10 / 28
ペットじゃねえよ 6
しおりを挟むキスくらい減るもんじゃなし。そんな風に軽く見ていた昔の自分をぶん殴りてえ。
一通り堪能したのか、互いの唇が触れ合うくらいの距離間で、暗い瞳が俺を見つめた。そして妖艶な吐息とともに言葉を紡ぐ。
「お前は良い目をしているよ、エイシ。……ああ、色じゃなくて、この目つきがな」
眉間に皺を寄せている動物がお気に入りとは、理解できない好みだな。俺は視線だけをこいつから逸らした。それがどうねじ曲がれば好印象として捉えられる?
爽やかな香りのする息を吹きかけながら、こいつは俺に尋ねた。
「お前は反抗的な態度を改めないけれど、最近こう思うんだ。俺に構われたくてわざとそうしているのか、って……本音はどうなんだ?」
脳ミソが腐ってんのか、こいつは!?
そんなわけがあるか、と。俺が口を開こうとした時……
「うひゃうぅっ!?」
「まあ、どちらでもいいことだな」
俺のものだから、と。
「魔王」は俺の「中」に、遠慮も宣言もなく指先での侵入を開始した。
女が相手なら男が侵入する先は命が生まれ出るアソコしかない。しかしこれが同じ男相手なら、それはどこになるのか。悲しいことに、その知識だけは事前に持っていた。それはこの身体が有していたわけではなく、前世の俺が興味本位で調べたことによるものだったが。
実際、男の勃起した肉棒が人の肛門へ入るものなのか……それは訓練を積んだプロの方々しか踏み込めない領域だと思っていた。自分の指でさえ恐ろしく感じるというのに、他人の……それも、大柄な男の肉棒を受け入れることなどできるはずもない。
できるはずも、なかったのに……。
俺のそこは、この男の指を二本も食い始めたんだ。
うねうねと動くそれは這いずり回る蛇のようで気持ち悪い。蹂躙ならさっきまでのキスも同じだったのに、上と下では感覚がまるで違った。いや、本来はそうなんだよ。毒されるな、俺! 下はむしろひり出すところだぞ!
しかもスムーズに入りやすいように、指に何かが塗りたくられている。潤滑剤なんて出している様子すらなかった。これも何かの魔法か? ローションのような魔法なんて……ま、まさか、スライ……
「お前が考えているような有機物ではないよ。まあ、少しばかり媚薬を混ぜたがな」
「は……?」
頭の中に浮かんだ水色のモンスターを即座に否定され、安堵したのも束の間。その後に続いた単語に、俺は間抜けた声を漏らした。
びや、く? びやくって……媚薬か? 性欲を高めたりするとかいう、あの……
そんなものをなぜ、混ぜる? 理由はあっさりと教えてくれた。
「昨夜、たくさん可愛がってやったばかりだからな。あまり摩擦が過ぎると楽しめないだろう?」
「ぅあぁっ!」
グッと根本まで指を押し込められると、腹の圧迫感から小さな悲鳴が上がった。いや、それだけじゃない。擦れるような痛みが伴い、息が苦しい。
昨夜も散々、この「中」を使われた。その前夜も、さらにその前夜も。
俺は「魔王」に抱かれている。オークションで競り落とされたあの日の夜から……ずっとだ。
孕まなければ同性の方が都合がいいのか、避妊対策はもちろんのこと、性感染症対策すらされずに俺はこいつに組み敷かれる。つまり、生のままされるということだ。「魔王」だからか、感染症の心配は要らないんだろう。
また、デカい図体は見かけ倒しではなく、オスの象徴であるアレは馬並みな上に精力も底抜けときている。当然ながら人間の俺はついていくことができず、果てる度に回復魔法をかけられ強制的に復活させられる。
終わりは決まって、こいつが満足したらだ。もう無理、と俺が泣き叫んでも、普段は優しいくせにそれだけは聞き入れてくれない。
これがこいつを拒む理由だ。それでもまだ、俺が羨ましいってか?
痛苦による涙が目尻から伝い落ちる。尻の方はすっかり開発……じゃない、拡張されたとはいえ。頻繁に摩擦を起こせば痛みの方が勝るというのに。
「魔王」は名実ともにサディスティックだった。
9
お気に入りに追加
518
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】
まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる