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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
装備品の調達 その2
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「ちなみに、それを金額にするとすごそうですけど……」
「お代を頂くなんてとんでもない。見ず知らずの私を助けてもらった恩がありますから、気軽に受け取ってください」
基本的にこの世界では、どこの国でも金属の価値は高かった。
それにも関わらず、希少な金属で作られたものをくれるとは。
恩返しが目的で助けたわけではないが、こんなかたちで返ってくるとは予想しなかった。
リカルドとの話に区切りがついたところで、別のドワーフに採寸してもらった。
今は戦いがなく、鍛冶師の手が空いていることも多いため、翌日には完成する予定ということだった。
わざわざウィリデに帰るのも手間だったので、街中の宿に泊まることにした。
翌日の朝。
枕が変わると眠りが浅くなると聞くが、昨晩は熟睡できた。
俺は宿を出てから、カルマンの朝市を見て回り、異国情緒――正しくは異世界だが――漂う風景を眺めてから工房に向かった。
工房の入り口に着くと、すでに奥の方でドワーフたちが作業中だった。
朝から精が出る姿は、まるで日本の職人のようだ。
建物の中に入ったところで、リカルドが立っているのが目に入った。
彼は責任ある立場のようなので、職人というよりも現場監督みたいな感じなのだろうか。
「おはよう、リカルド」
「カナタ殿、おはようございます」
リカルドは穏やかな笑みを浮かべている。
その後ろにはマネキンのようなものに装着された防具が目に入った。
「もしかして、それが完成品ですか?」
「頂いた要望通りのものができました。早速、着てみてください」
彼はマネキンから胸当てのようなものを外して近くのテーブルに置き、その下にある鎖かたびらも一緒に外した。
「こちらが軽い金属で作ったかたびらです。胸当ても防御力が高いですが、衝撃吸収に優れているのはかたびらの方でしょうな」
「すごいクオリティですね。ちなみに軽い金属ってなんですか?」
「それは企業秘密です。お答えできません」
リカルドは自信ありげに笑みを浮かべた。
さぞかし、優れた素材なのだろう。
「では、着てみますね」
「どうぞ、どうぞ」
俺はまず、鎖かたびらに袖を通すことにした。
「――うわっ、軽い」
手にした瞬間、あまりに重量感がないので驚いてしまった。
布を手にしているのとほとんど変わらない。
体感的には重めのコートやジャケットを手にしているような感じだ。
「――しかも、柔らかい」
身につけてみると、着心地までも衣服のそれに近かった。
それでも、指先で触れれば金属のように冷たく硬い感触もある。
「すごい素材ですね。ただ、柔らかすぎて強度が気になりますね」
「そう戸惑われるのも無理のないこと」
リカルドはそう口にしてから、近くにあった小ぶりのナイフを手にした。
「試しに強度を証明して見せましょう」
「まさか……」
彼はこちらの腹部にナイフを突き刺した。
しかし、まったく刃が通る気配はなかった。
「この通り、並の武器では傷つけることすらできません」
リカルドの言う通りに、鎖かたびらに傷はなかった。
「衝撃吸収性もお見せしたいですが、高いところから落下して頂く必要があるので、それはやめておくとしましょう」
「さすがにそれを試すのは無茶ですね」
鎖かたびらの説明が終わった後、ミスリルの胸当てを受け取った。
事前に聞いていたのと違わずに非常に軽く、銀色の光沢のある防具だった。
防具の話が済んでから、護身用に短剣と長剣の間ぐらいの剣を受け取った。
「お代を頂くなんてとんでもない。見ず知らずの私を助けてもらった恩がありますから、気軽に受け取ってください」
基本的にこの世界では、どこの国でも金属の価値は高かった。
それにも関わらず、希少な金属で作られたものをくれるとは。
恩返しが目的で助けたわけではないが、こんなかたちで返ってくるとは予想しなかった。
リカルドとの話に区切りがついたところで、別のドワーフに採寸してもらった。
今は戦いがなく、鍛冶師の手が空いていることも多いため、翌日には完成する予定ということだった。
わざわざウィリデに帰るのも手間だったので、街中の宿に泊まることにした。
翌日の朝。
枕が変わると眠りが浅くなると聞くが、昨晩は熟睡できた。
俺は宿を出てから、カルマンの朝市を見て回り、異国情緒――正しくは異世界だが――漂う風景を眺めてから工房に向かった。
工房の入り口に着くと、すでに奥の方でドワーフたちが作業中だった。
朝から精が出る姿は、まるで日本の職人のようだ。
建物の中に入ったところで、リカルドが立っているのが目に入った。
彼は責任ある立場のようなので、職人というよりも現場監督みたいな感じなのだろうか。
「おはよう、リカルド」
「カナタ殿、おはようございます」
リカルドは穏やかな笑みを浮かべている。
その後ろにはマネキンのようなものに装着された防具が目に入った。
「もしかして、それが完成品ですか?」
「頂いた要望通りのものができました。早速、着てみてください」
彼はマネキンから胸当てのようなものを外して近くのテーブルに置き、その下にある鎖かたびらも一緒に外した。
「こちらが軽い金属で作ったかたびらです。胸当ても防御力が高いですが、衝撃吸収に優れているのはかたびらの方でしょうな」
「すごいクオリティですね。ちなみに軽い金属ってなんですか?」
「それは企業秘密です。お答えできません」
リカルドは自信ありげに笑みを浮かべた。
さぞかし、優れた素材なのだろう。
「では、着てみますね」
「どうぞ、どうぞ」
俺はまず、鎖かたびらに袖を通すことにした。
「――うわっ、軽い」
手にした瞬間、あまりに重量感がないので驚いてしまった。
布を手にしているのとほとんど変わらない。
体感的には重めのコートやジャケットを手にしているような感じだ。
「――しかも、柔らかい」
身につけてみると、着心地までも衣服のそれに近かった。
それでも、指先で触れれば金属のように冷たく硬い感触もある。
「すごい素材ですね。ただ、柔らかすぎて強度が気になりますね」
「そう戸惑われるのも無理のないこと」
リカルドはそう口にしてから、近くにあった小ぶりのナイフを手にした。
「試しに強度を証明して見せましょう」
「まさか……」
彼はこちらの腹部にナイフを突き刺した。
しかし、まったく刃が通る気配はなかった。
「この通り、並の武器では傷つけることすらできません」
リカルドの言う通りに、鎖かたびらに傷はなかった。
「衝撃吸収性もお見せしたいですが、高いところから落下して頂く必要があるので、それはやめておくとしましょう」
「さすがにそれを試すのは無茶ですね」
鎖かたびらの説明が終わった後、ミスリルの胸当てを受け取った。
事前に聞いていたのと違わずに非常に軽く、銀色の光沢のある防具だった。
防具の話が済んでから、護身用に短剣と長剣の間ぐらいの剣を受け取った。
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