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お化け屋敷
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ガウーは小さな恐竜の男の子です。まだ一人でお外に出たことがありません。
なのでガウーはお母さんがお料理をしている隙に、こっそりと外に出ることにしました。
一人で歩く外の景色はいつもと同じはずなのに、キラキラ輝いて見えます。
「あ!あそこはいつもお母さんと一緒に行くお店だ!」
「ここはお母さんと一緒に行く公園だ!」
ガウーは楽しくて仕方ありません。
いつも行くお店、公園、通る道の植木の花。ガウーは夢中で町をあちこち見て回りました。来たことのある場所も、初めて行く場所もドキドキしてとてもワクワクしました。
でもそうしている内にガウーは全く知らない森の中へと迷い込んでいたのです。
「おかあさーん!おかあさん!」
ガウーは森の中を歩きながら必死にお母さんを呼びました。でもいくら呼んでもお母さんが答えてくれることはありません。
しばらく森の中を行くと、一軒の古い屋敷が見えました。玄関には明かりの灯った提灯がぶら下がっています。
「やった!人がいるんだ!」
ガウーは喜んで屋敷のドアを叩きました。
「ごめん下さい!誰かいませんか!?」
「僕迷子なんです!助けてください!」
――カチャ……――
突然ドアが開き、家の奥から声が聞こえました。
――どうぞお入りください――
ガウーはホッとして中に入りました。
するとどうでしょう。ガウーが家の中に入ったとたん――バタン!――大きな音を立てて扉閉まりました。
「ひっ」
ガウは驚きました。
大きな音に驚いたのはもちろん、ドアが閉まる瞬間、提灯がニタッと笑った気がしたからです。でもそんなはずはありません。
だって提灯に顔が付いていないんだもの。
ガウーは気のせいだと言って、長い廊下を奥へと進んでいきました。
「ごめんくださーい!ぼくまいごなんですー!たすけてくださーい!」
「ごめんくださーい!ぼくまいごなんですー!たすけてくださーい!」
ガウーがいくら呼びかけも、さっきはあった返事が、今度はありません。
「ごめんくださーい!ぼくまいごなんですー!たすけてくださーい!」
なにせ屋敷は古いものですから、ガウーが歩く度床板がきしんでギイギイ音が鳴りました
「ごめんくださーい!」
――ギィ――
「ぼくまいごなんですー」
――ギィ――
「たすけてくださーい!」
――ギィ――――――――――――――――キィ――
「ごめんくださーい!」
――ギィ――――――――――――キィ――
「ぼくまいごなんですぅ」
――ギィ――――――――――キィ――
その時ガウーは自分が歩く度、後ろの方から音が聞こえてくることに気が付きました。
「だぁれ?」
ガウーは後ろを振り返りましたが誰もいません。ガウーは聞き間違えたと思い、再び歩き始めました。
「ごめんくださーい!」
――ギィ――――――――キィ――
「ぼくまいごなんですぅ!」
――ギィ――――――キィ――
やはり後ろから音が聞こえてきます。
さっきは誰もいなかったのに。ガウーは恐る恐る後ろを振り返りました。
「!!!!」
するとそこには、それはそれは大きな骸骨がいるではありませんか。
頭を天井にこすり付け、肩を壁にすりながらこちらに迫ってくる≪がしゃどくろ≫です。
骨をガシャガシャ鳴らし、大きな体を擦りながら迫りくる≪がしゃどくろ≫にガウーは悲鳴を上げました。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
ガウーはとっさに近くにあったドアに逃げ込みました。
≪がしゃどくろ≫は腕だけをドアに突っ込んで伸ばしてきました。ガウーの顔よりも大きな骨の手がガウーを捕まえようとします。
ガウーは通路を奥へ奥へ走って逃げました。逃げ込める部屋も外への出口もなく、ガウーは走りました。
するとやがて通路の奥、突き当りに一つだけドアがありました。
ガウーは後ろを振り返りました。≪がしゃどくろ≫は大きな骨の体を狭いドアにねじ込み今にも入ってきそうです。
ガウーは思い切ってドアを開けました。
ドアの向こうは食堂でした。白いテーブルクロスのかけられたテーブルの上には空の食器が綺麗に並べられています。
「今から食事でもするのかしら?」
でも誰が?
ガウーは怖くなり食堂にあるもうもう一つのドアから部屋の外へ出ました。
食堂の隣は広い台所でした。でも誰もいません。
台所の奥に小さなドアがあり、その横には古い傘と大きな狸の人形が置いてありました。
「外に出られるかも……でも何でこんなところにタヌキの人形があるんだろ?」
ガウーは疑問に思いましたが、ただの傘とタヌキの人形なら怖くありません。
そう思ってガウーが近づいた瞬間、傘がバッと勢いよく開きました。
「わっ!!!」
古い傘の破れた穴から大きな目玉がぎょろりと覗き、よだれの滴る舌がニョロリと伸びてきます。
タヌキの置物はドロンと白い煙を上げたかと思えば、そこにいたのはタヌキではなく大きな顔だけのお化けでした。
逃げなきゃ。ガウーはそう思うのにどうしても足が動きません。
唐笠お化けの長い舌が、ガウーの足をベロンと舐めました。
ガウーは驚いて飛び上がりこけましたが、ようやく足が動き、食堂へ逃げかえることができました。
台所へのドアを閉め、もたれかかって開かないようにします。
「来るな来るな来るな来るな来るな来るな…………」
――ドンドンドン――
お化けたちがドアを叩きます。
「来るな来るな来るなぁ!」
――フフフッ――
突然誰もいないはずの食堂で誰かが笑いました。
――フフッフッアハハハハハハハ――
食堂を見渡してもやっぱり誰もいません。
―アハハハハアハッハハッハッハッハッハァハッハッハッハッハ――
笑い声はだんだん大きくなっていきます。
ガウーはようやく壁にかかった女の人の絵に気が付きました。
絵の女の人が大きな口でゲラゲラ笑っています。
ガウーと目が合うと、絵の女はゲラゲラ笑いながら、頭だけを絵からニュッと出し、首をくねくねと伸ばしてきました。
耳まで裂けた口が、ガウーを食べてしまおうと、鋭い牙をむき出しに迫ってきます。
「お゛か゛あ゛さ゛ーん゛!た゛す゛け゛て゛―!」
たまらずガウーが叫んだその時です。
――ドドドドドドド……――
地面が揺れ、次に屋敷全体が揺れました。
――バキバキバキバキ ――
良くわからない音とともに、天井がぱっくり割れると、隙間から夜の空が見えます。かとも思えば、天井の割れ目から大きな目が、ギョロリとガウーを見下ろしました。
「あらガウー、こんなところにいたのね」
それはガウーのお母さんでした。
「さあ、ガウー、帰りましょう」
ガウーはお母さんに連れられて、手を繋ぎながら帰っていきました。
その帰り道お母さんがガウーに尋ねました。
「一人で怖かったでしょう?」
ガウーは得意げに言いました。
「ううん、僕全然怖くなかったよ!でもお母さんが寂しいと心配だから、これからは一緒にお出かけしてあげる!」
なのでガウーはお母さんがお料理をしている隙に、こっそりと外に出ることにしました。
一人で歩く外の景色はいつもと同じはずなのに、キラキラ輝いて見えます。
「あ!あそこはいつもお母さんと一緒に行くお店だ!」
「ここはお母さんと一緒に行く公園だ!」
ガウーは楽しくて仕方ありません。
いつも行くお店、公園、通る道の植木の花。ガウーは夢中で町をあちこち見て回りました。来たことのある場所も、初めて行く場所もドキドキしてとてもワクワクしました。
でもそうしている内にガウーは全く知らない森の中へと迷い込んでいたのです。
「おかあさーん!おかあさん!」
ガウーは森の中を歩きながら必死にお母さんを呼びました。でもいくら呼んでもお母さんが答えてくれることはありません。
しばらく森の中を行くと、一軒の古い屋敷が見えました。玄関には明かりの灯った提灯がぶら下がっています。
「やった!人がいるんだ!」
ガウーは喜んで屋敷のドアを叩きました。
「ごめん下さい!誰かいませんか!?」
「僕迷子なんです!助けてください!」
――カチャ……――
突然ドアが開き、家の奥から声が聞こえました。
――どうぞお入りください――
ガウーはホッとして中に入りました。
するとどうでしょう。ガウーが家の中に入ったとたん――バタン!――大きな音を立てて扉閉まりました。
「ひっ」
ガウは驚きました。
大きな音に驚いたのはもちろん、ドアが閉まる瞬間、提灯がニタッと笑った気がしたからです。でもそんなはずはありません。
だって提灯に顔が付いていないんだもの。
ガウーは気のせいだと言って、長い廊下を奥へと進んでいきました。
「ごめんくださーい!ぼくまいごなんですー!たすけてくださーい!」
「ごめんくださーい!ぼくまいごなんですー!たすけてくださーい!」
ガウーがいくら呼びかけも、さっきはあった返事が、今度はありません。
「ごめんくださーい!ぼくまいごなんですー!たすけてくださーい!」
なにせ屋敷は古いものですから、ガウーが歩く度床板がきしんでギイギイ音が鳴りました
「ごめんくださーい!」
――ギィ――
「ぼくまいごなんですー」
――ギィ――
「たすけてくださーい!」
――ギィ――――――――――――――――キィ――
「ごめんくださーい!」
――ギィ――――――――――――キィ――
「ぼくまいごなんですぅ」
――ギィ――――――――――キィ――
その時ガウーは自分が歩く度、後ろの方から音が聞こえてくることに気が付きました。
「だぁれ?」
ガウーは後ろを振り返りましたが誰もいません。ガウーは聞き間違えたと思い、再び歩き始めました。
「ごめんくださーい!」
――ギィ――――――――キィ――
「ぼくまいごなんですぅ!」
――ギィ――――――キィ――
やはり後ろから音が聞こえてきます。
さっきは誰もいなかったのに。ガウーは恐る恐る後ろを振り返りました。
「!!!!」
するとそこには、それはそれは大きな骸骨がいるではありませんか。
頭を天井にこすり付け、肩を壁にすりながらこちらに迫ってくる≪がしゃどくろ≫です。
骨をガシャガシャ鳴らし、大きな体を擦りながら迫りくる≪がしゃどくろ≫にガウーは悲鳴を上げました。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
ガウーはとっさに近くにあったドアに逃げ込みました。
≪がしゃどくろ≫は腕だけをドアに突っ込んで伸ばしてきました。ガウーの顔よりも大きな骨の手がガウーを捕まえようとします。
ガウーは通路を奥へ奥へ走って逃げました。逃げ込める部屋も外への出口もなく、ガウーは走りました。
するとやがて通路の奥、突き当りに一つだけドアがありました。
ガウーは後ろを振り返りました。≪がしゃどくろ≫は大きな骨の体を狭いドアにねじ込み今にも入ってきそうです。
ガウーは思い切ってドアを開けました。
ドアの向こうは食堂でした。白いテーブルクロスのかけられたテーブルの上には空の食器が綺麗に並べられています。
「今から食事でもするのかしら?」
でも誰が?
ガウーは怖くなり食堂にあるもうもう一つのドアから部屋の外へ出ました。
食堂の隣は広い台所でした。でも誰もいません。
台所の奥に小さなドアがあり、その横には古い傘と大きな狸の人形が置いてありました。
「外に出られるかも……でも何でこんなところにタヌキの人形があるんだろ?」
ガウーは疑問に思いましたが、ただの傘とタヌキの人形なら怖くありません。
そう思ってガウーが近づいた瞬間、傘がバッと勢いよく開きました。
「わっ!!!」
古い傘の破れた穴から大きな目玉がぎょろりと覗き、よだれの滴る舌がニョロリと伸びてきます。
タヌキの置物はドロンと白い煙を上げたかと思えば、そこにいたのはタヌキではなく大きな顔だけのお化けでした。
逃げなきゃ。ガウーはそう思うのにどうしても足が動きません。
唐笠お化けの長い舌が、ガウーの足をベロンと舐めました。
ガウーは驚いて飛び上がりこけましたが、ようやく足が動き、食堂へ逃げかえることができました。
台所へのドアを閉め、もたれかかって開かないようにします。
「来るな来るな来るな来るな来るな来るな…………」
――ドンドンドン――
お化けたちがドアを叩きます。
「来るな来るな来るなぁ!」
――フフフッ――
突然誰もいないはずの食堂で誰かが笑いました。
――フフッフッアハハハハハハハ――
食堂を見渡してもやっぱり誰もいません。
―アハハハハアハッハハッハッハッハッハァハッハッハッハッハ――
笑い声はだんだん大きくなっていきます。
ガウーはようやく壁にかかった女の人の絵に気が付きました。
絵の女の人が大きな口でゲラゲラ笑っています。
ガウーと目が合うと、絵の女はゲラゲラ笑いながら、頭だけを絵からニュッと出し、首をくねくねと伸ばしてきました。
耳まで裂けた口が、ガウーを食べてしまおうと、鋭い牙をむき出しに迫ってきます。
「お゛か゛あ゛さ゛ーん゛!た゛す゛け゛て゛―!」
たまらずガウーが叫んだその時です。
――ドドドドドドド……――
地面が揺れ、次に屋敷全体が揺れました。
――バキバキバキバキ ――
良くわからない音とともに、天井がぱっくり割れると、隙間から夜の空が見えます。かとも思えば、天井の割れ目から大きな目が、ギョロリとガウーを見下ろしました。
「あらガウー、こんなところにいたのね」
それはガウーのお母さんでした。
「さあ、ガウー、帰りましょう」
ガウーはお母さんに連れられて、手を繋ぎながら帰っていきました。
その帰り道お母さんがガウーに尋ねました。
「一人で怖かったでしょう?」
ガウーは得意げに言いました。
「ううん、僕全然怖くなかったよ!でもお母さんが寂しいと心配だから、これからは一緒にお出かけしてあげる!」
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