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追放と新パーティ編
13.マカロンスライムつまみ食いしていい?
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『スイクーンの寝床』の朝。
いつものようにリリアンを背負う。
紐でリリアンを固定しながら階段を下りると、ハティとアリアさんが待っていた。
良かった。アリアさんは朝ちゃんと起きれる、普通の人のようだ。
ハティはいつも通り緊張感の無い顔をしている。
しかし、アリアさんは俺が背負ってるリリアンをキッと見てから。
「女の子の体のやわらかさを感じないと死んでしまうエルクさん? 今日はどんなクエストですか?」
んん? こんな人だっけ?
ま、まぁいいか……
「今日はとりあえず簡単なクエストを受けましょう」
「簡単なクエスト中であっても、背中の子にセクハラするんですね。どんなセクハラを?」
下から見上げ、俺のよこしまな考えを覗こうとするアリアさん。
あらぬ誤解を受けている!
「しねーわ。リリアンは昼まで起きないからいつも背負ってるって言っただろ!」
「寝てるのをいいことに触っちゃいけないところを楽しむんですね」
触らないって。
ハティがニヤニヤしている。
「アリア。気を付けてね。こいつはセクハラ魔王だから。油断してるとすぐ襲ってくるわよー」
「おい! 変なこと言うなよ」
ハティは「冗談よ。冗談」って言ったが、アリアさんは俺を監視するように、俺の背後をキープしていた。
――――
昼になる頃に、クヴェリゲンの見張り台がある高台に着いた。
簡単なクエストとして、見張り台にいる兵士へマカロンスライム10キロを届けるためだ。
その兵士は甘いもの好きなんだろう。
アリアさんにもマカロンスライムを持って貰ったが、フラつく様子は無かった。
鍛えているんだろう。俺達の冒険にもついてこれそうだ。
移動中にハティが「そろそろ味見しましょうか?」と何度も聞いてきた。
甘ったるい匂いがするから、味見したくなるのはわかるけどもさ。
最後には『ブンナグル』をつけて聞いてきて、仕方なく帰りに買うことになった。暴力反対だ。
見張り台は塔になっており、入り口に何人か兵士がいる。
よく見ると、ハータで門番をしていたマッチョ兵士がいる。
「おや? もしやハータの英雄エルクパーティでは?」
マッチョ兵士も驚いているようだ。
ハティが前に出て胸を張る。
「そうよ! 英雄様よ。崇めなさい」
マッチョ兵士以外が雰囲気に押されてビシッとしだす。
いちいち偉そうにすんなよ。
「あー、まぁそんなんだけど……なんで兵士さんがここいるんだ?」
「兵士さんなど水臭いことは言わず、気軽にファバリとお呼びくだされ。ワハハー」
山賊のような笑いかたのファバリ。
……。
「兵士さん。門番クビになったのか?」
「おや? ファバリと呼んでくれないのですかな。我輩は悲しいですぞ」
「おーいおいおい」と泣いてるフリをしたファバリは、全然悲しそうじゃない顔で続ける。
「今は多くの兵士が戦場に集められておりますゆえ、我輩も呼ばれたのですぞ。して、英雄殿はなぜここに?」
「ただの荷物運びで来ただけだ。ところで、この見張り台に大量のマカロンスライムが欲しい大食い甘党兵士はいるか?」
ファバリは何やらそわそわし、「感激のポーズですぞ」とか言いつつ、鎧を脱いで筋肉を見せつけてくる。
男の体に興奮する趣味はねーよ。
引いてると、後ろからアリアさんの声がする。
「エルクさんは男性の肉体にも興奮できるんですね。バレてますよ」
俺をどう思ってるんだ?
俺は振り返り、アリアへため息をつく。
ハティの「え? そうなの?」って小声が聞こえる。
いや、信じてんじゃねーよ。
――――
持ってきた10キロのマカロンスライムを渡した後、ファバリに見張り台のてっぺんに案内して貰う。
てっぺんには金ピカで大型のボウガンが台座に取り付けられている。
「これは国王より賜った『神速のバリスタ』と呼ばれる武器ですぞ。目にもとまらぬ速さで魔力のこもったの矢を放てるので、このあたりの守り神と言えるでしょうな。ワハハー」
ファバリはバリスタを磨きだし、金色がさらに輝きだす。
ハティはファバリの話を全く聞いておらず、遠くを眺めてニコニコしている。
アリアさんも眺めを楽しんでいる。
背中のリリアンは俺の肩にヨダレをたらし、ヨダレが日の光を浴びて輝いている。
今日はマカロンスライムの匂いを感じていたのか、いつもよりヨダレってる。
俺がヨダレを拭こうとすると、リリアンが目を開けた。
「お腹すきました」
子どもかよ。
「おやおや。眠り少女よ。これを召し上がりますかな?」
ファバリがサッと何か。マカロンスライムを見せる。
リリアンは「ありがとうございます」と言いながら、貰って食べだす。
せめて、俺から降りてから食えや。
「ちょっと! 私にもちょうだいよね!」
ハティが胸を張って言ってきた。
物を貰うときに偉そうにすんなや。
ファバリは気にする素振りを見せずに、ハティにマカロンスライムを渡す。
アリアにも渡している。
「エルク殿もいかがか?」
まぁ、気になってたし俺も貰おうかな?
手を伸ばしていると、俺から降りたリリアンが気になることを言ってきた。
「エルク。あそこに魔方陣らしきものがありますよ? 行ってみませんか?」
指された方を見ると、木の影になにか模様があるような無いような?
ファバリが俺に渡そうとしていたマカロンスライムを食べながら話す。
くれねーのかよ。
「この見張り台の周囲は安全ですぞ。『神速のバリスタ』の射程範囲に近づく魔物はおりませんからな。のんびり散歩でもすればよかろう。このあたりは変なおじいさんも散歩してるくらい平和ですからな。ワハハー」
変なじいさん?
俺が首をかしげていると、ハティがニカッと笑う。
「なるほど。魔物が出ないなんて、すごく安心ね! 見に行きましょうよ」
――――
俺たちはファバリから貰ったマカロンスライムを食べながら、リリアンの見つけた魔法陣っぽいところに行くことにした。
マカロンスライムは中にハチミツが入っており、激甘で俺は半分も食べれなかった。
よくみんなこんな甘ったるいの食えるな。
うっすら魔法陣が見え始めた時。
リリアンが駆け出し、杖の先っちょでつんつんしている。
近くで見ると大きな魔法陣で、リリアンの魔法陣の倍くらいある。
俺は地面に手をついて魔物の気配を探るが、凶暴そうな魔物の気配はない。
ただ、魔王軍に近い場所のため警戒は必要だろう。
「ハティ。一応『ブンナグル』つけといてくれよ」
「ビビってんじゃないわよ。そんなんじゃモテないわよ」
いちいち反抗してくる。
モテるかは関係ねーだろ。
アリアは冷静な声で。
「不自然に静かすぎます。この変態の言う通りにするは嫌でしょうけど対策はしておくべきでしょう」
今、アリアは俺のことを変態って言ったぞ!
まだアリアには何もしてないのに!
ハティは「へぇへぇ」と言いながら『ブンナグル』をつける。
アリアは白くてまっすぐな杖っぽい棒を取り出し、周囲を見渡している。
周囲のことは2人に任せ、俺はしゃがみこんで魔法陣をいぢってるリリアンに声をかける。
「どうだ? 何かわかったか?」
リリアンは振り向きもせずに魔法陣をいぢり続ける。
集中しているようだ。
リリアンが杖でいぢっているところを覗き込んでみると、急に魔法陣が輝きだした。
最高の笑みで飛び上がるリリアン。
「どうですっ! 私がこの魔法陣を完成させましたよ!」
「おう! すげーな」
俺は無邪気なリリアンの笑顔につられて、思わず笑ってしまう。
が、急に寒気がして魔法陣を見ると、紫色の煙がじわっと出だした。
俺は思わずリリアンを魔法陣の外に投げる。
俺も急いで横に飛ぶが、紫の霧が視界を包み込む。
少し霧を吸ってしまい、一瞬で体が冷えていく感覚。
いきなり意識が遠くなった。
――――
俺は……いつの間にか白い殺風景な部屋に立っていた。
あれ? ここどこ?
いつものようにリリアンを背負う。
紐でリリアンを固定しながら階段を下りると、ハティとアリアさんが待っていた。
良かった。アリアさんは朝ちゃんと起きれる、普通の人のようだ。
ハティはいつも通り緊張感の無い顔をしている。
しかし、アリアさんは俺が背負ってるリリアンをキッと見てから。
「女の子の体のやわらかさを感じないと死んでしまうエルクさん? 今日はどんなクエストですか?」
んん? こんな人だっけ?
ま、まぁいいか……
「今日はとりあえず簡単なクエストを受けましょう」
「簡単なクエスト中であっても、背中の子にセクハラするんですね。どんなセクハラを?」
下から見上げ、俺のよこしまな考えを覗こうとするアリアさん。
あらぬ誤解を受けている!
「しねーわ。リリアンは昼まで起きないからいつも背負ってるって言っただろ!」
「寝てるのをいいことに触っちゃいけないところを楽しむんですね」
触らないって。
ハティがニヤニヤしている。
「アリア。気を付けてね。こいつはセクハラ魔王だから。油断してるとすぐ襲ってくるわよー」
「おい! 変なこと言うなよ」
ハティは「冗談よ。冗談」って言ったが、アリアさんは俺を監視するように、俺の背後をキープしていた。
――――
昼になる頃に、クヴェリゲンの見張り台がある高台に着いた。
簡単なクエストとして、見張り台にいる兵士へマカロンスライム10キロを届けるためだ。
その兵士は甘いもの好きなんだろう。
アリアさんにもマカロンスライムを持って貰ったが、フラつく様子は無かった。
鍛えているんだろう。俺達の冒険にもついてこれそうだ。
移動中にハティが「そろそろ味見しましょうか?」と何度も聞いてきた。
甘ったるい匂いがするから、味見したくなるのはわかるけどもさ。
最後には『ブンナグル』をつけて聞いてきて、仕方なく帰りに買うことになった。暴力反対だ。
見張り台は塔になっており、入り口に何人か兵士がいる。
よく見ると、ハータで門番をしていたマッチョ兵士がいる。
「おや? もしやハータの英雄エルクパーティでは?」
マッチョ兵士も驚いているようだ。
ハティが前に出て胸を張る。
「そうよ! 英雄様よ。崇めなさい」
マッチョ兵士以外が雰囲気に押されてビシッとしだす。
いちいち偉そうにすんなよ。
「あー、まぁそんなんだけど……なんで兵士さんがここいるんだ?」
「兵士さんなど水臭いことは言わず、気軽にファバリとお呼びくだされ。ワハハー」
山賊のような笑いかたのファバリ。
……。
「兵士さん。門番クビになったのか?」
「おや? ファバリと呼んでくれないのですかな。我輩は悲しいですぞ」
「おーいおいおい」と泣いてるフリをしたファバリは、全然悲しそうじゃない顔で続ける。
「今は多くの兵士が戦場に集められておりますゆえ、我輩も呼ばれたのですぞ。して、英雄殿はなぜここに?」
「ただの荷物運びで来ただけだ。ところで、この見張り台に大量のマカロンスライムが欲しい大食い甘党兵士はいるか?」
ファバリは何やらそわそわし、「感激のポーズですぞ」とか言いつつ、鎧を脱いで筋肉を見せつけてくる。
男の体に興奮する趣味はねーよ。
引いてると、後ろからアリアさんの声がする。
「エルクさんは男性の肉体にも興奮できるんですね。バレてますよ」
俺をどう思ってるんだ?
俺は振り返り、アリアへため息をつく。
ハティの「え? そうなの?」って小声が聞こえる。
いや、信じてんじゃねーよ。
――――
持ってきた10キロのマカロンスライムを渡した後、ファバリに見張り台のてっぺんに案内して貰う。
てっぺんには金ピカで大型のボウガンが台座に取り付けられている。
「これは国王より賜った『神速のバリスタ』と呼ばれる武器ですぞ。目にもとまらぬ速さで魔力のこもったの矢を放てるので、このあたりの守り神と言えるでしょうな。ワハハー」
ファバリはバリスタを磨きだし、金色がさらに輝きだす。
ハティはファバリの話を全く聞いておらず、遠くを眺めてニコニコしている。
アリアさんも眺めを楽しんでいる。
背中のリリアンは俺の肩にヨダレをたらし、ヨダレが日の光を浴びて輝いている。
今日はマカロンスライムの匂いを感じていたのか、いつもよりヨダレってる。
俺がヨダレを拭こうとすると、リリアンが目を開けた。
「お腹すきました」
子どもかよ。
「おやおや。眠り少女よ。これを召し上がりますかな?」
ファバリがサッと何か。マカロンスライムを見せる。
リリアンは「ありがとうございます」と言いながら、貰って食べだす。
せめて、俺から降りてから食えや。
「ちょっと! 私にもちょうだいよね!」
ハティが胸を張って言ってきた。
物を貰うときに偉そうにすんなや。
ファバリは気にする素振りを見せずに、ハティにマカロンスライムを渡す。
アリアにも渡している。
「エルク殿もいかがか?」
まぁ、気になってたし俺も貰おうかな?
手を伸ばしていると、俺から降りたリリアンが気になることを言ってきた。
「エルク。あそこに魔方陣らしきものがありますよ? 行ってみませんか?」
指された方を見ると、木の影になにか模様があるような無いような?
ファバリが俺に渡そうとしていたマカロンスライムを食べながら話す。
くれねーのかよ。
「この見張り台の周囲は安全ですぞ。『神速のバリスタ』の射程範囲に近づく魔物はおりませんからな。のんびり散歩でもすればよかろう。このあたりは変なおじいさんも散歩してるくらい平和ですからな。ワハハー」
変なじいさん?
俺が首をかしげていると、ハティがニカッと笑う。
「なるほど。魔物が出ないなんて、すごく安心ね! 見に行きましょうよ」
――――
俺たちはファバリから貰ったマカロンスライムを食べながら、リリアンの見つけた魔法陣っぽいところに行くことにした。
マカロンスライムは中にハチミツが入っており、激甘で俺は半分も食べれなかった。
よくみんなこんな甘ったるいの食えるな。
うっすら魔法陣が見え始めた時。
リリアンが駆け出し、杖の先っちょでつんつんしている。
近くで見ると大きな魔法陣で、リリアンの魔法陣の倍くらいある。
俺は地面に手をついて魔物の気配を探るが、凶暴そうな魔物の気配はない。
ただ、魔王軍に近い場所のため警戒は必要だろう。
「ハティ。一応『ブンナグル』つけといてくれよ」
「ビビってんじゃないわよ。そんなんじゃモテないわよ」
いちいち反抗してくる。
モテるかは関係ねーだろ。
アリアは冷静な声で。
「不自然に静かすぎます。この変態の言う通りにするは嫌でしょうけど対策はしておくべきでしょう」
今、アリアは俺のことを変態って言ったぞ!
まだアリアには何もしてないのに!
ハティは「へぇへぇ」と言いながら『ブンナグル』をつける。
アリアは白くてまっすぐな杖っぽい棒を取り出し、周囲を見渡している。
周囲のことは2人に任せ、俺はしゃがみこんで魔法陣をいぢってるリリアンに声をかける。
「どうだ? 何かわかったか?」
リリアンは振り向きもせずに魔法陣をいぢり続ける。
集中しているようだ。
リリアンが杖でいぢっているところを覗き込んでみると、急に魔法陣が輝きだした。
最高の笑みで飛び上がるリリアン。
「どうですっ! 私がこの魔法陣を完成させましたよ!」
「おう! すげーな」
俺は無邪気なリリアンの笑顔につられて、思わず笑ってしまう。
が、急に寒気がして魔法陣を見ると、紫色の煙がじわっと出だした。
俺は思わずリリアンを魔法陣の外に投げる。
俺も急いで横に飛ぶが、紫の霧が視界を包み込む。
少し霧を吸ってしまい、一瞬で体が冷えていく感覚。
いきなり意識が遠くなった。
――――
俺は……いつの間にか白い殺風景な部屋に立っていた。
あれ? ここどこ?
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