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ハティと奴隷契約編
26.最強の男? エルクとどっちが強いの?
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1週間後の昼頃。俺たちは森を歩いている。
目の前では空から魔物の血が降り注いでいる。
俺たちには血がかからないように降り注いでいて、洗濯物が多くなる心配はなさそうだ。
「魔王軍が近いからか、数だけは多いな」
服を一切汚さず目の前に現れるブラッドスカイさん。
綺麗な服と整った顔でうっすら笑っている。
疲れは見られない。どちらかというと……つまらなさそうだ。
ブラッドスカイさんはその名の通り、血の雨を降らせるほど、高速で敵を切り刻む戦闘スタイルだ。
何か魔法を使っているのか、高速移動と両手につけた鉄爪による斬撃。一瞬で魔物を肉の塊に変えている。
もし俺との戦いになったら、動きを止めることができず、すぐさま血だらけにされそうだ。
仲良くしよう。全力で。
「でもいいのか? エルク。本当に俺が獲物を総取りしちまってるぜ?」
「ええ。構いませんよ。好きなだけやっちゃってください」
「へぇ~。余裕ってやつか?」
ブラッドスカイさんはニヤリとして、また姿を消す。
ブラッドスカイさんは魔物の気配がするとすぐにどこかへ消えて、赤い雨を降らせていく。
そのたびに、俺の出番を奪ったことを気にしているようなことを聞いてくる。
全然、まったく気にしなくていいので、バンバン赤い雨を降らせてほしいんだが。
俺たちはエルフの森へ行ける光の門へ向かっている。
暗黒大神殿でだいたいの場所をブラッドスカイさんに教えると、真っ暗馬車に乗せられたりし、今は森を歩いている。
ブラッドスカイさんはイケメンボイスで「明日には着くだろう」と言っている。
俺達はずっと戦いに参加しておらず、歩いているだけだ。
こんなに楽な旅なら、ずーっとブラッドスカイさんについてきて欲しいぜ。
旅のあいだは俺が料理当番をしており、なんとかしてブラッドスカイさんの胃袋をつかもうとしている。
今のところ辛い料理が好きっぽい。あと少しで、大好物がつかめそうなんだ。
「止まれ」
俺が真剣にお昼の料理を考えていたら、ブラッドスカイさんが片腕を横に伸ばし、止まれの合図をする。
立ち止まって気づいたが、あたりがうす~い霧に包まれていた。
アリアも立ち止まる。
リリアンは……ずっと「すーすー」寝てる。
ブラッドスカイさんが腰を落として周囲を警戒する中。
アリアが言う。
「体力と魔力を何者かが吸いとっています。これは……吸収魔法の霧でしょうか?」
「ガストか? 魔力も吸いとるとは。しかも、こんなに気づかれないように吸いとるなんて、かなり高位の魔物のようだな」
ブラッドスカイさんが強いガストと予想し、周りをぐるりと見ている。
ガストは霧に見せかけて体力を吸いとる魔物だ。物理攻撃はすり抜けるので、戦士には不利な敵と言える。
ガストが使う吸収魔法を体力を吸う時に吐き気も与える。
だから、すぐに気づくはずだし、走って霧を離れたら簡単に逃げられる。
でも、このガストはなにか違うようだ。
俺は危険を感じ、ブラッドスカイさんに提案する。
「ブラッドスカイさん。一旦逃げましょうか?」
「そう……だな。ブラックナイトメアが起きてるときに再戦だ」
俺達が歩いてきた道へ戻ろうとすると、霧は濃くなり、隣を歩いていたアリアが見えなくなる。
ブラッドスカイさんの大声が聞こえる。
「メイジガストだ! あまり動かずにその場に留まれ。俺が何か考える」
メイジガストだって? ガスト系の最上位種じゃねえか。
ブラッドスカイさんは自分の考えをまとめるように続ける。
「確か……魔角に吸収魔法を使う奴がいたはずだが……」
「クケケ。よくわかったな。我は魔角が1本。メイジガストのオルペル。お前らは死ぬまでここに囚われ続けるのだ」
魔角!? ヤバい!
魔角相手と言ったらリリアンだ!
急いでリリアンを起こさないと!
俺は体を激しく揺すって、背中のリリアンを起こそうとする。
しかし、今日のリリアンは……いつもより重い気がする。
ブラッドスカイさんの緊迫した声。
「くっ。スリープの魔法か? おい。寝るなよ。寝たらそのまま命を吸われるぞ!」
スリープ!?
それで力が入らず、体が重くなってきてるのか?
「すー…すぅ……」
リリアンの寝息がいつもより弱々しい。
俺は急いで地面に手をつける。
「来い。アースゴーレム」
ガイアサークルちゃんに貰った指輪が黄色く光る。地面がボコボコと動きだし、3メートルほどの土のゴーレムが現れた。
今までで一番うまく作れた!
さて……とりあえずゴーレム出したけど、コイツをどう動かして魔角を倒そうか?
俺が悩んでいると、誰かが俺の肩にぶつかる。
見ると、アリアがいた。
「あっ、変態魔王!」
「変態魔王じゃねえわ! こんな時にも余裕だな」
「プリーストの修業時代に比べたら、まだ大丈夫です」
少し遠くを見るアリア。
どんな修業してきたんだ?
「なぁ、何か手は無いか?」
「手ですか? ガストはあまり詳しくないので何とも言えませんね。エルクさんは何かありませんか?」
「俺もあんまり知らな……おっと、ヤバい。かなり眠くなってきた」
話しているあいだもすごく眠い。
「クケッケ。眠れ眠れ愚かなニンゲン」
魔角オルペルの声も遠くから聞こえてくるような感じだ。
何かないか?
俺にできるのはリリアンやアリアに頼ることとと、パクった指輪を使うくらいだ。
指輪……そういえば姫様に貰った勇者の指輪があったな。
俺は、とりあえず全ての指輪。『エルフの指輪』『ゴーレムの指輪』『勇者の指輪』に魔力を込める。
すると!
勇者の指輪がすっごく光った。
めっちゃまぶしい。
ま、目くらましには使えるかな?
アリアが俺の手をはたき落とす。
「あの! それうっとうしいので、あんまり光らせないでくれませんか?」
いつも冷静なアリアが怒ってる!
俺は言い訳しようとすると、
「ギャーー! なんだそれは。ビリビリするじゃねえか!」
魔角オルペルの悲鳴のような怒鳴り声。
おや? 効いてる?
アリアが俺の手を持ち上げて指輪を眺める。
「この指輪から神聖魔法のような力を感じたのですが、敵に通じそうですね。……今からわたくしが使える最強の神聖魔法を使います」
「神聖魔法? そんなんできるのか?」
「言ったでしょう? 私は伝説の蘇生魔法以外の、プリーストが使える魔法なら使えます」
クールな顔のまま、すげーことを言ってきた。
初級の神聖魔法を使うのでも、高い山に登ったり、マズイ水を飲んだりして、辛い修業が必要なはずだが。
……って、だからさっき『プリーストの修業時代より大丈夫』って言ったのか。
「今から長い魔法の詠唱を始めます。エルクさん、わたくしを守ってくれますか?」
「おう。任せろ」
「ふふ。ちゃんと守ってくれたら、お尻くらいは触らせてあげますよ」
イタズラ顔で詠唱を始めるアリア。
アリアの体が白く光りだす。
自分のお尻をご褒美にするとは。やるな。
だが、俺はアリアの大きな胸をむねむねさせて欲しいんだぜ。
俺がアリアのおっぱいをガン見してると、周囲からガイコツの魔物が出てきた。
ブラッドスカイさんの声。
「すまん。いくつか魔物がそっちに行く。なんとか逃げてくれ」
「ケケ。殺せ。そいつら何かするつもりだ」
俺は、手を上げて勇者の指輪を光らせる。
近づいてきてたガイコツが動きを止める。
ガイコツにも勇者の指輪が効くようだ。
「やれ。ゴーレム」
俺は呼び出したけど何もさせてなかったゴーレムへ攻撃の指示を出す。
ゴーレムはゆっくり動き、止まったままのガイコツへ拳を振り下ろす。
一撃でガイコツが粉々になった。
うーん。攻撃力はあるけど、動きがトロいな。
俺は勇者の指輪を光らせ続け、ゴーレムはガイコツを殴り続けた。
「ギケケッ。その光をやめろ」
魔角オルペルの声に元気がない。
なんか弱ってそうだな。
俺が手を上げるのがしんどくなってきた頃、リリアンが「ふぁ~」と言う。
魔角オルペルがスリープを使えてなかったのか、どうやら起きたっぽい。
俺から降りる。
「なんですか、エルクもアリアも光ってますけど。そういうお祭りですか?」
のんきなリリアンに「何言ってんだ」と言っていると、アリアがより強く光りだす。
「邪悪なるものよ。消え去りなさい。セイクリッド・ホーリーバースト」
アリアから目の奥を突くようなまばゆい光があふれ、思わず目をつぶる。
リリアンが「まぶしー!」と言っている。
「ギャーー」
魔角オルペルの悲鳴。
ガラガラと硬いものが散らばる音もする。他にもいたガイコツにも効いてるんだろう。
視界が戻ると、霧は晴れて、静かな森の中にいた。魔物の気配は無い。
目をゴシゴシしているリリアンと、「ふぅー」っとため息のアリア。
「アリア。倒せたみたいだな。助かったよ」
「どういたしまして。さっきの魔法でエルクさんの邪気も消し飛んでくれればよかったですが、うまくいきませんね。はぁ~」
いちいち余計なことを言うアリア。
すると、アリアからパキンと音がし、手に持っていた宝石のようなものが崩れる。
強い魔法を使うために、何か貴重な宝石を犠牲にしたようだ。
無理をさせたな。お礼に今度何かをあげよう。
ブラッドスカイさんがザッと目の前に現れる。
「やるな。ねーちゃん」
「いえ、神に仕えるものとして当然の働きです」
いつものクールに戻るアリア。
「おっしゃ。邪魔が入ったが進むぞ。そろそろエルフのところに着くだろう」
ついさっきまで、ピンチだったのを感じさせず、スタスタ歩き始めるブラッドスカイさん。
俺達も歩き始める。一人を除いては。
「エルク~。なんだか眠いのでもう少しおぶってくださいよ~」
目が半分しか開いてない。
しゃがんで両手上げており、おんぶしろのポーズをするリリアン。
今日のリリアン、何もしてねーよな……
「起きたんなら自分で立って歩けよ」
目の前では空から魔物の血が降り注いでいる。
俺たちには血がかからないように降り注いでいて、洗濯物が多くなる心配はなさそうだ。
「魔王軍が近いからか、数だけは多いな」
服を一切汚さず目の前に現れるブラッドスカイさん。
綺麗な服と整った顔でうっすら笑っている。
疲れは見られない。どちらかというと……つまらなさそうだ。
ブラッドスカイさんはその名の通り、血の雨を降らせるほど、高速で敵を切り刻む戦闘スタイルだ。
何か魔法を使っているのか、高速移動と両手につけた鉄爪による斬撃。一瞬で魔物を肉の塊に変えている。
もし俺との戦いになったら、動きを止めることができず、すぐさま血だらけにされそうだ。
仲良くしよう。全力で。
「でもいいのか? エルク。本当に俺が獲物を総取りしちまってるぜ?」
「ええ。構いませんよ。好きなだけやっちゃってください」
「へぇ~。余裕ってやつか?」
ブラッドスカイさんはニヤリとして、また姿を消す。
ブラッドスカイさんは魔物の気配がするとすぐにどこかへ消えて、赤い雨を降らせていく。
そのたびに、俺の出番を奪ったことを気にしているようなことを聞いてくる。
全然、まったく気にしなくていいので、バンバン赤い雨を降らせてほしいんだが。
俺たちはエルフの森へ行ける光の門へ向かっている。
暗黒大神殿でだいたいの場所をブラッドスカイさんに教えると、真っ暗馬車に乗せられたりし、今は森を歩いている。
ブラッドスカイさんはイケメンボイスで「明日には着くだろう」と言っている。
俺達はずっと戦いに参加しておらず、歩いているだけだ。
こんなに楽な旅なら、ずーっとブラッドスカイさんについてきて欲しいぜ。
旅のあいだは俺が料理当番をしており、なんとかしてブラッドスカイさんの胃袋をつかもうとしている。
今のところ辛い料理が好きっぽい。あと少しで、大好物がつかめそうなんだ。
「止まれ」
俺が真剣にお昼の料理を考えていたら、ブラッドスカイさんが片腕を横に伸ばし、止まれの合図をする。
立ち止まって気づいたが、あたりがうす~い霧に包まれていた。
アリアも立ち止まる。
リリアンは……ずっと「すーすー」寝てる。
ブラッドスカイさんが腰を落として周囲を警戒する中。
アリアが言う。
「体力と魔力を何者かが吸いとっています。これは……吸収魔法の霧でしょうか?」
「ガストか? 魔力も吸いとるとは。しかも、こんなに気づかれないように吸いとるなんて、かなり高位の魔物のようだな」
ブラッドスカイさんが強いガストと予想し、周りをぐるりと見ている。
ガストは霧に見せかけて体力を吸いとる魔物だ。物理攻撃はすり抜けるので、戦士には不利な敵と言える。
ガストが使う吸収魔法を体力を吸う時に吐き気も与える。
だから、すぐに気づくはずだし、走って霧を離れたら簡単に逃げられる。
でも、このガストはなにか違うようだ。
俺は危険を感じ、ブラッドスカイさんに提案する。
「ブラッドスカイさん。一旦逃げましょうか?」
「そう……だな。ブラックナイトメアが起きてるときに再戦だ」
俺達が歩いてきた道へ戻ろうとすると、霧は濃くなり、隣を歩いていたアリアが見えなくなる。
ブラッドスカイさんの大声が聞こえる。
「メイジガストだ! あまり動かずにその場に留まれ。俺が何か考える」
メイジガストだって? ガスト系の最上位種じゃねえか。
ブラッドスカイさんは自分の考えをまとめるように続ける。
「確か……魔角に吸収魔法を使う奴がいたはずだが……」
「クケケ。よくわかったな。我は魔角が1本。メイジガストのオルペル。お前らは死ぬまでここに囚われ続けるのだ」
魔角!? ヤバい!
魔角相手と言ったらリリアンだ!
急いでリリアンを起こさないと!
俺は体を激しく揺すって、背中のリリアンを起こそうとする。
しかし、今日のリリアンは……いつもより重い気がする。
ブラッドスカイさんの緊迫した声。
「くっ。スリープの魔法か? おい。寝るなよ。寝たらそのまま命を吸われるぞ!」
スリープ!?
それで力が入らず、体が重くなってきてるのか?
「すー…すぅ……」
リリアンの寝息がいつもより弱々しい。
俺は急いで地面に手をつける。
「来い。アースゴーレム」
ガイアサークルちゃんに貰った指輪が黄色く光る。地面がボコボコと動きだし、3メートルほどの土のゴーレムが現れた。
今までで一番うまく作れた!
さて……とりあえずゴーレム出したけど、コイツをどう動かして魔角を倒そうか?
俺が悩んでいると、誰かが俺の肩にぶつかる。
見ると、アリアがいた。
「あっ、変態魔王!」
「変態魔王じゃねえわ! こんな時にも余裕だな」
「プリーストの修業時代に比べたら、まだ大丈夫です」
少し遠くを見るアリア。
どんな修業してきたんだ?
「なぁ、何か手は無いか?」
「手ですか? ガストはあまり詳しくないので何とも言えませんね。エルクさんは何かありませんか?」
「俺もあんまり知らな……おっと、ヤバい。かなり眠くなってきた」
話しているあいだもすごく眠い。
「クケッケ。眠れ眠れ愚かなニンゲン」
魔角オルペルの声も遠くから聞こえてくるような感じだ。
何かないか?
俺にできるのはリリアンやアリアに頼ることとと、パクった指輪を使うくらいだ。
指輪……そういえば姫様に貰った勇者の指輪があったな。
俺は、とりあえず全ての指輪。『エルフの指輪』『ゴーレムの指輪』『勇者の指輪』に魔力を込める。
すると!
勇者の指輪がすっごく光った。
めっちゃまぶしい。
ま、目くらましには使えるかな?
アリアが俺の手をはたき落とす。
「あの! それうっとうしいので、あんまり光らせないでくれませんか?」
いつも冷静なアリアが怒ってる!
俺は言い訳しようとすると、
「ギャーー! なんだそれは。ビリビリするじゃねえか!」
魔角オルペルの悲鳴のような怒鳴り声。
おや? 効いてる?
アリアが俺の手を持ち上げて指輪を眺める。
「この指輪から神聖魔法のような力を感じたのですが、敵に通じそうですね。……今からわたくしが使える最強の神聖魔法を使います」
「神聖魔法? そんなんできるのか?」
「言ったでしょう? 私は伝説の蘇生魔法以外の、プリーストが使える魔法なら使えます」
クールな顔のまま、すげーことを言ってきた。
初級の神聖魔法を使うのでも、高い山に登ったり、マズイ水を飲んだりして、辛い修業が必要なはずだが。
……って、だからさっき『プリーストの修業時代より大丈夫』って言ったのか。
「今から長い魔法の詠唱を始めます。エルクさん、わたくしを守ってくれますか?」
「おう。任せろ」
「ふふ。ちゃんと守ってくれたら、お尻くらいは触らせてあげますよ」
イタズラ顔で詠唱を始めるアリア。
アリアの体が白く光りだす。
自分のお尻をご褒美にするとは。やるな。
だが、俺はアリアの大きな胸をむねむねさせて欲しいんだぜ。
俺がアリアのおっぱいをガン見してると、周囲からガイコツの魔物が出てきた。
ブラッドスカイさんの声。
「すまん。いくつか魔物がそっちに行く。なんとか逃げてくれ」
「ケケ。殺せ。そいつら何かするつもりだ」
俺は、手を上げて勇者の指輪を光らせる。
近づいてきてたガイコツが動きを止める。
ガイコツにも勇者の指輪が効くようだ。
「やれ。ゴーレム」
俺は呼び出したけど何もさせてなかったゴーレムへ攻撃の指示を出す。
ゴーレムはゆっくり動き、止まったままのガイコツへ拳を振り下ろす。
一撃でガイコツが粉々になった。
うーん。攻撃力はあるけど、動きがトロいな。
俺は勇者の指輪を光らせ続け、ゴーレムはガイコツを殴り続けた。
「ギケケッ。その光をやめろ」
魔角オルペルの声に元気がない。
なんか弱ってそうだな。
俺が手を上げるのがしんどくなってきた頃、リリアンが「ふぁ~」と言う。
魔角オルペルがスリープを使えてなかったのか、どうやら起きたっぽい。
俺から降りる。
「なんですか、エルクもアリアも光ってますけど。そういうお祭りですか?」
のんきなリリアンに「何言ってんだ」と言っていると、アリアがより強く光りだす。
「邪悪なるものよ。消え去りなさい。セイクリッド・ホーリーバースト」
アリアから目の奥を突くようなまばゆい光があふれ、思わず目をつぶる。
リリアンが「まぶしー!」と言っている。
「ギャーー」
魔角オルペルの悲鳴。
ガラガラと硬いものが散らばる音もする。他にもいたガイコツにも効いてるんだろう。
視界が戻ると、霧は晴れて、静かな森の中にいた。魔物の気配は無い。
目をゴシゴシしているリリアンと、「ふぅー」っとため息のアリア。
「アリア。倒せたみたいだな。助かったよ」
「どういたしまして。さっきの魔法でエルクさんの邪気も消し飛んでくれればよかったですが、うまくいきませんね。はぁ~」
いちいち余計なことを言うアリア。
すると、アリアからパキンと音がし、手に持っていた宝石のようなものが崩れる。
強い魔法を使うために、何か貴重な宝石を犠牲にしたようだ。
無理をさせたな。お礼に今度何かをあげよう。
ブラッドスカイさんがザッと目の前に現れる。
「やるな。ねーちゃん」
「いえ、神に仕えるものとして当然の働きです」
いつものクールに戻るアリア。
「おっしゃ。邪魔が入ったが進むぞ。そろそろエルフのところに着くだろう」
ついさっきまで、ピンチだったのを感じさせず、スタスタ歩き始めるブラッドスカイさん。
俺達も歩き始める。一人を除いては。
「エルク~。なんだか眠いのでもう少しおぶってくださいよ~」
目が半分しか開いてない。
しゃがんで両手上げており、おんぶしろのポーズをするリリアン。
今日のリリアン、何もしてねーよな……
「起きたんなら自分で立って歩けよ」
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