帯刀医師 田村政次郎

第五話 医創流対北条忍術

三

 政次郎と綱氏が戦いはじめてから早くも一刻が経った。互いに疲れはて、傷を幾つも追っている。
 まだまだ緊張感が漂っている時、突然綱氏が構えを解いた。
「田村公、もう仕舞いにしませぬか。」
意外な提案であった。勝敗を着けず、引き分けにしようと言ってきたのだ。思いもよらぬ提案に少々戸惑ったが、すぐに頷き、互いに刀を納めた。
 話をしようと、二人の距離が縮まり始めた時だった。二人の間を矢が風邪を斬った。それと同時に、林の中から浪人風の男達が出てきた。既に皆鯉口を切って、柄に手をかけている。
 政次郎と綱氏が睨み付けると、一斉に抜刀して殺気を放った。
 普段の二人であればこのような相手など一人分も要らない相手ではあるが、今は二人とも傷を追い、疲労も溜まっている。今の二人で相手にするには、かなり厳しい。
 言うことを聞かない身体を相手に、二人は抜刀した。