7 / 180
冬に咲く花
5.5(忘れてた追加分)
しおりを挟む
孝宏が寝た後、食卓に並んだ皿に鍋で煮込まれたスープが注がれた。白い湯気と良い香りが上がり、食欲をそそる。
「ねえ、私魔法を習いたいのだけど」
この中でまともに魔術が使えるのが、ルイ一人だけなのはこの場の誰もが承知していている。当然のようにルイが頷いた。
「別にイイけど、突然どうしたのさ」
ルイは得意気に笑った。
「一応これでも異世界から現れた勇者の条件に当てはまるの。あなたたち、彼だけがそれだと思っていたんじゃないでしょう」
それは間違いなくそうなのだが、カウルとルイには現実感が沸いていないのと、何よりカダンが孝宏をいたく気に入っていた。
「だいたい異世界人って魔法が使えるのか?」
カウルが言った。
「それはやってみないとわからないけど、カダンの言う世界の危機が本当に起こるとして、その時の為に私たちが呼ばれたのなら、私たちは最大の努力をする義務があると思うの」
「義務ですか。私はお二人と違って、初めは言葉も全く理解できませんでしたし、何か他に条件があるのかもしれませんね」
鈴木が伏し目がちに、全体的には困って見える笑顔を浮かべると、すべて言い終わる前にカダンが被せて言った。
「まあ、世界の危機とやらもまだわからないし、今はできるだけのことをしよう」
「そうだな。次はマオウとかが出てくるんだっけか?何か異変がないか、父さんと母さんに聞いてみようか」
そう言うカウルに期待感が滲み出ている。両親と言葉を交わすだけでも、最後に会ったのは三か月前になる。
「あ、ゴメン。もう二人に連絡しちゃった。異世界の情報が知りたくて…………ごめん」
「カダン……俺は別に……そ、そんなことは別にいいんだ」
皆が苦笑いを浮かべる。はしゃぎたい気持ちを隠しきれない片割れを、ルイは肘でつついた。気まずそうに口を結んで、無理矢理に真面目な顔を作るものだから、食卓は余計に笑いに包まれた。
「ねえ、私魔法を習いたいのだけど」
この中でまともに魔術が使えるのが、ルイ一人だけなのはこの場の誰もが承知していている。当然のようにルイが頷いた。
「別にイイけど、突然どうしたのさ」
ルイは得意気に笑った。
「一応これでも異世界から現れた勇者の条件に当てはまるの。あなたたち、彼だけがそれだと思っていたんじゃないでしょう」
それは間違いなくそうなのだが、カウルとルイには現実感が沸いていないのと、何よりカダンが孝宏をいたく気に入っていた。
「だいたい異世界人って魔法が使えるのか?」
カウルが言った。
「それはやってみないとわからないけど、カダンの言う世界の危機が本当に起こるとして、その時の為に私たちが呼ばれたのなら、私たちは最大の努力をする義務があると思うの」
「義務ですか。私はお二人と違って、初めは言葉も全く理解できませんでしたし、何か他に条件があるのかもしれませんね」
鈴木が伏し目がちに、全体的には困って見える笑顔を浮かべると、すべて言い終わる前にカダンが被せて言った。
「まあ、世界の危機とやらもまだわからないし、今はできるだけのことをしよう」
「そうだな。次はマオウとかが出てくるんだっけか?何か異変がないか、父さんと母さんに聞いてみようか」
そう言うカウルに期待感が滲み出ている。両親と言葉を交わすだけでも、最後に会ったのは三か月前になる。
「あ、ゴメン。もう二人に連絡しちゃった。異世界の情報が知りたくて…………ごめん」
「カダン……俺は別に……そ、そんなことは別にいいんだ」
皆が苦笑いを浮かべる。はしゃぎたい気持ちを隠しきれない片割れを、ルイは肘でつついた。気まずそうに口を結んで、無理矢理に真面目な顔を作るものだから、食卓は余計に笑いに包まれた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔法使いと皇の剣
1111
ファンタジー
かつて世界は一つだった。
神々が大陸を切り離し閉ざされた世界で
魔法使いのミエラは父の復讐と神の目的を知る為
呪われた大陸【アルベスト】を目指す。
同じく閉ざされた世界で〔皇の剣〕と呼ばれるジンは
任務と大事な家族の為、呪われた大陸を目指していた。
旅の中で、彼らは「神々の力の本質」について直面する。神とは絶対的な存在か、それとも恐れるべき暴君か。人間とは、ただ従うべき存在なのか、それとも神を超える可能性を秘めたものなのか。
ミエラに秘められた恐るべき秘密が、二人を究極の選択へと導いていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる