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揺れる異世界 ―戦乱のフォンス編―
夜襲に気をつけて その2
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「カナタさん、外に何かありましたか?」
宿屋の中に戻ると、エルネスが立っていた。
「いや、何というか、屋外のチェックをですね」
途中で居眠りして、外の様子が心配になったとは言いづらかった。
俺は何事もないふりを装いつつ、置いてあった椅子に座った。
「ところで、外に行ったらフォンスの人がこの辺を見張ってくれてましたよ」
「そうですか、それなら僕たちでやる必要はないかもしれませんね」
エルネスは納得したように首を縦に振った。
「適当に交代しようと思っていたのですが、見張りはなしにしましょう」
「ピンポイントにここが狙われるとも考えにくいですよね」
夜襲されるなら、兵士が休んでいる馬車や狙いやすいところだと思うものの、目立つ場所はクルトやシモンが守りを固めているだろう。
それに見張りがいる宿屋をわざわざ襲撃するとは思えない。
「今日はいろんなことがあったので、できれば寝ていたいです」
「たしかに、いくらエルネスでも疲れますよね」
距離感が近くなってきたのか、彼は素直に思っていることを話してくれるようになった気がする。以前なら疲れていても疲れたとは言わなかったはずだ。
「それじゃあ、部屋に戻りますか」
「ええ、そうしましょう」
俺たちはそれぞれの部屋で眠ることにした。
もしも襲撃されたら困るので、ベッドを窓から離れた位置に移動しておいた。
「ふわぁ、よく寝た」
翌朝、窓からまばゆい朝日が差しこんでいた。
鳥たちのさえずりが聞こえてくるような爽やかな目覚めだった。
窓が割られたり、部屋の中が荒らされていたりということはなかった。
寝起きの頭で考えてみたが、クルトは不安にさせようとしたわけではなく、単に気づかいとして教えてくれただけのような気がした。
戸締まりに気をつけて的な感覚で、夜襲に気をつけてと伝えたのかもしれない。
むずかしいことはさておき、熟睡できてよかった。
宿の水瓶がそのままになっていて、わりと水がきれいだったので顔を洗った。
それから身支度をして、宿屋の玄関付近で三人が起きてくるのを待った。
「おはようございます」
「エルネス、おはようございます」
「何事もなかったみたいですね。おかげさまでゆっくり休めました」
エルネスは心身ともに充実した状態に見えた。
そういえば、昨日は少し疲れていたような気がする。
「二人とも、おはよう~」
「おはようございます。やっぱり、人間には八時間睡眠が必要ですね」
呑気な様子でクリスタが、謎のコメントと共にヘルマンが出てきた。
俺たちは四人で宿を出た。
今は戦闘状態というわけではなく、まずはクルトたちに会ってみることにした。
「おはようございます」
「おやっ、おはよう。昨日はよく眠れたか」
「はい、宿の近くに見張りをおいてくれたみたいでありがとうございました。おかげで安心して寝れました」
「そうか、それはよかったな。兵士は夜警に慣れているから、そういったことはこちらに任せてほしい。君たちは大事な戦力でもあるが、戦友でもあるから負担を少なくしたいんだ」
クルトの口から戦友という言葉が出てきて驚いた。
普通の会話で照れくさいことを言う人だ。
「いやー、おれはあんまり寝てないんで、今から寝かせてください」
冗談めいたことを言いながら、シモンがやってきた。
「シモンは昨日の晩に襲撃者を退けていたから、睡眠時間は短いはずだ」
クルトがの説明で、衝撃の事実が発覚した。
「夜襲あったんですね」
「ああっ、数人きただけだから、大したことはなかった」
「もうちょっと工夫してくればいいんですけどね。暗ければバレないだろうっていうのは読みが浅すぎるってもんです」
シモンは誇るでも謙遜するでもなく、敵を跳ね返すのはごく当たり前のことだと言わんばかりの自然な様子だった。
戦いへの驕りや恐れが見られないのは羨ましく思えた。
「もう少ししたら、夜警に当たっていた兵士たちの仮眠が終わる。その後に、国境沿いの様子を見に行こうと思う。言うまでもないが、君たちには同行してもらいたい」
クルトは強制するような言い方はしなかった。
俺たちはそれに同意して、彼らに同行することになった。
宿屋の中に戻ると、エルネスが立っていた。
「いや、何というか、屋外のチェックをですね」
途中で居眠りして、外の様子が心配になったとは言いづらかった。
俺は何事もないふりを装いつつ、置いてあった椅子に座った。
「ところで、外に行ったらフォンスの人がこの辺を見張ってくれてましたよ」
「そうですか、それなら僕たちでやる必要はないかもしれませんね」
エルネスは納得したように首を縦に振った。
「適当に交代しようと思っていたのですが、見張りはなしにしましょう」
「ピンポイントにここが狙われるとも考えにくいですよね」
夜襲されるなら、兵士が休んでいる馬車や狙いやすいところだと思うものの、目立つ場所はクルトやシモンが守りを固めているだろう。
それに見張りがいる宿屋をわざわざ襲撃するとは思えない。
「今日はいろんなことがあったので、できれば寝ていたいです」
「たしかに、いくらエルネスでも疲れますよね」
距離感が近くなってきたのか、彼は素直に思っていることを話してくれるようになった気がする。以前なら疲れていても疲れたとは言わなかったはずだ。
「それじゃあ、部屋に戻りますか」
「ええ、そうしましょう」
俺たちはそれぞれの部屋で眠ることにした。
もしも襲撃されたら困るので、ベッドを窓から離れた位置に移動しておいた。
「ふわぁ、よく寝た」
翌朝、窓からまばゆい朝日が差しこんでいた。
鳥たちのさえずりが聞こえてくるような爽やかな目覚めだった。
窓が割られたり、部屋の中が荒らされていたりということはなかった。
寝起きの頭で考えてみたが、クルトは不安にさせようとしたわけではなく、単に気づかいとして教えてくれただけのような気がした。
戸締まりに気をつけて的な感覚で、夜襲に気をつけてと伝えたのかもしれない。
むずかしいことはさておき、熟睡できてよかった。
宿の水瓶がそのままになっていて、わりと水がきれいだったので顔を洗った。
それから身支度をして、宿屋の玄関付近で三人が起きてくるのを待った。
「おはようございます」
「エルネス、おはようございます」
「何事もなかったみたいですね。おかげさまでゆっくり休めました」
エルネスは心身ともに充実した状態に見えた。
そういえば、昨日は少し疲れていたような気がする。
「二人とも、おはよう~」
「おはようございます。やっぱり、人間には八時間睡眠が必要ですね」
呑気な様子でクリスタが、謎のコメントと共にヘルマンが出てきた。
俺たちは四人で宿を出た。
今は戦闘状態というわけではなく、まずはクルトたちに会ってみることにした。
「おはようございます」
「おやっ、おはよう。昨日はよく眠れたか」
「はい、宿の近くに見張りをおいてくれたみたいでありがとうございました。おかげで安心して寝れました」
「そうか、それはよかったな。兵士は夜警に慣れているから、そういったことはこちらに任せてほしい。君たちは大事な戦力でもあるが、戦友でもあるから負担を少なくしたいんだ」
クルトの口から戦友という言葉が出てきて驚いた。
普通の会話で照れくさいことを言う人だ。
「いやー、おれはあんまり寝てないんで、今から寝かせてください」
冗談めいたことを言いながら、シモンがやってきた。
「シモンは昨日の晩に襲撃者を退けていたから、睡眠時間は短いはずだ」
クルトがの説明で、衝撃の事実が発覚した。
「夜襲あったんですね」
「ああっ、数人きただけだから、大したことはなかった」
「もうちょっと工夫してくればいいんですけどね。暗ければバレないだろうっていうのは読みが浅すぎるってもんです」
シモンは誇るでも謙遜するでもなく、敵を跳ね返すのはごく当たり前のことだと言わんばかりの自然な様子だった。
戦いへの驕りや恐れが見られないのは羨ましく思えた。
「もう少ししたら、夜警に当たっていた兵士たちの仮眠が終わる。その後に、国境沿いの様子を見に行こうと思う。言うまでもないが、君たちには同行してもらいたい」
クルトは強制するような言い方はしなかった。
俺たちはそれに同意して、彼らに同行することになった。
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