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序章~二人の出会いは~
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森の奥の別荘の自室。私は窓から外を眺めた。
月の光が水面に反射し、キラキラ光っている。
「キレイだわ……」
今の私のすべてを、一人の男が支配している。
何をしても、何を思っても、最後は彼のことを考えている。
不思議ね。この湖を綺麗と感じたのは、もうずいぶんと久しぶり。
「姫様、祝賀会のスピーチの原稿でございます。これを……」
私の寝巻を準備して終えたマンナ言った。
しまった。マンナの存在をすっかり忘れていたわ。
よかったうっかり彼の名前を呼ばなくて。
「いやよ、マンナ。今日はその話はしないで」
「しかし姫様。祝賀会はもうすぐですのよ?やるべきことは多くあります。」
紙の束がテーブルに置かれている。
式典で着る服の寸法を測り、特別な場ので振る舞いを覚える。やらなければならないことは多い。
「明日にはちゃんとするわ。だから今日だけは、何も言わないで。お願いよマンナ」
そう、今日だけ。
今だけよ。
明日からは姫としての務めが待っている。
だから今日だけはこの想いに浸っていたの。
明日になったら、すべて忘れるわ。
「こんなにも幸せなのはきっと今日が最後ね」
私はもうすぐ、世界で一番憎い人と結婚する。
今より16年前、お城ではある問題が起きていた。
王の跡継ぎが次々と亡くなっていたのだ。病気、事故、中には暗殺の形跡が残るものもあった。
王妃もまた、お腹の中の子供を狙われていた。この子が無事に生まれたとしても、きっと命を狙われる。
考えた末に王妃は、子供をすり替えることにした。
生まれたばかりの王子を
性別が知れる前に
同じ頃に生まれた商人の
娘と取り換えた
王子は商人の息子として、娘は王女として育てられた。
表向きは……
王子を預かる一家に、王は貴族の称号を与えた。
将来王子として城に戻った時、困らないように。王となった時、役目を果たせるようにだ。
その一家は王子に貴族の教育し、他の子供たちにも同じように教育した。
そうやって王子を16年間隠し続けた。
それから王は、すり替えられた娘には王女としての教育、それから、ありとあらゆる戦闘術を学ばせた。
暗殺者を引き寄せる餌とするため。
王子の代わりとなり、命を狙われ続ける役目を、果たさせるために。
もうじき王子はこの城に戻ってくる。
王女の婚約者として。
月の光が水面に反射し、キラキラ光っている。
「キレイだわ……」
今の私のすべてを、一人の男が支配している。
何をしても、何を思っても、最後は彼のことを考えている。
不思議ね。この湖を綺麗と感じたのは、もうずいぶんと久しぶり。
「姫様、祝賀会のスピーチの原稿でございます。これを……」
私の寝巻を準備して終えたマンナ言った。
しまった。マンナの存在をすっかり忘れていたわ。
よかったうっかり彼の名前を呼ばなくて。
「いやよ、マンナ。今日はその話はしないで」
「しかし姫様。祝賀会はもうすぐですのよ?やるべきことは多くあります。」
紙の束がテーブルに置かれている。
式典で着る服の寸法を測り、特別な場ので振る舞いを覚える。やらなければならないことは多い。
「明日にはちゃんとするわ。だから今日だけは、何も言わないで。お願いよマンナ」
そう、今日だけ。
今だけよ。
明日からは姫としての務めが待っている。
だから今日だけはこの想いに浸っていたの。
明日になったら、すべて忘れるわ。
「こんなにも幸せなのはきっと今日が最後ね」
私はもうすぐ、世界で一番憎い人と結婚する。
今より16年前、お城ではある問題が起きていた。
王の跡継ぎが次々と亡くなっていたのだ。病気、事故、中には暗殺の形跡が残るものもあった。
王妃もまた、お腹の中の子供を狙われていた。この子が無事に生まれたとしても、きっと命を狙われる。
考えた末に王妃は、子供をすり替えることにした。
生まれたばかりの王子を
性別が知れる前に
同じ頃に生まれた商人の
娘と取り換えた
王子は商人の息子として、娘は王女として育てられた。
表向きは……
王子を預かる一家に、王は貴族の称号を与えた。
将来王子として城に戻った時、困らないように。王となった時、役目を果たせるようにだ。
その一家は王子に貴族の教育し、他の子供たちにも同じように教育した。
そうやって王子を16年間隠し続けた。
それから王は、すり替えられた娘には王女としての教育、それから、ありとあらゆる戦闘術を学ばせた。
暗殺者を引き寄せる餌とするため。
王子の代わりとなり、命を狙われ続ける役目を、果たさせるために。
もうじき王子はこの城に戻ってくる。
王女の婚約者として。
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