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第一章~王女の秘密~
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見つけた場所は、訓練場を見下ろせる位置にある、訓練所内の建物の二階。
その部屋の窓から訓練場全体が見渡せる。
本館の二階と外通路で繋がるその建物の一階は、普段控え室として利用し簡単な治療が出きるようになっているけれど、二階は特に使い道もなく、物置になっている。
しかも一階には兵士が控えているという油断からか、特に侵入者対策などはなく、単純は鍵がかけられているだけ。
なので、私も単純な方法で部屋の中に入る。どうやるかというと…………
「ふん!」
私はドアノブを握り絞めると、力任せに捻りもぎ取った。
私のようなカラス羽は魔法が使えないとされているけれど、正確にいえば、魔法が使えないのではなく、魔力のコントロールができない。
なので、繊細な魔力コントロールが必要な魔法は非常に難しく、鍛錬を積み、ようやく魔法具を扱えるようになるのが大抵の人の限界だ。
極まれに非情なまでの鍛錬の末、魔法を扱えるようになる人物もいるけれど、目指す者は殆どいない。何故なら、どれだけ訓練したところで、せいぜい常人の域に達する程度で、別の道を模索した方が現実というのが理由。
カラス羽にもメリットがないわけではない。
例えば、魔法具などはコントロールせず、ただ大量に魔力を込めるだけで、100%の力を引き出しやすいし、魔力を蓄えられる魔石を使用して利用する、魔力消費が多い魔法具類でも、自分の魔力だけでまかなえたりもする。
もちろん、それだけの魔力を保有しているが故の苦労もある。
普通ではありえない程の魔力が体に蓄積される結果、体を蝕み、昔なら短命だった。それを防ぐ為、定期的に魔力を放出する必要がだった。
その一つが私が常に身に着けている一対の腕輪だ。
これは私の魔力を吸い取り貯めておくための魔法具で、貯めた魔力で筋肉を増強させたりもできる。
ちなみに私がドアノブを捩じり取れたのは、もちろんこの魔法具のおかげ。
「ふう……」
室内は埃っぽくて、多分だけど、長い間誰も出入りしていない。だからってこれは不用心すぎるわよね。簡単すぎるもの。
私はポケットから取り出したハンカチを口に当て、ソロリソロリと足音を立てず窓へ近寄る。
窓も埃塗れで、そのままではネノスを探すどころか、景色を望むことさえできそうにない。
私は埃で雲った窓ガラスを持っていたハンカチで拭いた。
窓を開けるのは、さすがにやり過ぎよね。
あくまでもお忍びで恋人の雄姿を眺めに来ただけ。窓を開けるなんていう、見つかりやすい行為は、少なくとも初めの内は避けるべき…………だとは思うのだけれど、中だけじゃなくて、外も汚いからどの道綺麗に見えない。
練習場の片隅で、ネイノーシュが刃を潰した剣を持ち、相対する兵士に頭を下げる。ちょうどこれから模擬戦を行うらしい。
彼の実力を知れる良い機会だ。
「あ……」
そういえばと、私は持っていた荷物の中から眼鏡を取り出しかけた。眼鏡のつるの部分を持ち、魔力を注ぎ込むと、淡く光り出す。
これは遠くのものを見る為の道具で、覗く時はとても便利な代物。もちろん倍率も変えられるけれど、私の場合魔力調整が上手くはないので、必ず手で眼鏡を触る必要がある。
これでネイノーシュの実力を見ておかなければ。
そう思ったのに、気が付けば、私は近くのどこかで控えているはずのアートを探していた。
「いた……」
訓練場の端、壁の所。手に持っているのはタオルかしら。
ネノスが剣を振るう度に体がビクッとなるのね。戦いというものになれていないのかしら。私なら守ってあげられるのに。
頼ってくれれば良いのに。
現実的に無理だなの刃解っていても、私はつい想像してしまう。
私がいて、隣に彼がいて。襲置い来る魔獣をなぎ倒す。
魔獣を退け疲労する私に、彼が労りの声を掛け、優しく抱きしめてくれるの。それから彼は魔獣に引っかかれた傷を魔法で治療してくれた後、綺麗に治ったかどうか確認する様に撫でてくれるだけど、指先が肌を這う感覚にゾクリとして、私は…………
「ダメ!これはとても不味いわ」
これ以上の妄想は私にとって悪影響以外の何物でもない。アートと私は兄弟なのだから、例え妄想でも超えて行けない一線がある。
私はネイノーシュに視線を戻した。
ネイノーシュが剣を構える。真剣な面差しで恰好も様になっており、撃ち合いも悪くない。寧ろ王子様としては十分すぎるくらい。
となると、普段から訓練をしていたのでしょうね。
…………厳しく、育てられてきたのかしら。私と……一緒、だったのかしら。
白い髪を凪かせて、経験不足は否めないが、決して悪くはない型通りの件を振るう。体格もネイノーシュの相手をしている兵士と比べても、それほど見劣りしない。
万が一の事があった時、自分の身は自分で守るくらいはできるかもしれない。
私個人としてはうっかり死んでしまっても構わないのだけどね、そうなるとお父様とお母様が悲しむから……これはとても重要な事なの。
その部屋の窓から訓練場全体が見渡せる。
本館の二階と外通路で繋がるその建物の一階は、普段控え室として利用し簡単な治療が出きるようになっているけれど、二階は特に使い道もなく、物置になっている。
しかも一階には兵士が控えているという油断からか、特に侵入者対策などはなく、単純は鍵がかけられているだけ。
なので、私も単純な方法で部屋の中に入る。どうやるかというと…………
「ふん!」
私はドアノブを握り絞めると、力任せに捻りもぎ取った。
私のようなカラス羽は魔法が使えないとされているけれど、正確にいえば、魔法が使えないのではなく、魔力のコントロールができない。
なので、繊細な魔力コントロールが必要な魔法は非常に難しく、鍛錬を積み、ようやく魔法具を扱えるようになるのが大抵の人の限界だ。
極まれに非情なまでの鍛錬の末、魔法を扱えるようになる人物もいるけれど、目指す者は殆どいない。何故なら、どれだけ訓練したところで、せいぜい常人の域に達する程度で、別の道を模索した方が現実というのが理由。
カラス羽にもメリットがないわけではない。
例えば、魔法具などはコントロールせず、ただ大量に魔力を込めるだけで、100%の力を引き出しやすいし、魔力を蓄えられる魔石を使用して利用する、魔力消費が多い魔法具類でも、自分の魔力だけでまかなえたりもする。
もちろん、それだけの魔力を保有しているが故の苦労もある。
普通ではありえない程の魔力が体に蓄積される結果、体を蝕み、昔なら短命だった。それを防ぐ為、定期的に魔力を放出する必要がだった。
その一つが私が常に身に着けている一対の腕輪だ。
これは私の魔力を吸い取り貯めておくための魔法具で、貯めた魔力で筋肉を増強させたりもできる。
ちなみに私がドアノブを捩じり取れたのは、もちろんこの魔法具のおかげ。
「ふう……」
室内は埃っぽくて、多分だけど、長い間誰も出入りしていない。だからってこれは不用心すぎるわよね。簡単すぎるもの。
私はポケットから取り出したハンカチを口に当て、ソロリソロリと足音を立てず窓へ近寄る。
窓も埃塗れで、そのままではネノスを探すどころか、景色を望むことさえできそうにない。
私は埃で雲った窓ガラスを持っていたハンカチで拭いた。
窓を開けるのは、さすがにやり過ぎよね。
あくまでもお忍びで恋人の雄姿を眺めに来ただけ。窓を開けるなんていう、見つかりやすい行為は、少なくとも初めの内は避けるべき…………だとは思うのだけれど、中だけじゃなくて、外も汚いからどの道綺麗に見えない。
練習場の片隅で、ネイノーシュが刃を潰した剣を持ち、相対する兵士に頭を下げる。ちょうどこれから模擬戦を行うらしい。
彼の実力を知れる良い機会だ。
「あ……」
そういえばと、私は持っていた荷物の中から眼鏡を取り出しかけた。眼鏡のつるの部分を持ち、魔力を注ぎ込むと、淡く光り出す。
これは遠くのものを見る為の道具で、覗く時はとても便利な代物。もちろん倍率も変えられるけれど、私の場合魔力調整が上手くはないので、必ず手で眼鏡を触る必要がある。
これでネイノーシュの実力を見ておかなければ。
そう思ったのに、気が付けば、私は近くのどこかで控えているはずのアートを探していた。
「いた……」
訓練場の端、壁の所。手に持っているのはタオルかしら。
ネノスが剣を振るう度に体がビクッとなるのね。戦いというものになれていないのかしら。私なら守ってあげられるのに。
頼ってくれれば良いのに。
現実的に無理だなの刃解っていても、私はつい想像してしまう。
私がいて、隣に彼がいて。襲置い来る魔獣をなぎ倒す。
魔獣を退け疲労する私に、彼が労りの声を掛け、優しく抱きしめてくれるの。それから彼は魔獣に引っかかれた傷を魔法で治療してくれた後、綺麗に治ったかどうか確認する様に撫でてくれるだけど、指先が肌を這う感覚にゾクリとして、私は…………
「ダメ!これはとても不味いわ」
これ以上の妄想は私にとって悪影響以外の何物でもない。アートと私は兄弟なのだから、例え妄想でも超えて行けない一線がある。
私はネイノーシュに視線を戻した。
ネイノーシュが剣を構える。真剣な面差しで恰好も様になっており、撃ち合いも悪くない。寧ろ王子様としては十分すぎるくらい。
となると、普段から訓練をしていたのでしょうね。
…………厳しく、育てられてきたのかしら。私と……一緒、だったのかしら。
白い髪を凪かせて、経験不足は否めないが、決して悪くはない型通りの件を振るう。体格もネイノーシュの相手をしている兵士と比べても、それほど見劣りしない。
万が一の事があった時、自分の身は自分で守るくらいはできるかもしれない。
私個人としてはうっかり死んでしまっても構わないのだけどね、そうなるとお父様とお母様が悲しむから……これはとても重要な事なの。
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