65 / 124
第一章~王女の秘密~
52~マンナ~
しおりを挟む
城下町から煙が立ち上っていると報告を受けた時、本心を言って良いのなら、マンナはすぐに城を飛び出したかった。
だが、王女の護衛を担っている以上、仮とはいえ王女の側を離れるわけには行かず、まずマンナは、王女を緊急避難用の隠し部屋へと連れていった。
隠し部屋では、すでに王妃が付き人や侍女たちと共に籠っていた。行動が早いところを見るに、初めの煙が上がった時点で動いたのかもしれない。
王女を侍女に託すと、マンナはすぐに国王の元へ向かった。指示を受けるためだ。
どんな指示を受けるかは分かっていた。国王が我が子を見捨てるはずがないのだ。
マンナは城の廊下を、わき目も振らず駆け抜けた。すでに城の者たちは異常事態に備えるべく動いており、いつもは静かな城内も、今はどこか緊張感に包まれ騒がしい。
マンナは走りながら、愛用のグローブを手に嵌めた。正しく城を出るのが煩わしかったのか、普段ドレスらしく見せている巻きスカートをはぎ取ると、そのまま三階の窓を突き破り外へ飛び出した。
「開門準備!マンナ・バニール、出る!」
城門の前に集まっていた兵士たちは、突然響き渡った声に何事かと周囲を見渡した。内一人が空を指さし、釣られた兵士たちが、落ちてくるマンナの軌跡を目で追いながら、慌てた様子で場所を開ける。
彼等の中でも素早かったのは、古参の兵士たちだ。
マンナは今でこそ、アイナの乳母で側仕えという立ち位置にあるが、かつて国内外に名を轟かせた高名な魔法師だった。若い者たちは知らなくとも、マンナの活躍を覚えている兵士も少なくない。
そのマンナが門を開けろと言っているのだ。すぐさま指示が出された。
地面に着地したマンナが走ってくると、彼女の勢いを殺さない様、門戸の脇に備え付けられた小さな扉が開かれた。そうしなければ、正門ごと突き破りかねないと知っているのだ。
マンナは魔法師だったが同時に格闘家でもあり、戦いの場においては、敵味方問わず狂戦士と呼ばれるほど恐れられた存在だった。
現在のマンナにそこまでの狂気はない。母となり乳母となり過ごしている内に、彼女の棘は殆ど目立たなくなっていた。
なので、もしも門が空いていなかったとしても、数秒くらいは待てただろう。
城から城下町へと続く道は、得体の知らない者達であふれていた。
城壁を登り、門を破ろうと魔法が放たれる。そんな中にマンナが飛び出して来た。
彼らは黒い装束に身を包み、装束の間から唯一覗く目が、ぎょろりと一斉にマンナに向けられる。
「マンナ・バニールだ!」
一人が高らかに声をあげた。
城門の近くに陣取っていた黒装束たちが、マンナに一度に襲い掛かってくる。
中には逆に距離を取る者や、躊躇している者も何名かいたが、それは先ほどの叫びの意味を正しく理解している者達だろう。
魔法師たちが持つ杖には魔力を溜めておく為の魔石と、魔力を込めるだけで魔法が発動できる術式が予め刻まれている。
いかに先手を打ち魔法を展開するかが勝敗を握る事も多く、古今を問わず魔法師たちに支持されているやり方だ。
もちろんマンナも同様だった。ただ彼女の場合、杖の形をしていないだけのこと。
武器を持たず飛び出してきたように見えてしまうのがいけなかった。
マンナ目掛けて放たれた魔法は、ことごとく術者に跳ね返され、武器を振りかざし襲い掛かってきた者達は、マンナに攻撃の手が届く前に、血を噴き出し倒れた。
銃のような遠距離からの攻撃であっても、弾丸はマンナに届く遥か手前で弾け、近くの味方に当たった。
何をしても彼女に攻撃は届かないし、どれだけ離れていても彼女の攻撃は当たるのだ。
「私は急いでるの。道を開けなさい‼」
マンナが吠えた。その眼光だけで人を殺せそうだ。
彼女が現れ、ものの数秒で十数人もの仲間が倒れた。マンナがにらみを利かせながら歩くだけで、黒装束たちは、一定の距離を取りつつ後退していく。
そんなマンナの前に、一人の男が立ちはだかった。やはり覆面をしている。しかし、マンナと比べても背は低く、だが、体つきを見る限り子供ではなさそうだった。
マンナは男の異様さに気が付き、拳を握り直し構えた。男からは殺気を微塵も感じられないのにも関わらず、濃い血の匂いが漂ってくる。
マンナは目の前の男を睨み付ける。彼は間違いなく手練れているし、現役だろう。ブランクのある自分が相手になるのか、不安がジワリと沁み出す。
けれどやるしかないのだ。
城襲うような連中の中に、こんな手練れがいるのが実に気に入らない。
仮に彼らが国を掌握したとして、豊かになる未来が想像もつかなかった。
「アイナ様の未来に、お前のような者達はいらないの」
背後から爆破音とそれに伴う爆風が吹き抜け、猛々しい雄たけびが聞こえた。城門が破られたのだろう。
だが……いや、だからこそだ。マンナは目の前の男を倒しアイナの元へ駆けつける、その一点のみに集中した。
先に行動を起こしたのは男の方だった。
極めて小声で呪文を紡ぎながら、マンナに向かい駆けだす。マンナはいつもようにグローブに仕込んである魔法を発動させた。これで男の魔法も他と同じようにマンナには届かず、男自身も血を流し倒れるはずだった。
だが、消されたのはマンナの魔法のだった。同時に、稲妻でも落ちたのかと思う程の痛みと衝撃がマンナを襲う。
並みの人間であれば死んでいたかもしれない。お守りを持っていなければ、マンナでもどうなっていたのか解らない。
マンナは随分と久しぶりに、自分がいつも首から下げているペンダントの存在を思い出した。これが最後に発動したのは16年程前だ。
あの時は襲われたアイナをかばい、代わりに魔法を受けたのだ。その後は、己の未熟さを恥じ、訓練に勤しんだものだ。今回も同じようになるだろう。
「化物が……」
男が苦々しく言った。
間違いなく魔法が直撃したのにも関わらず、転ぶどころかふらつきさえしない、マンナはまさに化物と呼ぶのに相応しい。
つい口から突いて出てしまったのだろう。男は唇を噛みしめ、己の失態に冷や汗を流した。
「お国へ帰らなくて良いのかい? 坊や?」
男の発した言葉はオワリノ国の物ではなく、外国の、しかも、執拗なる英知神大陸で広く使われているものだ。外国の手練れとなれば、国内の者相手するのとは訳が違う。下手したら長くなりそうだ。
「私は私の制限をすべて解除する」
初めから全力でやるしかない。マンナは普段は抑えている力を、解放するためのキーワードを口にした。
普段はカールががかった白い髪を、リボンで纏めているだけのマンナだが、本来の姿はそうではない。本来の彼女は、筋肉質だがシャープな出で立ちで、頭に大きな、後ろへカールした二本の角を持つ。
男もマンナを変化させまいとしたのだ。だが、マンナが新たに張った結界が男の魔法を掻き消し、どんな刃も弾も通さなかった。
マンナが自身の制限を解除するキーワードを発する前に、すでに結界を張っていたのだろうが、それがいったいいつなのか、男には全くわからなかった。
打開策を打ち出せず、焦る男にマンナが追い打ちをかける。
「水を、雷を、風を」
それらすべてが一度に男を襲い、男も悟った。
死ぬ気でやらないと、やられてしまうと。
彼の自国ではトップクラスの実力を持つ魔法師だったが、それでもマンナ・バニールは簡単に勝てる程甘くない。狂戦士と呼ばれた彼女の実力は、老いても尚健在なのだと、思い知らされる。
これは、大勢の人々をも巻き込んだ、実に八時間以上にも及ぶ死闘への幕開けだった。
後にこの夜の事件は、オワリノ国にとって最大の転機として歴史書に記されることになる。
だが、王女の護衛を担っている以上、仮とはいえ王女の側を離れるわけには行かず、まずマンナは、王女を緊急避難用の隠し部屋へと連れていった。
隠し部屋では、すでに王妃が付き人や侍女たちと共に籠っていた。行動が早いところを見るに、初めの煙が上がった時点で動いたのかもしれない。
王女を侍女に託すと、マンナはすぐに国王の元へ向かった。指示を受けるためだ。
どんな指示を受けるかは分かっていた。国王が我が子を見捨てるはずがないのだ。
マンナは城の廊下を、わき目も振らず駆け抜けた。すでに城の者たちは異常事態に備えるべく動いており、いつもは静かな城内も、今はどこか緊張感に包まれ騒がしい。
マンナは走りながら、愛用のグローブを手に嵌めた。正しく城を出るのが煩わしかったのか、普段ドレスらしく見せている巻きスカートをはぎ取ると、そのまま三階の窓を突き破り外へ飛び出した。
「開門準備!マンナ・バニール、出る!」
城門の前に集まっていた兵士たちは、突然響き渡った声に何事かと周囲を見渡した。内一人が空を指さし、釣られた兵士たちが、落ちてくるマンナの軌跡を目で追いながら、慌てた様子で場所を開ける。
彼等の中でも素早かったのは、古参の兵士たちだ。
マンナは今でこそ、アイナの乳母で側仕えという立ち位置にあるが、かつて国内外に名を轟かせた高名な魔法師だった。若い者たちは知らなくとも、マンナの活躍を覚えている兵士も少なくない。
そのマンナが門を開けろと言っているのだ。すぐさま指示が出された。
地面に着地したマンナが走ってくると、彼女の勢いを殺さない様、門戸の脇に備え付けられた小さな扉が開かれた。そうしなければ、正門ごと突き破りかねないと知っているのだ。
マンナは魔法師だったが同時に格闘家でもあり、戦いの場においては、敵味方問わず狂戦士と呼ばれるほど恐れられた存在だった。
現在のマンナにそこまでの狂気はない。母となり乳母となり過ごしている内に、彼女の棘は殆ど目立たなくなっていた。
なので、もしも門が空いていなかったとしても、数秒くらいは待てただろう。
城から城下町へと続く道は、得体の知らない者達であふれていた。
城壁を登り、門を破ろうと魔法が放たれる。そんな中にマンナが飛び出して来た。
彼らは黒い装束に身を包み、装束の間から唯一覗く目が、ぎょろりと一斉にマンナに向けられる。
「マンナ・バニールだ!」
一人が高らかに声をあげた。
城門の近くに陣取っていた黒装束たちが、マンナに一度に襲い掛かってくる。
中には逆に距離を取る者や、躊躇している者も何名かいたが、それは先ほどの叫びの意味を正しく理解している者達だろう。
魔法師たちが持つ杖には魔力を溜めておく為の魔石と、魔力を込めるだけで魔法が発動できる術式が予め刻まれている。
いかに先手を打ち魔法を展開するかが勝敗を握る事も多く、古今を問わず魔法師たちに支持されているやり方だ。
もちろんマンナも同様だった。ただ彼女の場合、杖の形をしていないだけのこと。
武器を持たず飛び出してきたように見えてしまうのがいけなかった。
マンナ目掛けて放たれた魔法は、ことごとく術者に跳ね返され、武器を振りかざし襲い掛かってきた者達は、マンナに攻撃の手が届く前に、血を噴き出し倒れた。
銃のような遠距離からの攻撃であっても、弾丸はマンナに届く遥か手前で弾け、近くの味方に当たった。
何をしても彼女に攻撃は届かないし、どれだけ離れていても彼女の攻撃は当たるのだ。
「私は急いでるの。道を開けなさい‼」
マンナが吠えた。その眼光だけで人を殺せそうだ。
彼女が現れ、ものの数秒で十数人もの仲間が倒れた。マンナがにらみを利かせながら歩くだけで、黒装束たちは、一定の距離を取りつつ後退していく。
そんなマンナの前に、一人の男が立ちはだかった。やはり覆面をしている。しかし、マンナと比べても背は低く、だが、体つきを見る限り子供ではなさそうだった。
マンナは男の異様さに気が付き、拳を握り直し構えた。男からは殺気を微塵も感じられないのにも関わらず、濃い血の匂いが漂ってくる。
マンナは目の前の男を睨み付ける。彼は間違いなく手練れているし、現役だろう。ブランクのある自分が相手になるのか、不安がジワリと沁み出す。
けれどやるしかないのだ。
城襲うような連中の中に、こんな手練れがいるのが実に気に入らない。
仮に彼らが国を掌握したとして、豊かになる未来が想像もつかなかった。
「アイナ様の未来に、お前のような者達はいらないの」
背後から爆破音とそれに伴う爆風が吹き抜け、猛々しい雄たけびが聞こえた。城門が破られたのだろう。
だが……いや、だからこそだ。マンナは目の前の男を倒しアイナの元へ駆けつける、その一点のみに集中した。
先に行動を起こしたのは男の方だった。
極めて小声で呪文を紡ぎながら、マンナに向かい駆けだす。マンナはいつもようにグローブに仕込んである魔法を発動させた。これで男の魔法も他と同じようにマンナには届かず、男自身も血を流し倒れるはずだった。
だが、消されたのはマンナの魔法のだった。同時に、稲妻でも落ちたのかと思う程の痛みと衝撃がマンナを襲う。
並みの人間であれば死んでいたかもしれない。お守りを持っていなければ、マンナでもどうなっていたのか解らない。
マンナは随分と久しぶりに、自分がいつも首から下げているペンダントの存在を思い出した。これが最後に発動したのは16年程前だ。
あの時は襲われたアイナをかばい、代わりに魔法を受けたのだ。その後は、己の未熟さを恥じ、訓練に勤しんだものだ。今回も同じようになるだろう。
「化物が……」
男が苦々しく言った。
間違いなく魔法が直撃したのにも関わらず、転ぶどころかふらつきさえしない、マンナはまさに化物と呼ぶのに相応しい。
つい口から突いて出てしまったのだろう。男は唇を噛みしめ、己の失態に冷や汗を流した。
「お国へ帰らなくて良いのかい? 坊や?」
男の発した言葉はオワリノ国の物ではなく、外国の、しかも、執拗なる英知神大陸で広く使われているものだ。外国の手練れとなれば、国内の者相手するのとは訳が違う。下手したら長くなりそうだ。
「私は私の制限をすべて解除する」
初めから全力でやるしかない。マンナは普段は抑えている力を、解放するためのキーワードを口にした。
普段はカールががかった白い髪を、リボンで纏めているだけのマンナだが、本来の姿はそうではない。本来の彼女は、筋肉質だがシャープな出で立ちで、頭に大きな、後ろへカールした二本の角を持つ。
男もマンナを変化させまいとしたのだ。だが、マンナが新たに張った結界が男の魔法を掻き消し、どんな刃も弾も通さなかった。
マンナが自身の制限を解除するキーワードを発する前に、すでに結界を張っていたのだろうが、それがいったいいつなのか、男には全くわからなかった。
打開策を打ち出せず、焦る男にマンナが追い打ちをかける。
「水を、雷を、風を」
それらすべてが一度に男を襲い、男も悟った。
死ぬ気でやらないと、やられてしまうと。
彼の自国ではトップクラスの実力を持つ魔法師だったが、それでもマンナ・バニールは簡単に勝てる程甘くない。狂戦士と呼ばれた彼女の実力は、老いても尚健在なのだと、思い知らされる。
これは、大勢の人々をも巻き込んだ、実に八時間以上にも及ぶ死闘への幕開けだった。
後にこの夜の事件は、オワリノ国にとって最大の転機として歴史書に記されることになる。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる