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第二章~自由の先で始める当て馬生活~
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程なくして戻ってきたエリンとオーリーは、険悪な雰囲気を醸し出していた。
行く時はあんなに良い雰囲気だったのに。
「あんたのせいで、二人ともどっか行ったんじゃない!」
エリンがオーリーに食ってかかる。
エリンはもっと早く戻ってくるつもりで、だけれど、何らかの原因で遅れて、エリンはオーリーに責任があると言っているみたい。
それだけイヴが心配だったということになる。
けれど、私は帰って来るのが遅いとは思ってなかった。
何なら、もう少し時間が欲しかったくらい。
「通信機で連絡しておけばよかっただろ」
オーリーは自分ばかりの責任ではないとでも言いたそう。
「今日は置いてきたの!そう言うなら、オーリがすれば良かったじゃん!」
「俺もこんなに遅くなるとは思ってなかったんだよ」
「やっぱり遅くなったって思ってる!」
「今それを言ったところで何にもならんだろうが。俺はすぐ終わるっていうからだな……」
「どうせ、お礼こ品に釣られたんでしょう?女の子に人気だって言ってし」
「うっせ、お袋にどうかと思っただけだ」
「どうだか、女をたらし込むのに余念がないオーリーの事だから…」
「だから、ちげぇって……」
こんな二人の様子を、私とイヴは建物の影からこっそりと伺っていた。
どうして喧嘩してるのかしら。
これはアレだったら良いのだけれどね。
ほら、アレというは、オーリーが女の子に色目を使ったので、エリンが嫉妬してるという。
「ねぇ、イヴ?あの二人は、二人の時にはいつもあんな感じなの?」
私は付きいも浅い。二人の関係なんて、ほとんどイヴに言いた事だもの。
私、こんな二人、知らないもの。
ただ、イヴも戸惑っている様子だった。小さく唸り首をひねる。
「少し前までは会話もなかったし、関係が悪くなる前も、あんな風ではなかったし……エリンがあんな風に嫉妬してるの初めて見たかも」
「やっぱり嫉妬してる様に見えるわよね?初めて?嫉妬が?見たのが?」
「嫉妬自体は初めて……ではない。これまではこう……黙って耐える感じで……」
「では、これはきっと進歩ね」
私は思わず笑みを零した。
「これが?」
イヴは小声で「美しくなる?」なんて呟いている。
イヴの言いたい事は分かるわ。
エリンったら怖い顔で女ったらしとかスケコマシとか、過激な事を言ってる。表面だけ見れば、品性がなくなったと言っても良い。
「エリンの心が変わったというのが大事なの。前向きになるわ」
オーリーを中心に考えていた自分からの脱却。視界が広がれば、おのずと良い方向へ向かう。
何にせよ、エリンがオーリーに対して遠慮がなくなっているのは、状況が変わっている証拠。
まずは、何がきっかけ出こうなったのかを知りたいわ。
内容によってはアプローチの仕方を変えなくてはいけないもの。
発破をかけてみようかしら。オーリーから引き離すのも悪くないわね。
「イヴ?」
「何?」
私がイヴに声をかける。イヴはやっぱり難し顔をしたまま。
「私がオーリーに近づくから、イヴはエリンの反応を見てくれる?」
「え?ちょっ…!」
私はイヴの返事を待たずに飛び出した。
「オーリー!エリン!お帰りなさい」
「アイ!見えないからどこに行ったのかと思った」
「あの影で休んでたの」
私が指を指すと、イヴが覗かせていた顔に苦笑いを浮かべる。
私は早く薬を渡してあげてと、エリンを促す。それでエリンがイヴに薬を渡したところで、話のきっかけを投下した。
「そういえば薬が見つからなかったの?大変だったのね」
「そうだった。聞いて、オーリーってば早くイヴに薬を届けないと行けないっていうのに、アンケートに答えてさ」
「あれはしつこかったからだろうが。それならさっさと答えたほうが早いて思って」
「景品のお茶が欲しかったんでしょう?女の子にプレゼン……」
「エリン!てめ、適当な事を言うな。違うって言ってんだろ」
また、エリンとオーリーが睨み合う。先にエリンが顔を逸らした。イヴに薬飲めた、なんて尋ねている。
オーリーの方は大きくため息を吐くと、頭を乱暴に掻きむしった。
私の視線に気が付くと、ばっとこちらに向き合った。
「違うからな!?」
「何が?」
「だ、だから女に……とか、エリンがさっき言った事……」
オーリーは言いにくそうに、けれど必死に言い訳を始めた。
モゴモゴとしてはっきり言わないのは、後ろめたいからかしら。オーリーに限っては、異性関係で恥ずかしがるはずもない。
ただ、言い訳する相手は、エリンでもイヴでもなく私。
それを踏まえて、私はどうするべきかしらね。
「ねぇ、オーリー?」
エリンが私たちを見ているのを見計らって、オーリーに声をかけた。
これ見よがしにオーリーに体を近づけ、彼の逞しい二の腕に手をかざす。
「さっき言ってたプレゼントって何?」
エリンの角度からは、本当に触れている様に見えたのたと思う。オーリーは困った様に顔をしかめるのが、ちょっとだけだけ面白い。
本当に悪女になった気分だわ。
「アイ!」
オーリーが口を開くより前に、エリンが怒鳴り声にも近い大きな声で私を呼んだ。
けれど、次の言葉が出てこない。エリンが私の手を引いて、強引にオーリーから引き離した。
エリンの顔に焦って言いましたって書いてある。
明白なのは、エリンが私とオーリーを近づけたくないと考えているという事。
正直言うと、少しだけ驚いた。
「どうしたの?」
私が首を傾げ尋ねると
「甘い香りのお茶、貰ったの。私も持ってるから」
エリンが言った。
この時のエリンは、どちらかというと照れている様にも見えてた。相手は私なのにね
私はついつい、妙な事になってはいないか余計な心配をしてしまう。あるはずないわ。
エリンの頬に朱が指した様に見えたのは、きっと気のせい。
だからオーリーもエリンを睨まないで。
エリンも何故睨み返すの?
エリン? あなたはオーリーが好きで合ってるのよね?
行く時はあんなに良い雰囲気だったのに。
「あんたのせいで、二人ともどっか行ったんじゃない!」
エリンがオーリーに食ってかかる。
エリンはもっと早く戻ってくるつもりで、だけれど、何らかの原因で遅れて、エリンはオーリーに責任があると言っているみたい。
それだけイヴが心配だったということになる。
けれど、私は帰って来るのが遅いとは思ってなかった。
何なら、もう少し時間が欲しかったくらい。
「通信機で連絡しておけばよかっただろ」
オーリーは自分ばかりの責任ではないとでも言いたそう。
「今日は置いてきたの!そう言うなら、オーリがすれば良かったじゃん!」
「俺もこんなに遅くなるとは思ってなかったんだよ」
「やっぱり遅くなったって思ってる!」
「今それを言ったところで何にもならんだろうが。俺はすぐ終わるっていうからだな……」
「どうせ、お礼こ品に釣られたんでしょう?女の子に人気だって言ってし」
「うっせ、お袋にどうかと思っただけだ」
「どうだか、女をたらし込むのに余念がないオーリーの事だから…」
「だから、ちげぇって……」
こんな二人の様子を、私とイヴは建物の影からこっそりと伺っていた。
どうして喧嘩してるのかしら。
これはアレだったら良いのだけれどね。
ほら、アレというは、オーリーが女の子に色目を使ったので、エリンが嫉妬してるという。
「ねぇ、イヴ?あの二人は、二人の時にはいつもあんな感じなの?」
私は付きいも浅い。二人の関係なんて、ほとんどイヴに言いた事だもの。
私、こんな二人、知らないもの。
ただ、イヴも戸惑っている様子だった。小さく唸り首をひねる。
「少し前までは会話もなかったし、関係が悪くなる前も、あんな風ではなかったし……エリンがあんな風に嫉妬してるの初めて見たかも」
「やっぱり嫉妬してる様に見えるわよね?初めて?嫉妬が?見たのが?」
「嫉妬自体は初めて……ではない。これまではこう……黙って耐える感じで……」
「では、これはきっと進歩ね」
私は思わず笑みを零した。
「これが?」
イヴは小声で「美しくなる?」なんて呟いている。
イヴの言いたい事は分かるわ。
エリンったら怖い顔で女ったらしとかスケコマシとか、過激な事を言ってる。表面だけ見れば、品性がなくなったと言っても良い。
「エリンの心が変わったというのが大事なの。前向きになるわ」
オーリーを中心に考えていた自分からの脱却。視界が広がれば、おのずと良い方向へ向かう。
何にせよ、エリンがオーリーに対して遠慮がなくなっているのは、状況が変わっている証拠。
まずは、何がきっかけ出こうなったのかを知りたいわ。
内容によってはアプローチの仕方を変えなくてはいけないもの。
発破をかけてみようかしら。オーリーから引き離すのも悪くないわね。
「イヴ?」
「何?」
私がイヴに声をかける。イヴはやっぱり難し顔をしたまま。
「私がオーリーに近づくから、イヴはエリンの反応を見てくれる?」
「え?ちょっ…!」
私はイヴの返事を待たずに飛び出した。
「オーリー!エリン!お帰りなさい」
「アイ!見えないからどこに行ったのかと思った」
「あの影で休んでたの」
私が指を指すと、イヴが覗かせていた顔に苦笑いを浮かべる。
私は早く薬を渡してあげてと、エリンを促す。それでエリンがイヴに薬を渡したところで、話のきっかけを投下した。
「そういえば薬が見つからなかったの?大変だったのね」
「そうだった。聞いて、オーリーってば早くイヴに薬を届けないと行けないっていうのに、アンケートに答えてさ」
「あれはしつこかったからだろうが。それならさっさと答えたほうが早いて思って」
「景品のお茶が欲しかったんでしょう?女の子にプレゼン……」
「エリン!てめ、適当な事を言うな。違うって言ってんだろ」
また、エリンとオーリーが睨み合う。先にエリンが顔を逸らした。イヴに薬飲めた、なんて尋ねている。
オーリーの方は大きくため息を吐くと、頭を乱暴に掻きむしった。
私の視線に気が付くと、ばっとこちらに向き合った。
「違うからな!?」
「何が?」
「だ、だから女に……とか、エリンがさっき言った事……」
オーリーは言いにくそうに、けれど必死に言い訳を始めた。
モゴモゴとしてはっきり言わないのは、後ろめたいからかしら。オーリーに限っては、異性関係で恥ずかしがるはずもない。
ただ、言い訳する相手は、エリンでもイヴでもなく私。
それを踏まえて、私はどうするべきかしらね。
「ねぇ、オーリー?」
エリンが私たちを見ているのを見計らって、オーリーに声をかけた。
これ見よがしにオーリーに体を近づけ、彼の逞しい二の腕に手をかざす。
「さっき言ってたプレゼントって何?」
エリンの角度からは、本当に触れている様に見えたのたと思う。オーリーは困った様に顔をしかめるのが、ちょっとだけだけ面白い。
本当に悪女になった気分だわ。
「アイ!」
オーリーが口を開くより前に、エリンが怒鳴り声にも近い大きな声で私を呼んだ。
けれど、次の言葉が出てこない。エリンが私の手を引いて、強引にオーリーから引き離した。
エリンの顔に焦って言いましたって書いてある。
明白なのは、エリンが私とオーリーを近づけたくないと考えているという事。
正直言うと、少しだけ驚いた。
「どうしたの?」
私が首を傾げ尋ねると
「甘い香りのお茶、貰ったの。私も持ってるから」
エリンが言った。
この時のエリンは、どちらかというと照れている様にも見えてた。相手は私なのにね
私はついつい、妙な事になってはいないか余計な心配をしてしまう。あるはずないわ。
エリンの頬に朱が指した様に見えたのは、きっと気のせい。
だからオーリーもエリンを睨まないで。
エリンも何故睨み返すの?
エリン? あなたはオーリーが好きで合ってるのよね?
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