上 下
24 / 30
俺好みの美少女に間違いない!

第24話 「旦那の未練」

しおりを挟む
「これは、いただけないわん」
「今日は会いたくなかったな」
「……」

 少女たちは臨戦態勢に移った。
 でも甲冑少女は剣を抜かず、柄を握り締めた状態で構えた。
 
 一方イマダンにはオジサンたちの同類が来たと警戒して、自分のお尻に手を当てて貞操を守る事に専念した。

「フォモー! フォモー!」

 よく聞くとまったく違う言葉だ。

 森の木々が騒ぎ、二メートルくらいの大男たちがいきなり現れた。
 皆んな髪がボサボサの髭づらで、服装などが町の住民とは違い、動物の毛皮で身を覆っていた。

 イマダンはお尻を押さえながら魔童女に聞いた。

「あ、あいつらはなんなんだよぉ?」

「ヤツらはフォモー族。
 この島の原人で乱暴な連中だ」

「ホ、ホ、ホモぅ……属性……」

 違うだろ、フォモー族だ。

「ら、乱暴者なの……」

 イマダンはお尻だけでなく、前も手で厳重に覆い隠した。
 さらに小動物のような弱々しい表情になって内股で彼らに身を震わせた。

 フォモー族の先行の三人が前に出て我々の様子をうかがっている。
 屈強な戦士風で尋常ならざる筋肉を見せつけている。
 手作り風な槍なんか持ってかなり怖そうだ。

 森の中にもかなりの数が潜んでいると思われる。
 戦闘になったらどうなる? 勝てるのか?

 屈強な戦士のうしろから小さい老人が、戦士の間を割って前に現れた。
 全身白髪の長い髪はうしろで縛り、長い髭も縛っており、身体中に数珠をたくさん付けたその姿はいかにも偉いリーダー的長老に見えた。
 彼は我々を待っているかのようにその場に留まっている。

「どうやら戦う気はないようだ……話がしたいようだ」

 魔童女はそう言うと甲冑少女と妖精っ娘を引き連れて、フォモー族の長老の元へ向かった。
 詩人少女とイマダンはその場に残り様子をうかがった。

「女の子だから……大丈夫だよね……」

 まだ勘違いしているイマダンは詩人少女のうしろに隠れるように身を引いた。

「フフフ……それは分からないけど、アナタは危ないかも知れないにゃん」

 含み笑いをする彼女は、イマダンがなにに勘違いしているか分かっているようだ。

「えええ~」

 危機を感じたイマダンは背中に背負ったG風の盾を股間に挟んでなんとか守ろうとあがいた。

 彼の事は別にどうでもいい、フォモー族との会話はどうなっている? ここまで話が聞こえないは不安に感じさせる。

 神様~! 教えて!
 神を呼んでみたが、もう現れない。
 やはり、あの会話で最後だったのだろう。
 別に寂しくはないがこの異世界の話や守護精霊が出来る事など、もっとヒントを教えて欲しかった。

 森の中から七、八人のフォモー族が出て来た。
 中には女性や子供、赤子までもいる。
 家族、いや集落ごと移動しているのか?
 我々と同じ年頃の女の子もいる。

 その女の子がこっちを見てる。
 笑顔だ、なかなかカワイイなんじゃないか。
 えっ、こっちに向かってこないか?
 歩きから走りに変わった? ジャンプしたぁ!

 女の子はかなりの距離をジャンプしてイマダンの前へと降り立った。
 そして彼の顔をジロジロ覗き込みながら聞いて来た。

「オマエ、『ダンナー』カ? ソレトモ、『ミレン』カ?」
 
 旦那? 未練? いったいなんの事だ?

「お、おれは旦那ではないが未練はある」
 
 いったいなんの未練だ?

「ン? ナニヲ言ッテイルカ?」

「にゃほん! わたしはミレン人で、彼はダンナー族にゃん」

 種族の事か! モトダンはダンナー族で詩人少女はミレン人と二人は違う種族なのか!
 どのくらい違う種族なのか、DNA的に?

「ソウカ、ダンナーカ」

 フォモー族の女の子は満足そうな笑みをこぼした。
 背丈は詩人少女より小さく、髪は赤毛で目は少しつり目だが、誰が見ても可愛いと思う女の子だ。
 彼女も毛皮を着ているがヘソ出しの着こなしはグッドだ。

「トコロデ、ナニシテルカ?」
 
 彼女はイマダンの股間に盾をガニ股で挟んだ着こなしを不思議がった。

「わっ!
 こ、これは、いい波を待っているサーファーのマネさぁ」

 この異世界では誰にも通用しない言い訳をした。

「フーン、マアイイワ!
 オマエ、ワタシノ旦那ニナラナイカ?」

「おれは旦那ではなく……え、え~!」

 今、彼女なんと言った⁉︎

「アソコニイルノ、皆ンナ家族ネ。
 旦那ニナル人イナイ。
 ダカラ、オマエ、ナッテ」

「ダ、ダ、ダ、ダンナって……旦那?」

 これはとんでもない急展開。

「一緒ニ子供、ツクロ」

 な、ナニを言ってるんだ、この少女は!
 イマダンはこの話を良く聞こうと股に挟んだサーフボードことG風の盾を脇に置き、前のめりになった。

「そ、それって、男同士じゃなくて、男と女で――」
「急には困るにゃん! 彼は大切な仲間にゃん」

 イマダンの危うい言葉を制して詩人少女はお断りを申した。
 彼の事を大切って思っていたのか……ならもう少し親切にして欲しい。
 イマダンも詩人少女の『大切な仲間』と言う言葉に感動しているようだ。

「オ、オッパイちゃん……嬉しい……」

 イマダンは彼女の事を心の中では、そう呼んでいたのか……でも本人の前で呼んだらダメだな……ザンネン。
 怒りで身体と胸を震わせた詩人少女は、その胸の谷間からステキな魔法のステッキを取り出してイマダンに向けた。

「マジックワンドよ、このスケベに光の鉄槌を与えよ!」

 ステキな魔法のステッキの先っちょからビームが飛び出た。

「キョピ!」

 今、ダンターの断末魔が聞こえたぞ!
 それと同時にイマダンのお尻から焼けた匂いがした。

「酷い! わたしの事、そんな風に思っていたんだ」

「ち、違うんだ!」

 違わないだろ、今のは弁解の余地はないな。

「おい、なんの話をしているんだ」

 魔童女たちが帰って来た。

「マタ、ワルい事したノ?」

 また、いつものパターンが始まる。
 これ様式美と言うやつだな。
 もうテンプレになって来た。

「ん~、この娘と子作りをしたいそうにゃん」

 詩人少女の話を聞いた三人は見る見る鬼の表情へと変貌した。

「キ、キ、キ、キサマ! 赤ちゃんはキャベツ畑から産まれるんだそ! 分かっているのか!」

 分かってないのは魔童女の君の方だ。

「ち、違うんだ!」

「アナタのコト、ズット信じていたのニ~」

 サイズの違う妖精っ娘とラブロマンスは出来るのか?

「ち、違うんだ!」

「くっ!」
 “カチャ、シュラシュラシュラ”

 今度の甲冑少女は剣を抜いてイマダンの首元に突き付けた。

 “ピキーン!”
「ひぃ~、ち、違うんだ!」

 今回は助からない、最終回だな、サラバ!
 俺は両手を合わせて合掌した。

「誤解なんだよ。
 き、き、君からもなにか言って!」

 イマダンはフォモー族の女の子に助けを求めた。
 いや、彼女に求めたら子作りの話が本当だってバレて、皆んなにボコボコにされるぞ。

 殺気だった現場を見てフォモー族の女の子は思わずのけ反った。

「ア、ア、ダーリン、ソレジャ、マタ!」

 彼女はイマダンを置いて、そそくさと仲間の元へ帰って行った。

「ダーリンってなんなノ!」

 妖精っ娘はイマダンの顔の前で腰に手を当てながら羽をブンブン鳴らしている。
 まさに激おこブンブンだ。

「ダーリンってなんだ?」

 魔童女はダーリンと言う意味が分からず聞いた。

 “ピキ、キーン!”

 甲冑少女は刃を縦から横に変えて、さらに突き付けた。
 この娘、顔が見えないから、どこまで本気なのか分からない。

 イマダンは動く事が出来ずに、放尿寸前の状態だ。
 いい加減、許して欲しいのだが……さすがにイマダンが可哀想になって来た。

「か、彼女とは大した話はしなかったにゃん。
 ただ、変なポーズをしてたから気になっていたみたいにゃん」

 詩人少女のフォローに甲冑少女は剣を収めた。

「そうだ、なんで股を前と後ろから押さえていたんだ?」

「そ、それは……」

 怖い男たちから貞操を守っていたなんて言えないもんな。

「はは~ん、もしやひとりではトイレに行けないんだろ。
 恥ずかしがるな、虫やヘビ、悪い妖精が出て来てトイレって怖いよな。
 オレだって最近までバアヤに付き添ってもらっていたからな。
 分かる分かる、処理魔法が使えるようになってようやくひとりで出来るようになったんだ。
 魔法がまだ使えないオマエには荷が重いがひとりでやって来い」

 長い台詞の中に魔童女の恥ずかしい過去話が散りばめられていたが、処理魔法という新しいパスワードが出たぞ。
 おそらくトイレに行かなくても魔法で済ませてしまう事のようだ。
 つまり、彼女たちは昭和のアイドルのようにトイレに行かない存在なのだ。

「ち、違うんだ……」

「違うにゃん。
 そんな事よりフォモー族との会話を知りたいにゃん」

 詩人少女、ナイス!
 やっと話題を切り替えられる。
 俺もどんな話なのか知りたい。

「うむ、ヤツらも悪い妖精のボスに手こずっていたみたいだ。
 なにやら彼らは妖精を殺さずの誓いを立てていたようだ。
 それでオレ達にボスを倒して欲しいとの事。
 なにやら倒した暁には、ご褒美を与えると言っていたぞ」

「ご褒美……フフッ」

 詩人少女はイマダンを見てまた含み笑いをした。
 ご褒美ってひょっとしてあの女の子の事じゃないだろうな。
 ボス戦に勝ったら、またひと波乱起きるぞ、コレ。

「ん?」

 イマダンにはなんの事が分からないようだ。

「時間を喰ってしまったな、出発だ」

 魔童女の合図に一行は再び歩き出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

処理中です...