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チュートリアル 6
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ペナルティという単語を目にして、俺はその場で硬直する。何それ。とっても怖いってどう怖いの? 痛い系? 苦しい系? プレイヤーにはペナルティがないの? 俺だけ?
俺の命運は雅にかかってるってこと!? 嫌すぎる!!
「へえ、面白そうじゃねえか。なあ、兄貴?」
雅が実に楽しそうに、俺に言った。こっちはちっとも面白くないんだが。
『プレイヤーに求められるのは行動力。そして生贄に求められるのは忍耐力です。ですが、いきなり本番では可哀想なので、まずは練習してみましょう』
壁面の文章を最後まで読み終えるや否や、突如俺の足元から透明な壁が生えるように現れた。バン! バン! バン! と、何かが叩きつけられるような派手な音とともに、それは俺の周りを取り囲む。ついには頭のてっぺんまで壁で囲まれ、俺は完全に逃げ場を失った。
そしてどういった原理なのか、床から温泉が湧くように勢いよく水が溢れ出し、あっという間に俺の膝下までそれは満たされた。
「な、何だよ、これっ……!?」
まるで巨大な水槽だ。膝下から水位は上がらないものの、勢いよく噴出したせいで、足元はチャプチャプと水飛沫を立てている。
依然として、沈黙のゲームマスターは多くは語らないものの、準備は整ったとばかりに、壁面にはゲームのルールが表示された。
『ゲーム0。
・プレイ人数2人。プレイヤー1、生贄1。
・クリア条件→出題されるクイズにプレイヤーが3つ答えること。ただし回答が不正解の場合、生贄にはペナルティを与える。回答の制限時間は1問につき1分とする。
・注意事項→なし』
ゲームのルールは実にシンプルなものだった。難しいことはない。プレイヤーの雅が出された質問に答えるだけだ。ただしその内容が、雅にとって簡単なのか、難題なのかはわからない。
俺はもう一度、次第に冷たくなっていく自分の足元を見下ろした。
「生贄のペナルティって……まさか、水責め……?」
両足を撫でるように纏わりつくそれが急に恐ろしく感じられ、呼吸が浅くなる。日常でなくてはならない大切な資源が、今から俺を甚振ろうとする化け物に見えた。
命を賭けたデスゲーム。そしてその命は、自分ではなく、自分を疎む兄弟にかかっている。
俺は雅の顔を見つめた。必死な自分に対して、彼の様子はというと……
「へぇ。ペナルティってのはいったい何なのかねぇ? いっぺんくらいは試してみるか」
「雅っ……!」
余裕綽々で、むしろ今から始まる死のクイズに心を躍らせていた。
ああ、雅にとって俺は本当に、どうでもいい存在なんだ。わかっていたはずなのに、彼の気持ちを改めて痛感し、虚しくなった。
しかしそんなこと、このゲームを仕組んだ者には関係がない。意気消沈する俺を置いて、残酷なゲームは幕を開けた。
『問題』
俺はゴクリと喉を鳴らし、直後目を見開いた。
『円周率を答えなさい』
問われた内容はそれだけだ。
「円、周率……?」
円周率って、あの円周率? 3.14から無限に続く、あの? 何それ。小学生でもわかる問題じゃないか。超簡単。これなら雅にだって答えられるはず……
いや、待て。この場合、円周率の小数点以下は何桁と答えるのが正答なんだ? 3でも、3.14でも正解とするのか、どちらも不正解とするのか。
前言撤回。超難しい問題じゃないか。解答がわかるのに、正答がわからない。非常に……非常に難しい問題だ。一瞬でも簡単だと思ってしまった自分を殴りたいっ。
俺の命運は雅にかかってるってこと!? 嫌すぎる!!
「へえ、面白そうじゃねえか。なあ、兄貴?」
雅が実に楽しそうに、俺に言った。こっちはちっとも面白くないんだが。
『プレイヤーに求められるのは行動力。そして生贄に求められるのは忍耐力です。ですが、いきなり本番では可哀想なので、まずは練習してみましょう』
壁面の文章を最後まで読み終えるや否や、突如俺の足元から透明な壁が生えるように現れた。バン! バン! バン! と、何かが叩きつけられるような派手な音とともに、それは俺の周りを取り囲む。ついには頭のてっぺんまで壁で囲まれ、俺は完全に逃げ場を失った。
そしてどういった原理なのか、床から温泉が湧くように勢いよく水が溢れ出し、あっという間に俺の膝下までそれは満たされた。
「な、何だよ、これっ……!?」
まるで巨大な水槽だ。膝下から水位は上がらないものの、勢いよく噴出したせいで、足元はチャプチャプと水飛沫を立てている。
依然として、沈黙のゲームマスターは多くは語らないものの、準備は整ったとばかりに、壁面にはゲームのルールが表示された。
『ゲーム0。
・プレイ人数2人。プレイヤー1、生贄1。
・クリア条件→出題されるクイズにプレイヤーが3つ答えること。ただし回答が不正解の場合、生贄にはペナルティを与える。回答の制限時間は1問につき1分とする。
・注意事項→なし』
ゲームのルールは実にシンプルなものだった。難しいことはない。プレイヤーの雅が出された質問に答えるだけだ。ただしその内容が、雅にとって簡単なのか、難題なのかはわからない。
俺はもう一度、次第に冷たくなっていく自分の足元を見下ろした。
「生贄のペナルティって……まさか、水責め……?」
両足を撫でるように纏わりつくそれが急に恐ろしく感じられ、呼吸が浅くなる。日常でなくてはならない大切な資源が、今から俺を甚振ろうとする化け物に見えた。
命を賭けたデスゲーム。そしてその命は、自分ではなく、自分を疎む兄弟にかかっている。
俺は雅の顔を見つめた。必死な自分に対して、彼の様子はというと……
「へぇ。ペナルティってのはいったい何なのかねぇ? いっぺんくらいは試してみるか」
「雅っ……!」
余裕綽々で、むしろ今から始まる死のクイズに心を躍らせていた。
ああ、雅にとって俺は本当に、どうでもいい存在なんだ。わかっていたはずなのに、彼の気持ちを改めて痛感し、虚しくなった。
しかしそんなこと、このゲームを仕組んだ者には関係がない。意気消沈する俺を置いて、残酷なゲームは幕を開けた。
『問題』
俺はゴクリと喉を鳴らし、直後目を見開いた。
『円周率を答えなさい』
問われた内容はそれだけだ。
「円、周率……?」
円周率って、あの円周率? 3.14から無限に続く、あの? 何それ。小学生でもわかる問題じゃないか。超簡単。これなら雅にだって答えられるはず……
いや、待て。この場合、円周率の小数点以下は何桁と答えるのが正答なんだ? 3でも、3.14でも正解とするのか、どちらも不正解とするのか。
前言撤回。超難しい問題じゃないか。解答がわかるのに、正答がわからない。非常に……非常に難しい問題だ。一瞬でも簡単だと思ってしまった自分を殴りたいっ。
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