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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
剣士ベネット
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ベネットが離れてからも彼女のことが印象に残っていた。
きっと、エルフのリサに雰囲気が似ていたからかもしれない。
人間とエルフで種族は異なるが、さっぱりしていそうなところが共通している。
今頃、リサはどうしているだろう。
ウィリデの人たちは元気にしているだろうか。
もっとも、向こうはモンスターの支配がないので、そこまで心配ではない。
さらに上級魔術師がいて、フォンスに行けばクルトやシモンが控えている。
簡単な準備が済んだところで、エスラ行きに選ばれた者が集められた。
そして、市民や女王がいるのと同じ部屋に整列させられた。
出陣式のような雰囲気だった。
「少数精鋭ではありますが、ダスク奪還への布石として、エスラをモンスターの支配から解放して参ります」
イアンは女王に向けるように、丁寧な言葉で説明した。
「イアン、それから皆さん、どうかご無事で」
「はっ!」
女王という存在は特別なようで、彼女の言葉は重たい意味があるらしい。
ダスクから選ばれた兵士やイアンは深々と頭を下げていた。
出発前の準備が整うと、俺を含めた八人は砦を出発した。
木々の隙間に見える太陽は高くなり、もうすぐ昼間になるところだった。
「砦の周りには見当たらないが、この先にモンスターが見回りをしているかもしれない。くれぐれも注意してくれ」
全員が歩き始めたところで、オーウェンがこう呼びかけた。
俺たちは周囲を警戒しながら早足で歩いていた。
砦を覆い隠すように生えた木立を通り抜けると、街道のように平らな道に出た。
ここを右に行けばダスク方面、左に行けばエスラに向かうことになる。
イアンとオーウェンはわずかな瞬間、互いに目を見合わせたように思われたが、彼らはそのままエスラ方面に進んでいった。
正直なところ、不安がないわけではない。
ネクロマンサーはどうにか攻略できたが、今度も強敵が待ち構える可能性はある。
モンスターはエスラの守りを固めているらしく、見かけることはなかった。
道なりに進んでいくと、市街地へ続く地下通路の前に到着した。
「すでに見つかっている可能性もある。注意して中に進もう」
オーウェンが先頭に立って、地下への階段を下っていった。
彼に続いてイアンや他の仲間たちも進んでいく。
「あら、お先にどうぞ」
「ああっ、どうも」
最後に残ったのは自分とベネットで、彼女が先を譲ってくれた。
足元に気をつけながら地下へと足を踏み入れる。
階段を進むほど薄暗くなり、左手に火の魔術を灯(とも)した。
モンスターの存在が気にかかるが、今のところはいないようだ。
狭い通路を進むと、オーウェンたちの組織の施設についた。
「全員いるな。補給は特に必要ないから、このまま先を急ごう」
オーウェンは人数を確認してから、すぐに動き始めた。
遅れないようについていったところで、皆が頑丈な扉の前で立ち止まっていた。
「これだけの扉があれば、侵入を許さないというわけか」
「ひとまずここまでは。この先はどうなのか分からない」
オーウェンとイアンが短く言葉を交わした。
オーウェンは鍵を解錠すると、慎重な様子で扉を押し開いた。
「……どうだ?」
「付近にはいないようだ」
二人は確認を終えると、周囲を警戒しながら歩き始めた。
俺と他の仲間はそれに続いていく。
天井から光が差しこんでいるものの、全体的に薄暗い。
一人だったら、あまり長居したくない場所だった。
オークと戦った時はそんなことを気にする余裕がなかったことに気づく。
「――しっ、静かに」
オーウェンの言葉で空気が張り詰めるのを感じた。
前方を注視すると、何かが足音を立てて近づいてくる。
最初はゆっくりだったが、こちらに狙いをつけたように速くなった。
「ゴブリンだ!」
「迎え撃つぞ!」
複数のゴブリンが迫っていた。
斧や刃物を持っており、明らかに危険だった。
「――ここはわたしに任せてもらえる?」
ベネットは俺の近くにいたはずだが、いつの間にか先頭に立っていた。
「オーウェン、彼女は腕が立つ。任せてもらえないか」
「……わかった。危険があればすぐに助太刀する」
「その必要はないと思うわ」
ベネットは滑らかな動作で鞘から剣を引き抜いた。
矢面に立った彼女めがけてゴブリンたちが突進していく。
「――最近、運動不足だったのよね」
彼女は世間話でもするような口調でそうこぼした。
そして、軽やかな身のこなしで敵をなで斬りにしていった。
完成された動きは時代劇の殺陣を見ているようだった。
ゴブリンの攻撃はベネットにかすりもせず、彼女の斬撃は見事に命中する。
凄まじい実力を目にして、彼女とシモンの姿が重なるように思えた。
それほどまでにベネットは強く、鮮烈な印象を受けた。
きっと、エルフのリサに雰囲気が似ていたからかもしれない。
人間とエルフで種族は異なるが、さっぱりしていそうなところが共通している。
今頃、リサはどうしているだろう。
ウィリデの人たちは元気にしているだろうか。
もっとも、向こうはモンスターの支配がないので、そこまで心配ではない。
さらに上級魔術師がいて、フォンスに行けばクルトやシモンが控えている。
簡単な準備が済んだところで、エスラ行きに選ばれた者が集められた。
そして、市民や女王がいるのと同じ部屋に整列させられた。
出陣式のような雰囲気だった。
「少数精鋭ではありますが、ダスク奪還への布石として、エスラをモンスターの支配から解放して参ります」
イアンは女王に向けるように、丁寧な言葉で説明した。
「イアン、それから皆さん、どうかご無事で」
「はっ!」
女王という存在は特別なようで、彼女の言葉は重たい意味があるらしい。
ダスクから選ばれた兵士やイアンは深々と頭を下げていた。
出発前の準備が整うと、俺を含めた八人は砦を出発した。
木々の隙間に見える太陽は高くなり、もうすぐ昼間になるところだった。
「砦の周りには見当たらないが、この先にモンスターが見回りをしているかもしれない。くれぐれも注意してくれ」
全員が歩き始めたところで、オーウェンがこう呼びかけた。
俺たちは周囲を警戒しながら早足で歩いていた。
砦を覆い隠すように生えた木立を通り抜けると、街道のように平らな道に出た。
ここを右に行けばダスク方面、左に行けばエスラに向かうことになる。
イアンとオーウェンはわずかな瞬間、互いに目を見合わせたように思われたが、彼らはそのままエスラ方面に進んでいった。
正直なところ、不安がないわけではない。
ネクロマンサーはどうにか攻略できたが、今度も強敵が待ち構える可能性はある。
モンスターはエスラの守りを固めているらしく、見かけることはなかった。
道なりに進んでいくと、市街地へ続く地下通路の前に到着した。
「すでに見つかっている可能性もある。注意して中に進もう」
オーウェンが先頭に立って、地下への階段を下っていった。
彼に続いてイアンや他の仲間たちも進んでいく。
「あら、お先にどうぞ」
「ああっ、どうも」
最後に残ったのは自分とベネットで、彼女が先を譲ってくれた。
足元に気をつけながら地下へと足を踏み入れる。
階段を進むほど薄暗くなり、左手に火の魔術を灯(とも)した。
モンスターの存在が気にかかるが、今のところはいないようだ。
狭い通路を進むと、オーウェンたちの組織の施設についた。
「全員いるな。補給は特に必要ないから、このまま先を急ごう」
オーウェンは人数を確認してから、すぐに動き始めた。
遅れないようについていったところで、皆が頑丈な扉の前で立ち止まっていた。
「これだけの扉があれば、侵入を許さないというわけか」
「ひとまずここまでは。この先はどうなのか分からない」
オーウェンとイアンが短く言葉を交わした。
オーウェンは鍵を解錠すると、慎重な様子で扉を押し開いた。
「……どうだ?」
「付近にはいないようだ」
二人は確認を終えると、周囲を警戒しながら歩き始めた。
俺と他の仲間はそれに続いていく。
天井から光が差しこんでいるものの、全体的に薄暗い。
一人だったら、あまり長居したくない場所だった。
オークと戦った時はそんなことを気にする余裕がなかったことに気づく。
「――しっ、静かに」
オーウェンの言葉で空気が張り詰めるのを感じた。
前方を注視すると、何かが足音を立てて近づいてくる。
最初はゆっくりだったが、こちらに狙いをつけたように速くなった。
「ゴブリンだ!」
「迎え撃つぞ!」
複数のゴブリンが迫っていた。
斧や刃物を持っており、明らかに危険だった。
「――ここはわたしに任せてもらえる?」
ベネットは俺の近くにいたはずだが、いつの間にか先頭に立っていた。
「オーウェン、彼女は腕が立つ。任せてもらえないか」
「……わかった。危険があればすぐに助太刀する」
「その必要はないと思うわ」
ベネットは滑らかな動作で鞘から剣を引き抜いた。
矢面に立った彼女めがけてゴブリンたちが突進していく。
「――最近、運動不足だったのよね」
彼女は世間話でもするような口調でそうこぼした。
そして、軽やかな身のこなしで敵をなで斬りにしていった。
完成された動きは時代劇の殺陣を見ているようだった。
ゴブリンの攻撃はベネットにかすりもせず、彼女の斬撃は見事に命中する。
凄まじい実力を目にして、彼女とシモンの姿が重なるように思えた。
それほどまでにベネットは強く、鮮烈な印象を受けた。
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