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「ゲーム3」4

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 止まるまで!? 頭の中で除夜の鐘が鳴ったようだった。

 いきなり飲み続けろと言われても、これってただの血じゃないんだろ?

 舌が痺れるような感覚と、甘ったるくて頭が蕩けそうになる不思議な感覚に襲われながらも、得体の知れないそれを飲むもんかと、俺の本能は抵抗し、ルイスの指を舌で押し返そうとする。

 けれど、自身の血を飲ませようとするこの相手は、やはり俺の知っているルイスではなかった。口の中で次第に溜まっていく唾液とともに、ズブズブと容赦なく指を押し込められた。

「はぅ……ん、んく……ごくっ……んぁ……」

「いけないな、スグル。ちゃんと飲んでくれないと、後で辛い思いをするのは君の方だよ?」

 まるで小さな子どもを嗜めるような言い方をするルイス。いや、長寿の彼からしたら俺なんぞ赤ん坊のようなものなのだろうけれど……そもそも辛い思いってなんだよ。どのみちアナルを弄られるのだから、辛くない道はすでにないようなものなのに。

 そう訴えたいのもルイスの指で塞がれて、俺はただただ喉奥へと流される甘い蜜を飲み続ける。

「んぁ……む、むぅ……れろ……ちゅ、う……」

 すると、どういう効果なのか、だんだんとこの赤い蜜をもっと飲みたい、もっとちょうだいと求めるようになり、俺は差し出されるルイスの腕を両手で取ると、それを赤ん坊がするおしゃぶりのように、ちゅうちゅうと吸い始めた。

 対して、目の前のルイスはほくそ笑むように、

「スグルはわかりやすいな」

 と言って、舌の上で自身の指を動かし始めた。それがまるで、芋虫が舌を這うような感じで気持ちが悪いのに、この身が震えるほど気持ちがいい。

 いったいどういう矛盾なのか。それがこの血のせいなのか何なのか、追究するのも馬鹿らしい。もはや自分にとって、彼の血の秘密のことなど、どうでもよくなっていた。

「ん……んぅ……や、ら……ぁん……もっ、と……んっ……やめ……あぅ……ほしぃ……んく……」

「欲しい? もっと?」

 ルイスの声音は嬉しそうな色を乗せてこちらへ尋ねてくる。俺は縦にも横にも首を振り、見上げるように視線だけをルイスの顔に合わせた。

 ぼやりとした視界に銀色の誰かが映り、瞬きをすると真珠のような大粒の涙がポロポロと零れた。

 怖い。けれど、欲しい。その思いが交互に現れて、感情をぐちゃぐちゃにされていく。

 その不安は触れているルイスにも伝わっているのか、思考が鈍っていく頭に向けて、彼はようやく説明をしてくれた。

「大丈夫だよ、スグル。今はただ、己の欲に従うだけでいい。私の血は毒でも何でもない。君のような魔力のない人間には、そうだな……例えるなら催淫剤のようなものかな。つまり人間に備わる理性を抑えて、元からある本能の部分を引き出しているに過ぎないんだ。しかし本来なら、拷問目的で使うことが多いのだがね」

 最後にさらりと慄くようなことを口にしてから、ルイスは指を引き抜き、ふにゃふにゃになった俺を抱きかかえると、

「立っているのもやっとだろう? 一旦、座ろうか」

 フッと後方に倒れた。

 普通は地面だとわかる床に向かって、倒れる者はいない。しかも尻の方から。一瞬、身体に起きた浮遊感に驚き、思わず目を瞑る。だが、意外にも衝撃は予想以上に柔らかいものだった。

 ボスン! と、ベッドの上にダイブした時と同じような音がステージ内に広がり、俺は呂律の回らない舌で、「にゃ、にゃにっ……?」と瞬きを繰り返した。

 そこには、最初の「インターバル」同様の……いや、それよりはもう少し大きい形の豪奢なソファがあった。ルイスが倒れたのはその上で、さらに俺を自身の膝の上に乗せた状態で寛ぐように座っていた。これで片手にワイングラスでも持っていたら、さぞ写真映えすることだろうなと、しょうもないことだけが頭に浮かんだ。

 一方で、ルイスは何かを理解したように頷くと、親指と人差し指、そして中指を擦り合わせながら、

「ああ、やはりな。この部屋は割りと融通が利くらしい。とすると、そうだな。アレも欲しいが……現れてくれるかな?」

 パチン! と小気味よく指を鳴らした。

 その瞬間、大きな音を立ててソファの、ひいては俺達の向かい側に、等身大以上の鏡が現れた。

「ひゃうっ」

 怪獣でも現れたのかと思いきや鏡だったことにホッとしつつも、怪獣の方がいくらかマシだったと、俺はこの五秒後に思うのだった。

「スグル。ほら、正面を向いてごらん?」

 ルイスが耳元で悪魔のように囁いた。とろんとした両目をそちらへ向けると、あられもない自分の姿がはっきりと映っていた。

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