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第一章~王女の秘密~
51~ジージール4~
しおりを挟むジージールの死角で、じっと気配を殺していた輩がいた。
ジージールの張った結界を破り、一番始めにアイナに襲いかかった、反王政過激派の者たちだ。
ジージールと覆面連中との戦闘を観察していた一人が懐から銃を取り出すと、仲間に合図を送った。
物理攻撃を示すサインを受け取った仲間たちは、各々の武器や、砕けた石柱の欠片やらを握り締め頷いた。
ジージールはというと、覆面たちを拘束している所だった。石柱の破片を使い、覆面たちを一まとめにし首だけを出して、石の中に閉じ込めようとしている。
ジージールは作業をしながら、破片が足りない事に気が付いた。
しかし、早くアイナを追いかけたいと気が急いていたのもある。ジージールが危険性に気が付く前に、銃口か火を吹いた。
ーーパァァァン!!!ーー
夜の冷たい空気をつんざく銃声と、火薬の臭いが辺りに立ち込め、ジージールは腹を押さえながら地に落ちた。
しまった、魔法が消えた。
魔法とは魔力の流れを制御できて初めて扱えるのだ。
腹を銃で打たれたジージールは気を乱され、必然的に魔法が、飛んでいた魔法と魔力を吸収する魔法が解除されてしまったのだ。
ジージールを擁護するのなら、彼は魔法師としての腕は決して低くない。
通常の魔法に加え、一族に伝わる精霊もある。むしろ、総合的に見て、国内でも指折りに入るだろう。だが、そこに傲りがなかったのかと問われれば、否めない部分もある。
精霊と同化している状態のジージールには、自分以外の魔法が効きづらい。
何もしなくても、魔法を使いジージールを傷つけるのは至難の技だし、それはたとえ、ジージールより巧みに魔法を扱う者であっても困難を極めるだろう。
ジージールを容易く傷つけるには、それこそ神の力か、刃物や槌などで直接攻撃するしかなかった。なのでジージールは、常に服の下に防護用のベストとパンツを着込み、大事な所を守ってきた。
襲われても悠然と飛んでいるジージールは、普通の者たちには奇妙に映っただろう。覆面たちとの戦闘は、魔法によほどの自信があるのだと、思わせるには十分だったのだ。
だから、敵も迷わず、最近開発されたばかりの最新式の銃を取り出した。まだ、この天裂く縁の母神大陸には流通していない代物だ。
昔ながらの被弾して初めて発動する魔法が仕込まれた弾薬と、 これまでにない威力で発射できる銃は、簡単にジージールの防護用ベストを貫通し肉を抉った。
ただ、精霊の加護のおかげでか、動きを縛る魔法は発動しなかったが、ジージールも無駄に動かなかった為に、彼らがそれを知る由はない。
おかげでジージールは命拾いしたのだが、依然として危機的状況に置かれている事にはかわりなかった。
二発、三発と弾丸が打ち込まれる
。
「あ゛あ゛ぁ ぁ ぁっ」
ジージールは悲鳴を上げて、地面の上を転がった。
ジージールの黒髪が自身の血と砂利にまみれる。
「この男がカラス羽であれば、魔法具を身に付けているはずだ」
「焦るな、まずは確実に息の根を止めよう」
「こんなのがいたのではおちおち革命もしてられない。後の世の為にも消えてもらおう」
建物の影から黒装束の者たちが幾人か現れた。
銃を構えている者が一人、それ以外は石柱の破片や短刀など、バラバラの武器を構えている。
ジージールは這いながら、彼らから離れようとした。それ見た彼らは、魔法に抗い多少動けた所で逃れるのは土台無理な話だ、ジージールを指を指し嘲笑した。
ふん、笑ってろ。決して逃げる為じゃない。ジージールは再び、異様な響きの言葉を口にした。
『kakemakumo kasikoki omikamiwo ogamimaturite kasimi mausu warenitamaisi saino kareno moteru kakerawo haretu sasetamaitaku kasikomi mausu
』
長い言葉の羅列を理解できる者は一人もいなかったが、何かを仕掛けてくるのだろうと、魔法を無効化するだけの術式を紡ぎ、警戒するが結局は無駄に終わった。しかしそれはジージールのその力が彼らの魔法より遥かに強力で、別次元の力だっただけの事だ。
突然、敵の持つ石柱の破片が破裂した。さらに細かに尖った破片が、彼らの目や皮膚に食い込み、血を流させた。
しかしこの破片、四方八方に飛び散った為に、ジージールにも刺さっていた。ただ身を低くしていた為に、目などの柔らかい部分は守られた。
ジージールはこの期を逃さなかった。
腰に指していた短剣を抜くと、次々と敵の喉を切っていったのだ。
流れるように縄を引き出すと一人だけ、一瞬にして縛り上げた。引き倒し、声を上げた所に、口に靴の先ををこじ入れる。
血を流しすぎた。カクを呼び出し、アイナの警護に向かわせた方がよいだろう。
ジージールは深いため息を吐いた。
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