいくらいだ」
「きっ……!? も、もう……からかうなよ……」
キスをするのは「ゲーム1」で餌食となったセルだけで充分だ。まったく。俺が言ったら寒いだろう台詞もさらりと格好よく言えちゃうなんて……同性の俺でさえこんなにドキドキしちゃってるっていうのに、相手が女子だったら今のでコロッといっちゃってるぞ、間違いなく。
「からかっているつもりはないんだがな」
「え……?」
「シィ。静かに」
「ご、ごめん」
優しく注意をされて、俺はきゅっと唇を閉じた。バイロンの時もそうだったけれど、ところどころ上手く聞き取れないんだよな。「チュートリアル」の水責めで聴覚でもやられてしまったのだろうか。でも体力回復ならルイスに二度もさせてもらっているし……
「うん。なるほど」
「えっ、早いっ」
さすが最高位の魔術師。仕事が早い。俺には絶対にできない芸当をパパッとやってのけてしまう。
「それで……」
ルイスが額を離したことで瞼を開いた俺は、ややわくわくした様子で彼に尋ねた。
「何かわかった?」
「いや、わからない……ということがわかった」
「んん? どういうこと?」
なぞなぞみたいな返答に頭を傾げてみせると、ルイスは自身の蟀谷をトントンと指で叩きながら、事の説明をしてくれた。
「頭の中を覗こうとした瞬間、魔法によって妨害されたんだ。どうやら、君の頭にはプロテクトのようなものが掛けられているらしい。しかし、わざわざそうするということは、黒幕とやらはよほど私に声を聞かれたくはないのだろう」
「ってことは……黒幕はルイスの知っている人ってこと?」
「その可能性は大いにある。もしくは……」
言いながら、ルイスは自身の蟀谷から指を外すと、今度は俺の蟀谷にトン、と軽く指を添えた。
「スグルの頭の中を、単に覗かれたくなかっただけなのかもしれないがね」
「俺の……頭の中?」
それはいったい、どういうことなのだろう?
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