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第一章~王女の秘密~

26.5 ~アイナ~

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 苦しくて……苦しくて……苦しくて……苦しくて


 あなたを愛しただけなのに、どうして、こうも苦しいの


 白い髪に黒い瞳、お父様とそっくりな、その姿


 知らずに、素敵だと思った


 初めての恋だと思った


 けれど今は、そんなあなたが狂わしい程、憎らしい。


 だって、知ってしまったから


 あなたこそが本物であると、解ってしまったから   嫉妬が我が身を焦がした



 あなたがぬくぬくと愛情を注がれている時、王女たる私は父と母の目の届かぬ所で、歯を食いしばり、剣を振るい


 あなたがお父様とお母様に守られている時、王女たる私は戦士として魔獣と対峙していた


 あなたの代わりに、尊き王子の代わりに、私は私の知らぬところで、私を捨てざる得なかった




 あなたが王子でなければ、何だって良かった


 例え、あなたと私が実の兄弟だったとしても
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 例え、私が王女として憎らしい男と結婚し、あなたは私ではない誰かの手を取ったとしても、その方がまだましだった



 愛したあなたを憎まなくて良いなら、その方がきっと幸せだった



 あなたを愛しているのに、殺したくて


 王子の死を望んでいるのに、あなたを愛しているが故にできなくて


 それでもわたしは、王子あなたの心臓に刃を付きたてたくて



 確かに、あなたを愛しているのに

 

 憎しみから動けない我が身が、腹立たしくて



 呪わしくて



 苦しい



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