異世界での監禁デスゲームが、思っていたものとなんか違った

天白

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インターバル 3

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「やっ……! 耳っ……んっ……さ、囁かないで……!」

「耳も弱いのか。可愛い」

「んぁっ……ちょ、ちょっと……バイロン……ひゃううっ!」

 チュッ、チュッ、と音を立てて、俺の耳介を啄むように吸ったり、舌先を使ってペロペロと舐めたりするバイロン。俺の頭は疑問符でいっぱいになった。

 な、何でまた舐めてるんだ、この人……? もうゲームは終わったんですけれど!?

「バイ、ロ……あっ……や……やめ、て……んっ……」

「俺が舐めた時よりも尖るのが早いな。舌よりもこちらの方が刺激が強いのか?」

「んああっ……!」

 ぷっくりと腫れるように尖った乳首をキュッと抓られて、俺は身体を弓のように反らせた。

「ああ、本当に可愛いな」

 可愛いな、じゃないよっ。全然可愛くないっ。というか、これ以上耳元で囁くのをやめて欲しい。さっきから腰の辺りがゾワゾワするんだ。乳首もこれ以上弄られたら……きっと頭が変になる。

「バイロン……だめ……んっ……い、『インターバル』が短い、からっ……!」

「インターバル?」

 これ以上自分が変になる前に止めさせないと! と、俺は必死になって、今の時間が「インターバル」であることと、その時間が十分しかないことを伝えた。

「十分か……」

 時間を聞いて何故か残念そうにバイロンは呟くと、それ以上は耳元で囁くことも、乳首を弄ることもなく、おしぼりを使ってササッと身体を拭いてくれた。さすがに性器まで拭かせるわけにはいかなかったので、「前は自分でやるから!」と強く言って断ったが。

 前の方をぎこちない手つきで拭きながら、セルとルイスがいる方向へ視線をやると、例の鑑賞スペースが消えていた。なるほど。「インターバル」中はすべてこの仕様なのか。

 二人の姿が見えなくなったことで、途端バイロンと二人きりになったかのような感覚に陥る。変だな。ただ仕切られているだけで、セルとルイスはあの壁の向こう側にいるのに。

 少しだけ寂しいという感情と、同時に素っ裸のこの身体をこれ以上は他人に見られずに済むという安心感が、俺を包んだ。

「これを着ておけ」

 バイロンが軍服の下に着ていたカッターシャツのような白い服を脱ぐと、俺に与えてくれた。

「いいの?」

「本来なら、新品を与えてやりたいところなんだがな」

「ううん。ありがとう」

 俺は素直に受け取った。上半身だけとはいえ、今度は自分が裸になってしまうというのに、バイロンは優しいな。サイズの合わないブカブカのそれに袖を通しながら、しみじみと思った。

 いや、バイロンはそもそも裸になっても恥ずかしくはないのか。眼鏡を外しているからぼんやりとしか見えないとはいえ、相手がどんな肉体をしているのかはよくわかるぞ。例えるなら、鋼だ、鋼。ボディビルダーをやっていたアーノルドなシュワちゃんの隣に並んでも、遜色ない肉体をバイロンは持っている。これでまだ鍛え足りないと言って、騎士のセルと共に鍛錬してるんだろ? 大丈夫なの、それ? 二人ともその内、グラサンをかけたどこかの妖怪の弟みたいになっちゃったりしない? 暗黒の武術会とか出ちゃったりしない?

「スグル」

「な、何っ?」

「お前は芝居が好き……だと言っていたな?」

「へ?」

 変な妄想が頭の中を駆け巡り出した時だった。バイロンは下敷きにされていた上着を直に羽織りながら、そう尋ねてきた。 

 何の話? 俺はシャツの袖を捲くりながらバイロンを見上げると、この目にぼんやりと映る彼はこちらを見つめているようだった。

 芝居が好き……そんなこと言ったっけ? 映画は好きだけど、芝居を好きだと言った覚えは……あ、もしや俺が映画を芝居に例えたから、それを言っているのか?

 心当たりがそれしかない俺は、顎に指を添えながら首を傾げた。

「確かに好きって言ったけれど……」

 その返答に、バイロンは「そうか」と胸を撫で下ろすように呟くと、

「お前が好きなものとは多少、違うかもしれないが、帝国にも観劇があるんだ。もしもここから出られたら、異世界へ戻る前に、俺と一緒に観てみないか?」

「へ……?」

 なぜに? どうしてそんな提案を? バイロンが実は甘いもの好きなのは知っていたけれど、もしや芝居も好きなのか? だとしたら、異世界へ戻る俺じゃなくて、セルやルイスを誘った方が、芝居を観終わった後の感想についてゆっくりと語り合えるし、今後も楽しめるんじゃないのか? なのに、他所者の俺をわざわざ誘うということは、それだけ帝国の観劇が素晴らしくいいもので、一度も観ないで帰るのはもったいないからということ……なのかな。

 いや、違う。これはゲームに疲れつつある俺を励ましてくれているんだ。ちょっとデートみたいだな、と思ってドキッとしちゃったけれど……きっとそうだ。命懸けのゲームの中で、こうした誘いを受けるとは思ってもみなかったけれど、楽しいことを希望にしてこの先のゲームを頑張るのは悪くない。実にバイロンらしい励まし方だった。

「駄目か?」

「駄目じゃないよ。嬉しい。もしも無事に、ここから出られたら……日本へ帰る前に連れてってくれる?」

 そう言うと、バイロンは嬉しそうに、俺の前で微笑んだ気がした。

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