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第八話 悲壮の剣 後編
二
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陽は刀を突きつけられても落ち着いていた。
その後、要件を聞かれたときも落ち着いて答えた。
「我が元主・霧矢泰輔は執念深い男です。きっと私が討たれたあと、あの子をきっとあの子を追い詰め殺すように命令を出すでしょう。」
そこまで来ると、陽は一度深呼吸をしてまた話し始めた。
「そこでお願いです。あの子を見守ってやっては頂けませんか…」
政次郎は再度、陽の眼を見た。やはり、眼に偽りは無い。
「わかった。引き受けよう。」
「若!そのようなことはいけませぬ。」
善五郎が止めようとしたが、政次郎は聞かなかった。
それから政次郎達は支度をして、陽と共に、決闘の場へと向かった。
「皆様、私はここで。」
決闘を見守るためにやって来ていた政次郎、善五郎、綱氏ヘこう言った。
決闘の相手である白井太郎は、既にやって来ている。
陽は太郎を確認すると、その場でくるりと回り、忍び装束へと着替えた。この様子は綱氏もよく行うので、政次郎も目にしているのだが、やはりどういったからくりでできているものなのか、政次郎には理解できなかった。
陽は一礼すると、太郎のもとへ走って行った。
「お前が陽と言うくノ一であるな。我が父白井伯平の敵、討たせていただく。」
まだ若干、十一歳の太郎は、何事もなく仇討の言葉を言い終えた。
「何が仇討ちじゃ。お前のようなガキに私が負けるはずが無かろう。」
そう言って陽は忍刀を引き抜いて、構えた。
それに応えるように太郎も刀を引き抜き、陽に斬りかかった。スラスラとその刃を避けていく。やはり実力で言うと、陽の方が遥かに強い。
しかし、太郎の鋭い攻めは十一歳とは到底思えない物であった。磨けば光る物があると、政次郎は思った。
その後、要件を聞かれたときも落ち着いて答えた。
「我が元主・霧矢泰輔は執念深い男です。きっと私が討たれたあと、あの子をきっとあの子を追い詰め殺すように命令を出すでしょう。」
そこまで来ると、陽は一度深呼吸をしてまた話し始めた。
「そこでお願いです。あの子を見守ってやっては頂けませんか…」
政次郎は再度、陽の眼を見た。やはり、眼に偽りは無い。
「わかった。引き受けよう。」
「若!そのようなことはいけませぬ。」
善五郎が止めようとしたが、政次郎は聞かなかった。
それから政次郎達は支度をして、陽と共に、決闘の場へと向かった。
「皆様、私はここで。」
決闘を見守るためにやって来ていた政次郎、善五郎、綱氏ヘこう言った。
決闘の相手である白井太郎は、既にやって来ている。
陽は太郎を確認すると、その場でくるりと回り、忍び装束へと着替えた。この様子は綱氏もよく行うので、政次郎も目にしているのだが、やはりどういったからくりでできているものなのか、政次郎には理解できなかった。
陽は一礼すると、太郎のもとへ走って行った。
「お前が陽と言うくノ一であるな。我が父白井伯平の敵、討たせていただく。」
まだ若干、十一歳の太郎は、何事もなく仇討の言葉を言い終えた。
「何が仇討ちじゃ。お前のようなガキに私が負けるはずが無かろう。」
そう言って陽は忍刀を引き抜いて、構えた。
それに応えるように太郎も刀を引き抜き、陽に斬りかかった。スラスラとその刃を避けていく。やはり実力で言うと、陽の方が遥かに強い。
しかし、太郎の鋭い攻めは十一歳とは到底思えない物であった。磨けば光る物があると、政次郎は思った。
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