3 / 30
5歳
家族2
しおりを挟む「……」
気まずい。ものすごく気まずい。月都兄様はこっちを向いてニコニコしてるけど、何故か怖い。黒いオーラが漂っているような…
クスッ
「どうしたの優?」
き、気の所為かな気の所為だよねとりあえず兄様達早く来てえぇぇ!!!
ガチャ
扉の開く音と共に兄様達が入ってきた。
「兄さま(救世主)!!!!」
俺は全力で兄の元へ走り飛びつく。
「こらこらお行儀が悪いよ。それに走ったら体がびっくりしちゃうでしょ?」
兄弟の中でも1番過保護だと思うのがこの兄有栖川 直哉 。あのあーんが好きな兄さまだ。有栖川家の長男で16歳。
耳まである父親譲りの黒い髪は天パなのだろう緩くパーマがかかっている。
そしてぱっちり二重の優しそうな目、王子様って感じだな。
「ゆう」
呼ばれた方に視線を移すと俺を真顔で見つめる三男 有栖川 寿人 12歳と目が合った。
他の兄達より短いその黒色のスポーティな髪型は整った顔の綺麗さを際立たせている。
正直謎な男ナンバーワンだ。
無口で終始真顔な寿人は何を考えているのか全く分からない。
「ひさと兄さまこんばんは」
ニコッと笑ってみせる。
「…………あぁ」
……
俺の笑顔返してっ……!!!!
「優!」
この少し高い声の主は唯一の姉、有栖川 茜15歳。
長身でスラッとしており長い髪を一つにまとめて後ろで結っている。
可愛いと言うより綺麗でかっこいいと言った方が正しい。
「姉さま!おかえりなさい!」
月都兄様から離れて姉様に抱きつくと俺を持ち上げて抱っこしてくれた。
……なんかいい匂いする…
「お利口さんにしていた?」
「はい!」
「そう。偉かったわね」
そう言うと優しく微笑んで頭を撫でてくれる。
姉様が帰ってくる時はいつもこれをしてくれる。俺はこれがすごく好きだ。
最近不思議に思ってる事がある。5歳の優に精神が引き寄せられている気がするのだ。
少し怒られたただけなのに何故か悲しくなって涙がでたり、撫でられたりキスされたりする事も記憶が戻った初めは羞恥心があったが今は嬉しいと思う程だ。
いつか俺の前世の大事な思い出がさっぱり消えて無くなるんじゃないかって思うことがある。
もし、そうなるのなら徐々に消えていくのではなく、一気に消えてくれた方が悲しくないだろう。
いや、こんな考えもうやめよう。
ブンブンと首を振り何も考えないようにした。
「優?大丈夫?」
心配そうに俺の顔を覗き込む姉様にニコリと笑う。
「だいじょーぶです!姉さま!ご飯たべましょ!」
今日は俺の大好きなステーキだ!!!
ワクワクしながら席に着いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ごちそうさまでした」
美味しかった
サシの入ってるお肉もいいけどやっぱり赤身の肉肉しい感じが好きなんだよなぁ
けど1つだけ不満があったとしたら肉が二切れしか食べられなかったこと。
直哉兄様が病人だからダメだって、俺以外みんなお肉なのに俺だけスープだけだった。
確かにスープ1杯位しか俺の胃には入らないけど流石に酷すぎる。そんなことをもんもんと考えていたら涙がでてきてそれに焦った直哉兄様が二切れだけくれたのだ。
……ケチ。
いや、この空気なら。
俺が泣いてソワソワしてるこの感じなら!
よし。この流れで外に出てもいいか聞いてみよう。
「母さま、兄さまたち、姉さま。おねがいしたいことがあります!」
「優ちゃん?珍しいわね!優ちゃんの願い事ならなーんでも聞いてあげるわ!」
「うん。そうだね!どんなお願いだい?」
嬉しそうに俺に聞く直哉兄様。
「あの、僕。お外にでたいです!」
ガチャン!!!!!
寿人兄様が手に持っていたフォークがお皿に落ちて大きな音がなった
シーン
え、まってなんでこんな静かになってんの?え?なんかみんな固まってない??
「あ、あ「ダメだ。」
寿人兄様の低い声がダイニングルームに響いた。
「優ちゃんごめんね。それは聞けないわ」
「だってさっきなんでもきくって!」
言ったじゃん!!!!
「お母様の言うとうりだよ。優はすぐ熱が出るんだから。お外に行ったらまたすぐ熱が出ちゃうよ?」
「…欲しいものがあれば私が買ってくるから。」
ほら言ってごらん?と姉様が俺の頭を撫でる
「……お外にいきたいんだもん……」
月都兄様は何か考えてるようで、もしかしたら外に出ることを考えてくれてるのかも!
「つきと兄さま!お外「優」
クスッ
「僕が許すと思ってるの?」
逆になんで許してくれないの?!
「なんでだめなの?!みんなはお外にでてるのに僕だけずっと家にいるの?おへやにずっといるのいやだ!」
玄関からある正門までの長い道の脇にはずっと綺麗なお花が沢山並んでいる。ここの庭はものすごく大きい。兄様達が何気なく通っているのをみると少し羨ましく感じる。
外に出れたらゲーセンとかコンビニ、ファストフード店にも行きたい。
……いつ出れるか分からないけど。
「ごめんね。みんなゆうが大切なんだ。ゆうが可愛くて可愛くて仕方ないんだよ。家にいるだけで熱が出ちゃうんだからお外に行って怪我でもしたら僕どうなるか分からない」
悲しそうに眉毛を下げる直哉兄様。
「優。だから大人しく部屋に居るんだよ」
そんな脅迫めいた月都兄様の目が怖くて今回は折れることにした。
いつまでたっても家を出れる気がしないんだが…
126
お気に入りに追加
2,185
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

弟は僕の名前を知らないらしい。
いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。
父にも、母にも、弟にさえも。
そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。
シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。
BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。

お前ら、、頼むから正気に戻れや!!
彩ノ華
BL
母の再婚で俺に弟が出来た。義理の弟だ。
小さい頃の俺はとにかく弟をイジメまくった。
高校生になり奴とも同じ学校に通うことになった
(わざわざ偏差値の低い学校にしたのに…)
優秀で真面目な子と周りは思っているようだが…上辺だけのアイツの笑顔が俺は気に食わなかった。
俺よりも葵を大事にする母に腹を立て…家出をする途中、トラックに惹かれてしまい命を落とす。
しかし目を覚ますと小さい頃の俺に戻っていた。
これは義弟と仲良くやり直せるチャンスなのでは、、!?
ツンデレな兄が義弟に優しく接するにつれて義弟にはもちろん愛され、周りの人達からも愛されるお話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
第12回BL小説大賞に参加中!
よろしくお願いします🙇♀️

ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる