異世界での監禁デスゲームが、思っていたものとなんか違った

天白

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インターバル 4

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 何が、ご馳走さま? ここに食べるものなんてあったっけ? いや、もう何でもいいや。ちょっと……どころじゃなく疲れた。

 俺は無遠慮に、ルイスの肩に頭を預けて「ふう」と一際長い息を吐くと、髪を梳くように頭を撫でられた。長命だからかルイスはこうやって俺の頭を、子どもにするそれと同じように撫でることがしばしばある。普段なら何も感じない行為だけれど、今はなんだか……

「どうした?」

「ほ、本当に……ルイス、なのか?」

「そうだよ」

 至極当然とばかりに答えられ、続けて「どうして?」と尋ねられる。むしろ俺が聞きたい。どうしてルイスはこんなに意地悪なのか。しかしこれを、本人へ直接尋ねるのは、気が引けるというか何というか……

「普段の私なら、こんなに君を苛めたりしないって?」

「う……」

 ゴニョゴニョと言い淀んでいると、それを察したルイスが、

「まあ、猫を被っていたのは認めるけれどね」

 と、観念したように、続けてあることを打ち明けた。

「元々、私はダークエルフだから。種族柄そうとも言えるかな」

「へぇ、そうなんだ…………って、ええ!? ルイスってダークエルフなの!?」

 まさかまさかの意外な事実を耳にして、俺は驚くとともに顔を上げてルイスを見つめた。こんなに色白なのに!? 銀髪銀目で初めて出会った時はつい、ハイエルフか~、綺麗だな~と思っちゃったほどの見た目なのに? だ、だ、ダークエルフだって!?

「そうだけど、そんなに驚くこと?」

 口を「わ」の形にしたまま何も言葉を発さない俺に、ルイスは気を害したのかややムッとした表情を浮かべた。

 彼のその反応に、失礼な態度を取ってしまったのだと気づき、俺は慌てて「ごめん」と謝った。

「その、びっくりしちゃって……俺の中でダークエルフっていったら、褐色肌で、髪の色も濃くて……そういうイメージがあったから……」

「スグルのいた異世界ではそう言い伝えられているのか? まあ、褐色の肌を持つ者の方が多いのは認めるが、私のような色素の薄いダークエルフも少なくない。帝国民にはわざわざ明かしていないがね」

「え……どうして?」

 きょとん、とルイスに尋ねると、彼は何を思ったのか、シニカルな笑みを浮かべてこう言った。

「人間からすると、ダークエルフはエルフよりも陰険に見られがちだからだよ」

「えっ? こんなに陽キャオーラが出ているのに?」

 間髪入れずに俺が言うと、ルイスは一瞬だけ目を丸くさせてから、「ようきゃ?」と小首を傾げた。しまった。つい、元の世界の言葉を……。

 俺は口元を手で押さえながら、「陽キャ」について簡単に説明した。

「えっと、陽キャっていうのは……華やかかつ明るいオーラを纏っている人ってこと、かな」

 対して俺は根暗陰キャだけどな、と心の中でひっそりと付け加えたのは内緒だ。

 それはそうと、陽キャの意味を知ったルイスは、「ほう」と顎に拳を添えると、意外そうに漏らした。

「スグルから見て、私は華やかに見えるのか」

 ご自覚がない、だと……? というか、もしもルイスに対して華やかじゃないと言う人間がいたら、絶対に目ん玉に異常があると思うぞ。

「なるほど。悪い気はしないな」

「ルイス?」

「さて、壁面の文字が変化したな。あれは何と書いてあるんだ?」

 ん? 今、逸らされた?

 ボソリと呟かれた言葉が聞き取れなかったけれど、ルイスに促された俺は、手渡された眼鏡を装着して壁面を見上げた。

 今回のゲームも無事にクリアできたらしく、壁面にはすでに「インターバル」とあった。俺はルイスへ、書かれてある通りに内容を伝えた。

「『インターバル』って書いてある。休憩だよ。でも、セルやバイロンの時よりも、時間がうんと短くなってる……」

 その時間は、僅か五分。こんなに短時間では、体力どころか気力すら休まらない。でもそれは、ここにいるのが人間だけであればの話だ。俺はルイスの回復魔法により、一瞬で回復した。

 やっぱりすごいな、魔法ってものは。改めてルイスの力に感心していると、ここでようやく自分が彼の膝の上に跨ったままだということに気がついた。

「ごめんっ。いつまでも膝の上に乗っていて……重かっただろ」

 あたふたしながら、俺は脚を上げてルイスから身体を離そうとした。……したんだけれど、「いや、全然」と跨がられていた本人が、けろっとした様子で俺の腰を固定するように支えてくる。

「あ、れ? あの……ルイス?」

「ん?」

「その、脚が……」

 なぜか離してくれない。それに眩いほどの綺麗な微笑みをこちらに向けていらっしゃるけれども……本当に、なぜ?

「ところで、ミヤビのことだが」

「う、うん。何か、わかる?」

 またもや話題を逸らされた気がするが、俺はルイスの膝に跨ったまま、続きを聞いた。

「微かだが、彼の気配がある。このソファよりも下にいるのは間違いない」

「下……」
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