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 後日談。

 吉良は前髪を少し切って登校した。もちろん、半袖で。

「お前、もしや吉良か!? 腹はどうした、腹は!?」

「あれは嘘、なんです。ごめんなさい」

 すげえな。デブになる為にお袋さんが持ってたっていう妊婦ジャケットを毎日着けてたってんだから……このまだ暑い日に。

 先生や男子どもは吉良の痩せっぷり? に対し驚いていたけれど、女子はといえば。

「やっぱり可愛いよね! 目の保養~」

 と、吉良が実はモテる容姿であったことに最初から気付いていたらしい。俺や他の男子は吉良より身長が高いから顔が見られなかったけど、小柄な女子の目線からはほぼ見えていたとのこと。そのモテっぷりにちょっとしたジェラシーを抱くも、当の吉良は俺の後ろに隠れ気味。どうした? と理由を聞けば。

「みんないい人ってわかってるんだけど……都会で女の子たちからイジメられていたから、まだ少しだけ怖くて」

「え、女?」

 てっきり野郎連中からイジメられていたのかと。都会の女ってそんなに怖いのか……。

 キュッとシャツの裾を握られる。どうしたと振り返ると、吉良がやんわりと微笑んだ。

「でも、ちょっとずつでいいから、みんなと仲良くできたら嬉しいな」

「……っ、かわっ」

「山吉良萌えるー!」

「違うわ! 吉良山でしょ!」

 可愛いと言い切る前に謎の単語を大声で捲し立てる女子達。どうした。何が起きた。

 騒ぐ女子達を尻目に、俺は吉良の頭を撫でてやる。

「そうだな。ちょっとずつでいいんじゃね。けどさ……」

「?」

「ちゅーくらいは、そろそろしてえかも」

「えっ!?」

 ボソッと呟いた台詞に真っ赤になって慌てる吉良。可愛いな、そう思っていると耳元へ手を宛がわれた。

「後……でね」

 ポツリと囁かれるイイ声に背筋がゾクゾクする。なんかもう、色々とたまんねえな。

 デブだろうが、痩せだろうが。俺は吉良にめろめろなんだからさ。


 END.
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