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医務室に入るや否やロゼはドサッとケガ人のナティアを、物を扱うような感覚でベッドに投げ、パンパンと手を払った。
「うぐあっ!! ……おまっ…マジで…いつか処刑してやる…!!」
「運んであげただけ感謝しなさいよ。じゃ、私は体に臭いのがしみこむ前にお風呂に入ってくるわ。アリアナ、あとはよろしくね」
「はい」
激痛に脂汗をかきながら呻き、涙目になりながらも確固たる信念をもってそう言うナティアに、ロゼは全く相手にしていない口調でナティアを見下ろすと、すぐに医務室を出て行ってしまった。ロゼが出ていくのを見送ったアリアナはすぐにナティアの側へ行き、何をするべきかをすぐに考えた。
「ナティアさん、まずはちょっと体勢を整えましょう。変な恰好でいると辛いでしょう?」
「あぁ…。投げられた時は、正直痛みで失神するかと思った……」
「ですよね…。じゃあ、痛いかもしれませんがちゃんと横になりましょう」
アリアナはそう言うと、ナティアに声を掛けながらゆっくりとナティアの体勢を整え、体が辛くならないように体の位置を整える。ナティアも自分で動かせる所は自分で動かし、痛みに耐えながらアリアナに協力した。ナティアが楽な姿勢を取れる頃には軽くアリアナの息が切れていた。
「鍛えた男を動かすのは、疲れるよな。…ありがとう」
「はい…。あ、ちょっと、待っててください。体を拭くものを持ってきますね」
ナティアは弱っている自分を自覚しながらも、その弱った所に染みわたるアリアナの優しさは否応なしにナティアに安堵感を与え、極限状態の中で安堵を与えてくれる存在を愛しく思えた。そして同時に、もしかしたらロゼも同じ理由でアリアナを気に入っているのではないだろうかと思ったが、ロゼと同じである事は気に食わないと早々にその思考を廃棄した。
そんな事を思っているうちにアリアナは桶とタオルを持って医務室に戻ってきていて、サイドテーブルにそれらを置くと、うっすらと滲んだ汗を袖で拭った。
「ナティアさん、大丈夫ですか? これからまた体に触りますけどいいですか?」
「……あぁ、良いよ。好きに触れていい」
ロゼを睨んでいた時とは打って変わって優しい眼差しでアリアナを見るナティアに、アリアナは驚きながらも「ありがとうございます」と礼を言ってから包帯だらけの体に向き直った。そしてアリアナは意を決すると体に巻かれている包帯を丁寧に外すと、外したところから温かいタオルでナティアの体を優しく拭き始めた。なるべく怪我のある所には触れず、その周囲をそっと拭く程度だったが、ナティアにとってとても気持ちよく、いつの間にかリラックスして眠りについていた。
包帯をほどいて体を拭き、また包帯を巻き直す。桶のお湯が汚れたら取り換える。この作業を繰り返していると、思い出したように様子を見に来たデュオが感心した様子でアリアナに声をかけた。
「ずっとナティアの体を拭き続けていたのですか?」
「ひゃっ!? あ、デュオさん。はい、ロゼさんが臭いと言っていたので、体を拭けばナティアさんもスッキリしますし、ニオイも少しは取れると思ったので」
突然背中から声を掛けられて驚きながらも、振り返って声をかけてきたのがデュオだと分かると、笑顔でデュオに答えた。
「包帯も、自分で巻いていたのですか?」
「はい……。でも、上手に巻けなくて……。せっかくデュオさんが綺麗に巻いていたのにすみません」
デュオが巻いた所は明らかに違う巻き方で、ところどころ緩んでいる包帯に、アリアナはうつむいて謝ると、デュオはアリアナの傍まで行ってフワッと抱き締めるとアリアナの頭を優しく撫でた。
「謝らなくていいんですよ。一生懸命やっていることは伝わってきました。私の仕事もひと段落付きましたし、手伝いましょう。ついでに巻き方も教えますよ」
「でゅ、デュオさん!? ち、近いです!」
「まだ慣れませんか? 一緒に寝た仲ではありませんか。抱き締められたら、抱きしめ返してくださると、みんな喜ぶんですよ。ほら、練習だと思ってやってみてください」
穏やかな低いデュオの声が耳に滑り込んでくるだけで、アリアナはゾクゾクと腰のあたりがうずくのを感じ、一気に顔に熱が集まるのが分かった。そしてその顔を見られまいとアリアナがうつむくと、デュオの加虐心がうずいてしまったのか、「可愛い顔を隠さないでください」とアリアナの顎に手を添えてクイッとアリアナの顔を上げさせた。
「顔が真っ赤ですね、熱でも出ましたか?」
「うぅぅ……。デュオさんのせいです……」
「それは失礼しました。責任をもって介抱しましょう」
顔を真っ赤にして涙目で言うアリアナの姿を見た瞬間、デュオはアリアナと事を致した日の事を思い出して欲情する自分がいることを自覚した。そして同時に素面の状態の自分を欲情させる女性がロゼ以外にもいた事に驚き、背徳感によってさらに興奮する感覚がデュオの心中をかき乱した。
「貴方は、本当に魔性の女ですね」
デュオの囁きに悩ましい程の色気が混じり、アリアナはその色気に当てられてクラクラしそうになるのを必死に耐えながら、どうするべきか頭をフル回転させた。
「うぐあっ!! ……おまっ…マジで…いつか処刑してやる…!!」
「運んであげただけ感謝しなさいよ。じゃ、私は体に臭いのがしみこむ前にお風呂に入ってくるわ。アリアナ、あとはよろしくね」
「はい」
激痛に脂汗をかきながら呻き、涙目になりながらも確固たる信念をもってそう言うナティアに、ロゼは全く相手にしていない口調でナティアを見下ろすと、すぐに医務室を出て行ってしまった。ロゼが出ていくのを見送ったアリアナはすぐにナティアの側へ行き、何をするべきかをすぐに考えた。
「ナティアさん、まずはちょっと体勢を整えましょう。変な恰好でいると辛いでしょう?」
「あぁ…。投げられた時は、正直痛みで失神するかと思った……」
「ですよね…。じゃあ、痛いかもしれませんがちゃんと横になりましょう」
アリアナはそう言うと、ナティアに声を掛けながらゆっくりとナティアの体勢を整え、体が辛くならないように体の位置を整える。ナティアも自分で動かせる所は自分で動かし、痛みに耐えながらアリアナに協力した。ナティアが楽な姿勢を取れる頃には軽くアリアナの息が切れていた。
「鍛えた男を動かすのは、疲れるよな。…ありがとう」
「はい…。あ、ちょっと、待っててください。体を拭くものを持ってきますね」
ナティアは弱っている自分を自覚しながらも、その弱った所に染みわたるアリアナの優しさは否応なしにナティアに安堵感を与え、極限状態の中で安堵を与えてくれる存在を愛しく思えた。そして同時に、もしかしたらロゼも同じ理由でアリアナを気に入っているのではないだろうかと思ったが、ロゼと同じである事は気に食わないと早々にその思考を廃棄した。
そんな事を思っているうちにアリアナは桶とタオルを持って医務室に戻ってきていて、サイドテーブルにそれらを置くと、うっすらと滲んだ汗を袖で拭った。
「ナティアさん、大丈夫ですか? これからまた体に触りますけどいいですか?」
「……あぁ、良いよ。好きに触れていい」
ロゼを睨んでいた時とは打って変わって優しい眼差しでアリアナを見るナティアに、アリアナは驚きながらも「ありがとうございます」と礼を言ってから包帯だらけの体に向き直った。そしてアリアナは意を決すると体に巻かれている包帯を丁寧に外すと、外したところから温かいタオルでナティアの体を優しく拭き始めた。なるべく怪我のある所には触れず、その周囲をそっと拭く程度だったが、ナティアにとってとても気持ちよく、いつの間にかリラックスして眠りについていた。
包帯をほどいて体を拭き、また包帯を巻き直す。桶のお湯が汚れたら取り換える。この作業を繰り返していると、思い出したように様子を見に来たデュオが感心した様子でアリアナに声をかけた。
「ずっとナティアの体を拭き続けていたのですか?」
「ひゃっ!? あ、デュオさん。はい、ロゼさんが臭いと言っていたので、体を拭けばナティアさんもスッキリしますし、ニオイも少しは取れると思ったので」
突然背中から声を掛けられて驚きながらも、振り返って声をかけてきたのがデュオだと分かると、笑顔でデュオに答えた。
「包帯も、自分で巻いていたのですか?」
「はい……。でも、上手に巻けなくて……。せっかくデュオさんが綺麗に巻いていたのにすみません」
デュオが巻いた所は明らかに違う巻き方で、ところどころ緩んでいる包帯に、アリアナはうつむいて謝ると、デュオはアリアナの傍まで行ってフワッと抱き締めるとアリアナの頭を優しく撫でた。
「謝らなくていいんですよ。一生懸命やっていることは伝わってきました。私の仕事もひと段落付きましたし、手伝いましょう。ついでに巻き方も教えますよ」
「でゅ、デュオさん!? ち、近いです!」
「まだ慣れませんか? 一緒に寝た仲ではありませんか。抱き締められたら、抱きしめ返してくださると、みんな喜ぶんですよ。ほら、練習だと思ってやってみてください」
穏やかな低いデュオの声が耳に滑り込んでくるだけで、アリアナはゾクゾクと腰のあたりがうずくのを感じ、一気に顔に熱が集まるのが分かった。そしてその顔を見られまいとアリアナがうつむくと、デュオの加虐心がうずいてしまったのか、「可愛い顔を隠さないでください」とアリアナの顎に手を添えてクイッとアリアナの顔を上げさせた。
「顔が真っ赤ですね、熱でも出ましたか?」
「うぅぅ……。デュオさんのせいです……」
「それは失礼しました。責任をもって介抱しましょう」
顔を真っ赤にして涙目で言うアリアナの姿を見た瞬間、デュオはアリアナと事を致した日の事を思い出して欲情する自分がいることを自覚した。そして同時に素面の状態の自分を欲情させる女性がロゼ以外にもいた事に驚き、背徳感によってさらに興奮する感覚がデュオの心中をかき乱した。
「貴方は、本当に魔性の女ですね」
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