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第1章 本章
第15話 マリの日常。
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主人公、中島義行は、新しく得たカルマを試すために村瀬さんとマリと相談していた。
村瀬さんが説明口調で状況を纏めている。
「――。つまり、私が、マリにほっぺを、抓られれば良いのね?」
村瀬さんは、あまり納得がいかなそうな顔で答えてくれた。そりゃそうだ。誰だって痛い思いを進んでしようなどという輩はおるまい。私は申し訳なさそうに村瀬さんにお願いする。
「あ、ハイ。スミマセン。これしか思いつかなかったもので……。たぶん、大丈夫だと思うんですけど」
「痛かったら?」
「え」
「私もあなたを抓っていいのかしら?」
村瀬さんは笑顔で語る。言い出しっぺは私だ。私も覚悟を決めよう。
「わ、分かった。お、男に二言はない!」
「じゃあ、マリ。私のほっぺを抓っていいわよ」
《了解です。いきます》
私はカルマを発動し、結果を見定める。
「アイタタタタタタタタ!」
痛みを感じたのは私だ。村瀬さんは、まったく痛くない様子。
村瀬さんがマリにほっぺを抓られながら、納得のいった表情で話す。
「なるほど…。痛みや、損傷を肩代わりする能力ってことかしら…」
村瀬さんは考える人のポーズを取りながら続けて話す。マリはまだほっぺを抓っている。
「名づけるならば<<庇護のカルマ>>って所ね」
私は手を上げて発言をする。
「あ、あの、もう抓らなくてもいいんじゃないでしょうか。私、痛いんですが」
村瀬さんは思い出したようにマリに話しかける。
「あ、そうね。マリ。もう抓らなくてもいいわよ」
《了解です》
ふう。やっと痛みから解放された。それにしてもマリ。結構強めに抓ってなかったか…。
とりあえず、新しい能力の実験は終了だ。
「実験にお付き合い頂き、ありがとうございました」
村瀬さんが、思い出したかのように話す。
「はい。お疲れさま。あ、そうそう。私、今日は異世界の仲間たちとの連絡会があるので一日中帰ってきません」
私と、マリはそれに答える。
「あ、了解です」
《了解です》
村瀬さんはそのまま出かけてしまった。私も今日は自分の仕事があるので、一日中パソコンと睨めっこになりそうだ。私はマリに用事を頼むことにした。
「マリ。すまないが、私も今日は家で一日中仕事になりそうだから、代わりに買い物に行って来てくれないか?」
《了解です。食料品ですか?》
「ああ、メモを渡しておくよ。あとは、生活用品とかかな…」
《心得ました》
マリは買い物に行ったので、私は仕事に取り掛かった。
―街中―
デパートへやってきたマリは、中島に渡されたメモを元に買い物を進めていた。
《ふむふむ。これは買ったし、あとは最後に食料品を買って終わりのようですね。おや》
泣いている子供がいた。迷子だろうかとマリは子供に話しかけてみる。
《どうしまし――。どうしたの? 迷子かな?》
「グスッ。お母さんと、はぐれた」
《じゃあ、お姉さんが一緒に探してあげる》
マリは子供の手をつないで、お母さんを探すことにした。
とりあえずサービスカウンターへ向かえば、子供を探している親がいるかもしれないとマリは判断した。サービスカウンターの人に事情を説明し、店内放送をかけてもらう。親が来るまで子供と一緒に待つ。話し相手をしていると、少しずつ子供に笑顔が戻る。しばらくして、こちらに走ってくる女性が来た。子供に対して心配そうに声を掛けている。子供の親が来たようだ。
子供と親から感謝された。
「お姉ちゃん。ありがとう」
「ありがとうございます。助かりました」
《ふふっ。どういたしまして》
親も見つかり、胸を撫で下ろす。マリは買い物を再開し、食料品を買いにフロアを移動する。
食料品売り場で狭い通路を歩いていると、目の前に挙動不審の男が2人。
どうやら万引きのようだ。マリは店員を探し、声をかける。
《店員さん。あちらの二人が怪しい動きをしているんです》
「え、本当ですか。分かりました。教えてくれてありがとうございます」
マリは軽い会釈をしてその場を去る。
メモを見ながら、買うべきものをカゴに入れていく。買い物は順調で、あとは調味料を残すのみ。
《見つけた。これを買えば……》
商品をとろうとしたその時。こちらを見て残念そうにしている主婦の方がいた。
マリが見つけた商品は、最後の一個だったのだ。主婦の方は立ち去ろうとしている。
マリはメモを見ながら周りに聴こえるように独り言をつぶやく。
《あっ。これは、買うやつではなかったわぁ。間違えちゃった》
その場を去り、さり気なく後方を確認すると、主婦の方が最後の1個を手に取っていた。
声は聞こえないが、こちらにお辞儀をしているのが見えた。
買い物も無事に終わり、マリは帰路につく。
家につき、玄関に入ろうとした時、丁度同じタイミングで帰ってきた村瀬めぐみと鉢合わせた。
《あら》
「あら」
二人は一緒に玄関を開ける事にした。
《ただいま》
「ただいま!」
奥の方から中島義行が小走りで玄関に走ってくる。
「おー。おかえりー。二人一緒ですか」
「そ、たまたまね」
《はい。偶然です》
中島ら3人はリビングに入る。村瀬が先ずは口火を切った。
「あ~。こっちはまためんどくさい事になりそうなのよ~」
《そうなのですか、あとで詳しく聞きたいと思います》
村瀬の話を聞きながら、中島も会話に参加する。
「マリの買い物はどうだった?」
《色々ありました。あと、調味料は――》
そんな日常会話をしつつも、今日も一日が終わりを告げる。
村瀬さんが説明口調で状況を纏めている。
「――。つまり、私が、マリにほっぺを、抓られれば良いのね?」
村瀬さんは、あまり納得がいかなそうな顔で答えてくれた。そりゃそうだ。誰だって痛い思いを進んでしようなどという輩はおるまい。私は申し訳なさそうに村瀬さんにお願いする。
「あ、ハイ。スミマセン。これしか思いつかなかったもので……。たぶん、大丈夫だと思うんですけど」
「痛かったら?」
「え」
「私もあなたを抓っていいのかしら?」
村瀬さんは笑顔で語る。言い出しっぺは私だ。私も覚悟を決めよう。
「わ、分かった。お、男に二言はない!」
「じゃあ、マリ。私のほっぺを抓っていいわよ」
《了解です。いきます》
私はカルマを発動し、結果を見定める。
「アイタタタタタタタタ!」
痛みを感じたのは私だ。村瀬さんは、まったく痛くない様子。
村瀬さんがマリにほっぺを抓られながら、納得のいった表情で話す。
「なるほど…。痛みや、損傷を肩代わりする能力ってことかしら…」
村瀬さんは考える人のポーズを取りながら続けて話す。マリはまだほっぺを抓っている。
「名づけるならば<<庇護のカルマ>>って所ね」
私は手を上げて発言をする。
「あ、あの、もう抓らなくてもいいんじゃないでしょうか。私、痛いんですが」
村瀬さんは思い出したようにマリに話しかける。
「あ、そうね。マリ。もう抓らなくてもいいわよ」
《了解です》
ふう。やっと痛みから解放された。それにしてもマリ。結構強めに抓ってなかったか…。
とりあえず、新しい能力の実験は終了だ。
「実験にお付き合い頂き、ありがとうございました」
村瀬さんが、思い出したかのように話す。
「はい。お疲れさま。あ、そうそう。私、今日は異世界の仲間たちとの連絡会があるので一日中帰ってきません」
私と、マリはそれに答える。
「あ、了解です」
《了解です》
村瀬さんはそのまま出かけてしまった。私も今日は自分の仕事があるので、一日中パソコンと睨めっこになりそうだ。私はマリに用事を頼むことにした。
「マリ。すまないが、私も今日は家で一日中仕事になりそうだから、代わりに買い物に行って来てくれないか?」
《了解です。食料品ですか?》
「ああ、メモを渡しておくよ。あとは、生活用品とかかな…」
《心得ました》
マリは買い物に行ったので、私は仕事に取り掛かった。
―街中―
デパートへやってきたマリは、中島に渡されたメモを元に買い物を進めていた。
《ふむふむ。これは買ったし、あとは最後に食料品を買って終わりのようですね。おや》
泣いている子供がいた。迷子だろうかとマリは子供に話しかけてみる。
《どうしまし――。どうしたの? 迷子かな?》
「グスッ。お母さんと、はぐれた」
《じゃあ、お姉さんが一緒に探してあげる》
マリは子供の手をつないで、お母さんを探すことにした。
とりあえずサービスカウンターへ向かえば、子供を探している親がいるかもしれないとマリは判断した。サービスカウンターの人に事情を説明し、店内放送をかけてもらう。親が来るまで子供と一緒に待つ。話し相手をしていると、少しずつ子供に笑顔が戻る。しばらくして、こちらに走ってくる女性が来た。子供に対して心配そうに声を掛けている。子供の親が来たようだ。
子供と親から感謝された。
「お姉ちゃん。ありがとう」
「ありがとうございます。助かりました」
《ふふっ。どういたしまして》
親も見つかり、胸を撫で下ろす。マリは買い物を再開し、食料品を買いにフロアを移動する。
食料品売り場で狭い通路を歩いていると、目の前に挙動不審の男が2人。
どうやら万引きのようだ。マリは店員を探し、声をかける。
《店員さん。あちらの二人が怪しい動きをしているんです》
「え、本当ですか。分かりました。教えてくれてありがとうございます」
マリは軽い会釈をしてその場を去る。
メモを見ながら、買うべきものをカゴに入れていく。買い物は順調で、あとは調味料を残すのみ。
《見つけた。これを買えば……》
商品をとろうとしたその時。こちらを見て残念そうにしている主婦の方がいた。
マリが見つけた商品は、最後の一個だったのだ。主婦の方は立ち去ろうとしている。
マリはメモを見ながら周りに聴こえるように独り言をつぶやく。
《あっ。これは、買うやつではなかったわぁ。間違えちゃった》
その場を去り、さり気なく後方を確認すると、主婦の方が最後の1個を手に取っていた。
声は聞こえないが、こちらにお辞儀をしているのが見えた。
買い物も無事に終わり、マリは帰路につく。
家につき、玄関に入ろうとした時、丁度同じタイミングで帰ってきた村瀬めぐみと鉢合わせた。
《あら》
「あら」
二人は一緒に玄関を開ける事にした。
《ただいま》
「ただいま!」
奥の方から中島義行が小走りで玄関に走ってくる。
「おー。おかえりー。二人一緒ですか」
「そ、たまたまね」
《はい。偶然です》
中島ら3人はリビングに入る。村瀬が先ずは口火を切った。
「あ~。こっちはまためんどくさい事になりそうなのよ~」
《そうなのですか、あとで詳しく聞きたいと思います》
村瀬の話を聞きながら、中島も会話に参加する。
「マリの買い物はどうだった?」
《色々ありました。あと、調味料は――》
そんな日常会話をしつつも、今日も一日が終わりを告げる。
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