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王道って何ですか?

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 地獄のような補習を終えてからヘロヘロと寮へ戻り、優しい寮母さんから思わずお母さん!! と叫びそうなほど感動する学食をとって部屋へと戻ると、同室者である生徒会長様こと皇君がシャワーを浴び終えたのか、スラックス一丁の姿と冷ややかな視線をもって僕を出迎えてくれました。

 いや、たまたまはち合わせただけでしょうが、そんなゴミ虫を見るような冷たい目で見なくても。

「た、ただいま……」

「こんな時間まで補習ですか。時間だけ浪費してもしょうがないでしょうに。凡人はいつまでたっても凡人なんですから」

 タオルで濡れた髪を乾かしながら、皇君はため息をつきます。ひどいことをさらりと言ってのけるひどいルームメイトです。ホントにアンタ、皆から慕われる生徒会長様ですか?

 言い争っても仕方ない(というか秒単位で負ける)ので、僕はお風呂に入る準備でもしましょう。汗だくで気持ち悪いです。

 って、あれ? そういえば。

 妙な違和感。部屋に入ってから何か変だな~って思ってたんですよね。でも、部屋の中は物の配置が若干ズレているだけでほとんど何も変わってない。でも、やっぱり変だな~って思ったので、上半身裸族の皇君に視線をやれば。

「お出かけですか?」

「は?」

「や、だって髪の色が」

 品行方正。

 校則を違わず、腹のなかのどす黒さがそのまま外に出たんじゃないかってくらい真っ黒なお髪の皇君のお髪色が、他校でよく見かけます不良様のお髪色になってるんです。

 金髪にーちゃんになってます。もう見慣れましたけど。

 皇君は「ああ……」と呟きながら、自分の前髪を摘まみました。そして、その(腹黒)美形顔には超似合うってくらいのシニカルな笑みを浮かべながら、髪を拭いていたタオルを僕の顔面目がけて投げ捨てました。

 水分を含んでいるのでタオルと言えども凶器……ぶっちゃけ痛いです。

「集会があるので。面倒ですが、しばし留守にします」

「集会……ああ、いつもの不良さんたちの喧嘩祭りですね」

 生徒会の親衛隊や、彼を慕う生徒たち。そして教師陣がこの事実を知ったら泣くでしょう。

 何を隠そう、この腹ぐ……生徒会長こと皇君。ここら一帯の不良さんたちの中では知らぬ者はいないってほど有名で、かつその中でもデカい不良さんグループのリーダーさん――総長を務めているらしいです。

 なにやってんのこの人。

 平凡の僕には考えられない世界に身を投じてらっしゃいます。昼は生徒会、夜は集会。そのうち胃に穴が空いて死ぬんじゃないですか。

 その時は腹を抱えて笑ってやります。えへへ。

「薄気味悪く笑わないでくれますか。鳥肌が立ちます」

 おっと。顔に出てたらしいですね。

 いつの間にやら、金髪碧眼、装飾品ジャラジャラ、皮パンにタンクトップ姿のえ~っと……誰?

「皇です」

 そうそう、皇君。今夜のカラコンはブルーらしいです。外人さんですね。ホントに誰だかわかりません……チィッ!!

 まぁ、どうでもいいです。僕はお風呂に入ってから冷たいジュースでも飲んで、今日の復習をしてから零時までに寝ます。良い子は日を跨ぐ前に寝るんです。いってらっしゃい、皇君。できれば警察に捕まってください、マジで。

 そう想いを心の中で唱えると、この腹ぐ……生徒会長。千里眼で見抜いたのか。

「お前も、私が帰ってくるまで起きてなさいね」

「は?」

 めっちゃ腹ぐ……腹黒そうな笑みでとんでもねぇことを言いやがりました。

「今夜は抱きます。帰るまでに寝こけたりでもしていたら……剃りますよ」

 こいつ本当に捕まればいいのに。
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