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一章 -幼少時代-
二章公開直前! 一章のあらすじを楽しくざっくりおさらい☆ 後編
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ここは現実と夢の狭間。なんでもありの無法地帯である。
※表記説明
『バ:』…バーノ
『レ:』…レッジ
『ゼ:』…ゼノ
【三話・悠久の友、信頼の臣の始まり】
ゼ:「俺達と別れた後、二人は王城に保護されたんだね」
バ:「リオ殿下がパーティーを抜け出して門まで来て、陛下がリオ殿下の後を追ってきたから二人は王城で保護されるようになったんだよな」
レ:「すごい偶然だよな。もしリオ殿下が出てこなかったら二人はまた別の運命を辿ることになっていただろうし、もしかしたら二章まで生きられない…なんて展開もあったかもしれないな」
バ:「おいおい、そうしたらそこで物語が終了して、あらすじと内容が合わなくなるだろうが」
ゼ:「結局はご都合主義って感じなんだね~」
バ:「そこは運命って言ってやれよ……。タグにも『運命』ってあるんだからよ」
ゼ:「はーい。運命ね、運命」
レ:「でも、ドラゴンが持っていた〈ソウル〉の魔法剣とロディアノスの姓があってもやっぱり最初は警戒されていたな。一週間、城の一室で監禁生活だもんな」
バ:「とは言っても、二人とも子供だから最大限の配慮はされていたし、リオ殿下も毎日二人の所に来ていたから、二人ともすっかり城での暮らしを堪能してたな」
レ:「いいなぁ~。俺も一回贅沢三昧な生活をしてみたいぜ」
バ:「ハハッ、そういう贅沢な生活は一時ならいいが、長く続くと案外退屈だぞ」
ゼ:「え、バーノ、経験した事あるの?」
バ:「まあな。ま、昔は結構色々とやっていたからな。若気の至りってやつだ」
レ・ゼ:(若気の至りって何をやってたんだよ……。『色々』ってところに本当に色々詰まってそうで怖い…)
バ:「ん? 二人とも黙り込んでどうした?」
レ・ゼ:「いや、何でもない…」
バ:「そうか? まあ、それならいいが。
あぁ、その監禁生活の中でリオ殿下の兄君、レイロンド殿下にも会ったんだよな。レイロンド殿下は生まれつきお身体が弱いから、初めて会った時も発作が起こってリオ殿下がしょんぼりしてたな」
ゼ:「でもそこで、リオ殿下が「自分の友達は兄様の友達」って宣言したから、レイロンド殿下にも晴れて友達ができたんだよね。まあその後、もはや兄弟同然に育つんだけどさ」
レ:「そうだな。監禁を言い渡されてから一週間後に二人はリオ殿下とレイロンド殿下の友人として城に滞在することになったな。さらに、二人の目的だった母親探しも王家が請け負ってくれることになったし、王室専属の家庭教師から勉強も教えてもらえるようになるなんて…陛下のお心は寛大だよなぁ」
バ:「確かに寛大だがな、あれは親バカとも言うんだぞ」
ゼ:「あー、陛下に親バカとか言ったら不敬罪で捕まるよ~」
バ:「事実だろうが。ったく、それに、ここは無法地帯だ。なんでもありなんだよ。
それで、監禁生活が終わった翌日から二人はリオ殿下に振り回されてたな」
レ:「あー、早朝に叩き起こされて門から順番に朝の挨拶をしに行くんだろう? リオ殿下は元気だよなぁ」
ゼ:「俺もそう思った。さすがに朝っぱらからあんなに元気に走り回れないわ~」
バ:「子供はやっぱり元気なのが一番だよな」
ゼ:「そうだね。でもリオ殿下の日課が、毎朝王城衛兵の宿舎に行って、寝坊者を叩き起こしに行くっていうのには驚いたなぁ。普通、王子が一介の兵の所に行って直々に起こすなんてこと、無いよ?」
バ:「作者によれば、『リオは友達がいないから、遊び相手は大抵、王城衛兵か近衛騎士。だけど、みんな堅苦しいから、その堅苦しさを無くしたいがために始めた』とのことらしいな」
レ:「殿下も苦労してるんだな~」
バ:「でも、そのおかげで今は気軽な態度で話してくれる人が増えたらしいから、リオ殿下の作戦は見事に成功したってことになるな」
ゼ:「で、最後の話では厨房の人達から歓迎されたけど、一番近くで王族を守る近衛騎士団のトップ、ユリーゼ団長からはあからさまに警戒されちゃうんだよね」
バ:「だが、ドラゴンはそんな凛々しい姿に憧れの感情を抱くようになったんだ。リオ殿下はとても喜んでいたな」
レ:「逆に、ザギはやっぱり母親に会いたいという気持ちが膨れて、複雑な心境になっているんだよなぁ。この感情のすれ違いは今後の展開に影響を及ぼしてくる重要な部分だ」
バ:「さて、じゃあ重要な部分を忘れねぇうちに決定的に運命が分かれる四話目に移るか」
ゼ:「ここにきて、初めてまともな移りだったね」
【四話・ザギの決断と動き出す影】
バ:「これはザギとドラゴンが城に保護されてから一ヶ月後の出来事だな。この頃、各地で魔狼が人々を困らせていたな。最初は俺達のような傭兵でも対処可能だったが、どういう訳か次第に魔狼の体躯が大きくなり、どんどん賢くなって討伐が困難になってきたんだ」
レ:「俺とバーノもこの頃は行商よりも傭兵としての働きの方が多かったな。途中で天狼傭兵団の本部に戻って対策も練ったし」
バ:「俺達天狼傭兵団は基本的に賊相手の仕事だから、魔物の討伐という任務はあまり請け負っていなかった。もちろん、警護の任務で遭遇した魔物となら戦うこともあるが、魔物の巣を潰すとかいう任務は紅蛇傭兵団の仕事だったから、圧倒的にあっちの方が専門なんだよな。ま、俺達も経験があまり無いからとただ指をくわえて見ている訳にはいかないから、紅蛇傭兵団に協力する旨の手紙を送ったけどな」
レ:「天狼と紅蛇が手を取り合って討伐してたにもかかわらず、魔狼の強さは異常で、被害の拡大を押さえることができなかったから国に協力を要請したんだよな」
バ:「ああ、国土防衛軍も戦っていたが、それでも対応しきれないほど魔狼は賢くなっちまった」
ゼ:「だから、城の方も精鋭ばかりを選んで討伐に向かったんだね。
要請を受けてから、城の方はすごく忙しくなったよ。近衛騎士団長、ユリーゼを中心に討伐へ向かう者のリストアップが始まったんだ。そして、ザギが戦いの道を選んで千人隊長のアンドソンから剣を習い始めたのも同時期。
ザギはお母さんを探しに行くために魔狼討伐部隊の道中に同行することを希望するんだけど、ユリーゼからまともに剣を使えるようになったら連れて行ってやると言われてね。元々強くなりたいと思っていたから、ザギはここで剣を持つ事を決意したんだ」
バ:「ザギは、戦いの道を選んだのか……。あんなに小さいのに、悲しいな」
レ:「ゼノ、そういえば俺たちが剣を持ったのは何歳だっけ?」
ゼ:「確か、十二歳くらいだったかな。まあ、まだその頃はその辺にある木の棒でレッジとチャンバラをするくらいだったけどね。でもその頃にバーノに引き取られて、本格的にバーノから剣を習うようになったんだよね~。懐かしいなぁ」
バ:「お前たちに剣を教えたのはそれくらいの年だったか。確かに懐かしいな」
レ:「バーノの指導はめちゃくちゃ厳しかったよな。何度泣かされたことか」
ゼ:「ほーんと。容赦なかったよね~」
バ:「それくらいしなきゃ、自分の身を守れるくらいにならねぇんだよ。だけど、ザギは天賦の才を持っていたらしいな。一週間で剣を覚えるなんて、普通じゃありえねぇ」
ゼ:「その時はザギのことを見守っていたけど、アンドソンから学んだことはその日のうちに形にしてたね。そのために勉強の時間以外のすべての時間を使っていたよ」
レ:「努力家なんだな」
ゼ:「そうそう、努力家なんだよ~。で、ユリーゼから出された条件を見事クリアして、ザギは魔狼討伐部隊と一緒に城を出ていったんだ」
レ:「だけど、魔狼討伐部隊が出発してから数日後に王城で留守番をしていたはずの近衛騎士団副団長のラエルが紅蛇の傭兵たちを引き連れて一行を追いかけ、合流するんだよね」
バ:「その時に、ザギはリオ殿下とレイロンド殿下とドラゴンからプレゼントをもらったんだよな。リオ殿下とレイロンド殿下からは指輪。ドラゴンからは手紙…だな」
ゼ:「ドラゴンの手紙、すごく健気な内容だったよね~。あんな手紙もらったら俺も泣いちゃうわ~」
レ:「お前がそう言うと、ものすごく適当に聞こえるから不思議だよな」
ゼ:「レッジ、喧嘩売ってる?」
バ:「こらこらゼノ、怒るなって。お前、死んでから短気になったか?」
ゼ:「いや、通常運転だけど?」
バ:「そうか? …ま、そういう事にしておいてやる。内容の方に戻るが、ラエルが合流してから一週間後に魔狼との戦端が開かれたんだったな。ザギとアンドソンがそろそろ別行動に移ろうとしていた矢先だった」
ゼ:「そうそう。それで、そこでようやくタイトルに入っている『影』の意味が明かされるんだよね」
レ:「あー、あの魔人か。兄様、とか言っていた割にあの二人、めちゃくちゃラブラブだったよな」
バ:「近親相姦…ってところか? まだまだ謎が多い二人だが、分かっていることはいくつかある」
レ:「それは?」
バ:「あの二人は人間嫌いの魔人で、人間に対して強い恨みを持っている。そして、この騒動を起こした張本人って事だな」
ゼ:「まだまだこの二人には振り回されることになりそうだね」
レ:「でもこの二人、なんでザギを誘拐したんだ? ロディアノスの姓に興味というか、関心があったみたいだが」
バ:「確かになんでロディアノスの姓に関心を示し、ザギを連れ去ったのか不思議だよな。でも、その理由も後々明かされてくるだろう」
ゼ:「先にザギの誘拐を言っちゃダメだと思うんだけど。順を追ってちゃんと言わないと、あらすじ説明にならないと思いま~す」
バ:「ま、そうだな。簡単に順を追って説明すると、まず魔狼と接触。次に国土防衛軍に応援要請、だけどこれは例の魔人によって妨害され、応援が来ることがないという状況を作る。しばらくして前線崩壊、態勢を立て直すために一度引き、その時に魔人が部隊の前に姿を現す。そして魔人たちが騎士達の身の安全と引き換えにザギを要求するがアンドソンが反抗し、助かりたい一心の騎士たちによってアンドソンは殺される。平常心を失った騎士達は狂気に飲まれ、ザギを抱いていたラエルにまで剣を向けたため、ザギはこれ以上死者を増やしたくない一心で魔人たちの所に行くことを決心し、自ら魔人たちの所に行く。しかし、魔人たちは最初から騎士たちを助ける気はなく、周りにいた魔狼達を一つにまとめて魔力と瘴気の力によって巨大な一体の魔狼を創り上げる。辛くもその魔狼を討伐することに成功したが、その間にザギと魔人たちはどこかに消えてしまった…というのがクライマックスシーンのあらすじだな」
レ:「……くあぁ~…あ、説明終わったか?」
ゼ:「バーノの説明、長すぎ~」
バ:「お前ら……だらけ過ぎだ! そもそもゼノが説明しろと言ったから俺が説明してたんだろうが! ちゃんと聞いてろ!」
レ・ゼ:「はぁ~い」
バ:「ったく……二人がそろうとやっぱり憎たらしさも二倍になるもんだな」
ゼ:「と言いながら、嬉しそうな顔するなんて、やっぱりバーノはお人好しだよね。……まあ…そこが好きなんだけどね」
バ:「あ? ごにょごにょとなんて言ったんだ? ちゃんとはっきり話せ」
ゼ:「聞こえなかったならそれでいいよ。別に重要なことじゃないし」
レ:「照れなくてもいいだろ~、ゼノ。ちゃんとバーノに言ってやれよ。また会えなくなるんだからよ」
ゼ:「ニヤニヤしながら言わないでくれる? 腹立つんだけど」
レ:「ハハッ、お前が言わないなら、俺が代わりに言ってやろうか?」
ゼ:「余計なお世話だよ! まったく……バーノ、俺はバーノのお人好しなところ、結構好きだよ。俺を孤児院から引き取って、ここまで育ててくれてありがとう」
バ:「………ハハッ、ゼノが素直に礼を言うなんて珍しいから調子が狂うな。…まあ俺も、たくさん思い出をくれてありがとうな、ゼノ」
レ:「ということで、ここまで読んでくれてありがとうな! これで一章の内容も思い出しただろうし、安心して公開される二章を楽しめると思うぜ!」
ゼ:「……レッジ、いい雰囲気をぶち壊さないでくれる!? せっかくバーノとの別れを惜しむ、感動のシーンだったのに!」
バ:「いや、ゼノ…自分でそう言った時点で雰囲気も何も無いし、どこまでが本心か疑われるぞ?」
ゼ:「一応全部本心だよ。バーノには感謝してる……って、あれ…俺の身体、透けてきてる!?」
レ:「お、俺もだ!」
バ:「もう時間って訳か。ゼノ、あの世でも元気でいろよ。風邪ひいて一人で泣いたりするなよ」
レ:「ゼノ、一人で寂しいかもしれないが、俺達もそのうちそっちに行くから待ってろよ~」
ゼ:「風邪ひいて泣いたりなんかしないよ! まったく…せいぜい二人とも長生きしてよね。気長に待ってるから」
バ・レ:「あぁ。ゼノの分まで生きてやる」
ゼ:「……それでは読者の皆様、俺もここで失礼します。公開される二章をお楽しみください。バイバイ♪」
終
※表記説明
『バ:』…バーノ
『レ:』…レッジ
『ゼ:』…ゼノ
【三話・悠久の友、信頼の臣の始まり】
ゼ:「俺達と別れた後、二人は王城に保護されたんだね」
バ:「リオ殿下がパーティーを抜け出して門まで来て、陛下がリオ殿下の後を追ってきたから二人は王城で保護されるようになったんだよな」
レ:「すごい偶然だよな。もしリオ殿下が出てこなかったら二人はまた別の運命を辿ることになっていただろうし、もしかしたら二章まで生きられない…なんて展開もあったかもしれないな」
バ:「おいおい、そうしたらそこで物語が終了して、あらすじと内容が合わなくなるだろうが」
ゼ:「結局はご都合主義って感じなんだね~」
バ:「そこは運命って言ってやれよ……。タグにも『運命』ってあるんだからよ」
ゼ:「はーい。運命ね、運命」
レ:「でも、ドラゴンが持っていた〈ソウル〉の魔法剣とロディアノスの姓があってもやっぱり最初は警戒されていたな。一週間、城の一室で監禁生活だもんな」
バ:「とは言っても、二人とも子供だから最大限の配慮はされていたし、リオ殿下も毎日二人の所に来ていたから、二人ともすっかり城での暮らしを堪能してたな」
レ:「いいなぁ~。俺も一回贅沢三昧な生活をしてみたいぜ」
バ:「ハハッ、そういう贅沢な生活は一時ならいいが、長く続くと案外退屈だぞ」
ゼ:「え、バーノ、経験した事あるの?」
バ:「まあな。ま、昔は結構色々とやっていたからな。若気の至りってやつだ」
レ・ゼ:(若気の至りって何をやってたんだよ……。『色々』ってところに本当に色々詰まってそうで怖い…)
バ:「ん? 二人とも黙り込んでどうした?」
レ・ゼ:「いや、何でもない…」
バ:「そうか? まあ、それならいいが。
あぁ、その監禁生活の中でリオ殿下の兄君、レイロンド殿下にも会ったんだよな。レイロンド殿下は生まれつきお身体が弱いから、初めて会った時も発作が起こってリオ殿下がしょんぼりしてたな」
ゼ:「でもそこで、リオ殿下が「自分の友達は兄様の友達」って宣言したから、レイロンド殿下にも晴れて友達ができたんだよね。まあその後、もはや兄弟同然に育つんだけどさ」
レ:「そうだな。監禁を言い渡されてから一週間後に二人はリオ殿下とレイロンド殿下の友人として城に滞在することになったな。さらに、二人の目的だった母親探しも王家が請け負ってくれることになったし、王室専属の家庭教師から勉強も教えてもらえるようになるなんて…陛下のお心は寛大だよなぁ」
バ:「確かに寛大だがな、あれは親バカとも言うんだぞ」
ゼ:「あー、陛下に親バカとか言ったら不敬罪で捕まるよ~」
バ:「事実だろうが。ったく、それに、ここは無法地帯だ。なんでもありなんだよ。
それで、監禁生活が終わった翌日から二人はリオ殿下に振り回されてたな」
レ:「あー、早朝に叩き起こされて門から順番に朝の挨拶をしに行くんだろう? リオ殿下は元気だよなぁ」
ゼ:「俺もそう思った。さすがに朝っぱらからあんなに元気に走り回れないわ~」
バ:「子供はやっぱり元気なのが一番だよな」
ゼ:「そうだね。でもリオ殿下の日課が、毎朝王城衛兵の宿舎に行って、寝坊者を叩き起こしに行くっていうのには驚いたなぁ。普通、王子が一介の兵の所に行って直々に起こすなんてこと、無いよ?」
バ:「作者によれば、『リオは友達がいないから、遊び相手は大抵、王城衛兵か近衛騎士。だけど、みんな堅苦しいから、その堅苦しさを無くしたいがために始めた』とのことらしいな」
レ:「殿下も苦労してるんだな~」
バ:「でも、そのおかげで今は気軽な態度で話してくれる人が増えたらしいから、リオ殿下の作戦は見事に成功したってことになるな」
ゼ:「で、最後の話では厨房の人達から歓迎されたけど、一番近くで王族を守る近衛騎士団のトップ、ユリーゼ団長からはあからさまに警戒されちゃうんだよね」
バ:「だが、ドラゴンはそんな凛々しい姿に憧れの感情を抱くようになったんだ。リオ殿下はとても喜んでいたな」
レ:「逆に、ザギはやっぱり母親に会いたいという気持ちが膨れて、複雑な心境になっているんだよなぁ。この感情のすれ違いは今後の展開に影響を及ぼしてくる重要な部分だ」
バ:「さて、じゃあ重要な部分を忘れねぇうちに決定的に運命が分かれる四話目に移るか」
ゼ:「ここにきて、初めてまともな移りだったね」
【四話・ザギの決断と動き出す影】
バ:「これはザギとドラゴンが城に保護されてから一ヶ月後の出来事だな。この頃、各地で魔狼が人々を困らせていたな。最初は俺達のような傭兵でも対処可能だったが、どういう訳か次第に魔狼の体躯が大きくなり、どんどん賢くなって討伐が困難になってきたんだ」
レ:「俺とバーノもこの頃は行商よりも傭兵としての働きの方が多かったな。途中で天狼傭兵団の本部に戻って対策も練ったし」
バ:「俺達天狼傭兵団は基本的に賊相手の仕事だから、魔物の討伐という任務はあまり請け負っていなかった。もちろん、警護の任務で遭遇した魔物となら戦うこともあるが、魔物の巣を潰すとかいう任務は紅蛇傭兵団の仕事だったから、圧倒的にあっちの方が専門なんだよな。ま、俺達も経験があまり無いからとただ指をくわえて見ている訳にはいかないから、紅蛇傭兵団に協力する旨の手紙を送ったけどな」
レ:「天狼と紅蛇が手を取り合って討伐してたにもかかわらず、魔狼の強さは異常で、被害の拡大を押さえることができなかったから国に協力を要請したんだよな」
バ:「ああ、国土防衛軍も戦っていたが、それでも対応しきれないほど魔狼は賢くなっちまった」
ゼ:「だから、城の方も精鋭ばかりを選んで討伐に向かったんだね。
要請を受けてから、城の方はすごく忙しくなったよ。近衛騎士団長、ユリーゼを中心に討伐へ向かう者のリストアップが始まったんだ。そして、ザギが戦いの道を選んで千人隊長のアンドソンから剣を習い始めたのも同時期。
ザギはお母さんを探しに行くために魔狼討伐部隊の道中に同行することを希望するんだけど、ユリーゼからまともに剣を使えるようになったら連れて行ってやると言われてね。元々強くなりたいと思っていたから、ザギはここで剣を持つ事を決意したんだ」
バ:「ザギは、戦いの道を選んだのか……。あんなに小さいのに、悲しいな」
レ:「ゼノ、そういえば俺たちが剣を持ったのは何歳だっけ?」
ゼ:「確か、十二歳くらいだったかな。まあ、まだその頃はその辺にある木の棒でレッジとチャンバラをするくらいだったけどね。でもその頃にバーノに引き取られて、本格的にバーノから剣を習うようになったんだよね~。懐かしいなぁ」
バ:「お前たちに剣を教えたのはそれくらいの年だったか。確かに懐かしいな」
レ:「バーノの指導はめちゃくちゃ厳しかったよな。何度泣かされたことか」
ゼ:「ほーんと。容赦なかったよね~」
バ:「それくらいしなきゃ、自分の身を守れるくらいにならねぇんだよ。だけど、ザギは天賦の才を持っていたらしいな。一週間で剣を覚えるなんて、普通じゃありえねぇ」
ゼ:「その時はザギのことを見守っていたけど、アンドソンから学んだことはその日のうちに形にしてたね。そのために勉強の時間以外のすべての時間を使っていたよ」
レ:「努力家なんだな」
ゼ:「そうそう、努力家なんだよ~。で、ユリーゼから出された条件を見事クリアして、ザギは魔狼討伐部隊と一緒に城を出ていったんだ」
レ:「だけど、魔狼討伐部隊が出発してから数日後に王城で留守番をしていたはずの近衛騎士団副団長のラエルが紅蛇の傭兵たちを引き連れて一行を追いかけ、合流するんだよね」
バ:「その時に、ザギはリオ殿下とレイロンド殿下とドラゴンからプレゼントをもらったんだよな。リオ殿下とレイロンド殿下からは指輪。ドラゴンからは手紙…だな」
ゼ:「ドラゴンの手紙、すごく健気な内容だったよね~。あんな手紙もらったら俺も泣いちゃうわ~」
レ:「お前がそう言うと、ものすごく適当に聞こえるから不思議だよな」
ゼ:「レッジ、喧嘩売ってる?」
バ:「こらこらゼノ、怒るなって。お前、死んでから短気になったか?」
ゼ:「いや、通常運転だけど?」
バ:「そうか? …ま、そういう事にしておいてやる。内容の方に戻るが、ラエルが合流してから一週間後に魔狼との戦端が開かれたんだったな。ザギとアンドソンがそろそろ別行動に移ろうとしていた矢先だった」
ゼ:「そうそう。それで、そこでようやくタイトルに入っている『影』の意味が明かされるんだよね」
レ:「あー、あの魔人か。兄様、とか言っていた割にあの二人、めちゃくちゃラブラブだったよな」
バ:「近親相姦…ってところか? まだまだ謎が多い二人だが、分かっていることはいくつかある」
レ:「それは?」
バ:「あの二人は人間嫌いの魔人で、人間に対して強い恨みを持っている。そして、この騒動を起こした張本人って事だな」
ゼ:「まだまだこの二人には振り回されることになりそうだね」
レ:「でもこの二人、なんでザギを誘拐したんだ? ロディアノスの姓に興味というか、関心があったみたいだが」
バ:「確かになんでロディアノスの姓に関心を示し、ザギを連れ去ったのか不思議だよな。でも、その理由も後々明かされてくるだろう」
ゼ:「先にザギの誘拐を言っちゃダメだと思うんだけど。順を追ってちゃんと言わないと、あらすじ説明にならないと思いま~す」
バ:「ま、そうだな。簡単に順を追って説明すると、まず魔狼と接触。次に国土防衛軍に応援要請、だけどこれは例の魔人によって妨害され、応援が来ることがないという状況を作る。しばらくして前線崩壊、態勢を立て直すために一度引き、その時に魔人が部隊の前に姿を現す。そして魔人たちが騎士達の身の安全と引き換えにザギを要求するがアンドソンが反抗し、助かりたい一心の騎士たちによってアンドソンは殺される。平常心を失った騎士達は狂気に飲まれ、ザギを抱いていたラエルにまで剣を向けたため、ザギはこれ以上死者を増やしたくない一心で魔人たちの所に行くことを決心し、自ら魔人たちの所に行く。しかし、魔人たちは最初から騎士たちを助ける気はなく、周りにいた魔狼達を一つにまとめて魔力と瘴気の力によって巨大な一体の魔狼を創り上げる。辛くもその魔狼を討伐することに成功したが、その間にザギと魔人たちはどこかに消えてしまった…というのがクライマックスシーンのあらすじだな」
レ:「……くあぁ~…あ、説明終わったか?」
ゼ:「バーノの説明、長すぎ~」
バ:「お前ら……だらけ過ぎだ! そもそもゼノが説明しろと言ったから俺が説明してたんだろうが! ちゃんと聞いてろ!」
レ・ゼ:「はぁ~い」
バ:「ったく……二人がそろうとやっぱり憎たらしさも二倍になるもんだな」
ゼ:「と言いながら、嬉しそうな顔するなんて、やっぱりバーノはお人好しだよね。……まあ…そこが好きなんだけどね」
バ:「あ? ごにょごにょとなんて言ったんだ? ちゃんとはっきり話せ」
ゼ:「聞こえなかったならそれでいいよ。別に重要なことじゃないし」
レ:「照れなくてもいいだろ~、ゼノ。ちゃんとバーノに言ってやれよ。また会えなくなるんだからよ」
ゼ:「ニヤニヤしながら言わないでくれる? 腹立つんだけど」
レ:「ハハッ、お前が言わないなら、俺が代わりに言ってやろうか?」
ゼ:「余計なお世話だよ! まったく……バーノ、俺はバーノのお人好しなところ、結構好きだよ。俺を孤児院から引き取って、ここまで育ててくれてありがとう」
バ:「………ハハッ、ゼノが素直に礼を言うなんて珍しいから調子が狂うな。…まあ俺も、たくさん思い出をくれてありがとうな、ゼノ」
レ:「ということで、ここまで読んでくれてありがとうな! これで一章の内容も思い出しただろうし、安心して公開される二章を楽しめると思うぜ!」
ゼ:「……レッジ、いい雰囲気をぶち壊さないでくれる!? せっかくバーノとの別れを惜しむ、感動のシーンだったのに!」
バ:「いや、ゼノ…自分でそう言った時点で雰囲気も何も無いし、どこまでが本心か疑われるぞ?」
ゼ:「一応全部本心だよ。バーノには感謝してる……って、あれ…俺の身体、透けてきてる!?」
レ:「お、俺もだ!」
バ:「もう時間って訳か。ゼノ、あの世でも元気でいろよ。風邪ひいて一人で泣いたりするなよ」
レ:「ゼノ、一人で寂しいかもしれないが、俺達もそのうちそっちに行くから待ってろよ~」
ゼ:「風邪ひいて泣いたりなんかしないよ! まったく…せいぜい二人とも長生きしてよね。気長に待ってるから」
バ・レ:「あぁ。ゼノの分まで生きてやる」
ゼ:「……それでは読者の皆様、俺もここで失礼します。公開される二章をお楽しみください。バイバイ♪」
終
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