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揺れる異世界 ―戦乱のフォンス編―
クリスタとヘルマン その1
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俺たち四人は、前方に見えていた町に向かって慎重に移動していた。
以前、エルネスと話した時に気がかりなことがあって、大半の人がカルマンを恐れているものの、実際にどれだけ危険なのか把握できていないということだ。
俺とエルネスでクルトたちを助けた時はあっさりと引き上げたので、偵察を兼ねた部隊だったような気がする。
国同士の交流がない以上、カルマンのことは謎が多いのが現状だ。
仮に本隊が想像を超えるような規模だった場合、シモンやエルネスのような個の強さが際立つ戦力がいても、押し返せるかは分からない。
「カナタちゃん、心配そうな顔ね」
クリスタが無邪気な様子で声をかけてきた。
ふと、エレノア先生やリサを幼くしたような印象を受けて、これから戦いに赴くには若すぎる気がした。エルフが若く見えやすいのを差し引いても年下に見える。
「それはまあ、さすがに実戦間近なので」
「大丈夫、大丈夫。わたしとヘルマンがいるから、大船に乗った気持ちでいて」
「彼女の言うとおりです。戦いの中で、我々の実力をお見せしましょう」
二人の言葉は心強いが、カルマンと同様に彼らの実力も分からないままだった。
距離が近づくほど、町から騒がしい様子が伝わってきた。
単なる喧騒ではない。怒声や何か指示を出すよう声が混ざっている。
「敵と間違われるのは避けたいので、クルトたちと合流してから戦いましょう」
「はい」
町の入口まで敵と遭遇せずに、移動することができた。
すでに戦いの火蓋は切って下ろされたようで、道のところどころに両軍の兵士が倒れていた。
この前はクルトを助けるのに必死で気づかなかったが、その生々しい光景にめまいを覚えそうになる。
なるべく目を向けないようにしながら、フォンスの兵士を探した。
街道で戦いになっていればよいのだが、町の中では建物が死角になりやすい。
どこから襲撃を受けるか分からず、神経がすり減るようなストレスを感じた。
「……カナタさん、こっちです」
エルネスに呼びかけられて、民家の影に身を隠した。
「あっ、クルトにシモンが」
「ええ、二人はいるのですが、苦戦を強いられているようですね」
クルト、シモン、それから彼らの友軍と思しき兵士が数名。
それに対して、カルマン兵の数は十数人を超える。
魔術で援護したいところだが、乱戦になっていて狙いを誤る可能性がある。
エルネスも同じことを考えているようで、敵に気配を悟られないように注意しながら様子を窺っている。
「ふーん、なかなか大変そうなのね」
「一際腕の立つ方がいますが、集中的に狙われて苦戦していますな」
クリスタとヘルマンは半ば他人事のように、呑気な感想を述べた。
「……二人とも、敵に見つかりますって」
「カナタ様、我々にお任せを」
「さあ、はりきっていくわよー」
観察の時間は終わったとばかりに、二人は身を乗り出した。
カルマン兵はクルトたちに手一杯で気づく様子はなかった。
「カナタさん、実は僕自身も二人の実力を知らないところが多いのです」
「……えっ、本当ですか?」
俺たちの反応にかまわず、二人は少しずつ前に進んでいる。
個人差があるので正確には分からないが、マナのゆらぎと魔術発動の準備と思しき動きが確認できた。おそらく、これから魔術を使うのだろう。
「――せーの」
クリスタが片手をかかげると、雷の塊のようなものが発生した。
それらがピンポイントに敵の身体に飛んでいき、直撃した者から順番に痙攣を起こしていった。
以前、エルネスと話した時に気がかりなことがあって、大半の人がカルマンを恐れているものの、実際にどれだけ危険なのか把握できていないということだ。
俺とエルネスでクルトたちを助けた時はあっさりと引き上げたので、偵察を兼ねた部隊だったような気がする。
国同士の交流がない以上、カルマンのことは謎が多いのが現状だ。
仮に本隊が想像を超えるような規模だった場合、シモンやエルネスのような個の強さが際立つ戦力がいても、押し返せるかは分からない。
「カナタちゃん、心配そうな顔ね」
クリスタが無邪気な様子で声をかけてきた。
ふと、エレノア先生やリサを幼くしたような印象を受けて、これから戦いに赴くには若すぎる気がした。エルフが若く見えやすいのを差し引いても年下に見える。
「それはまあ、さすがに実戦間近なので」
「大丈夫、大丈夫。わたしとヘルマンがいるから、大船に乗った気持ちでいて」
「彼女の言うとおりです。戦いの中で、我々の実力をお見せしましょう」
二人の言葉は心強いが、カルマンと同様に彼らの実力も分からないままだった。
距離が近づくほど、町から騒がしい様子が伝わってきた。
単なる喧騒ではない。怒声や何か指示を出すよう声が混ざっている。
「敵と間違われるのは避けたいので、クルトたちと合流してから戦いましょう」
「はい」
町の入口まで敵と遭遇せずに、移動することができた。
すでに戦いの火蓋は切って下ろされたようで、道のところどころに両軍の兵士が倒れていた。
この前はクルトを助けるのに必死で気づかなかったが、その生々しい光景にめまいを覚えそうになる。
なるべく目を向けないようにしながら、フォンスの兵士を探した。
街道で戦いになっていればよいのだが、町の中では建物が死角になりやすい。
どこから襲撃を受けるか分からず、神経がすり減るようなストレスを感じた。
「……カナタさん、こっちです」
エルネスに呼びかけられて、民家の影に身を隠した。
「あっ、クルトにシモンが」
「ええ、二人はいるのですが、苦戦を強いられているようですね」
クルト、シモン、それから彼らの友軍と思しき兵士が数名。
それに対して、カルマン兵の数は十数人を超える。
魔術で援護したいところだが、乱戦になっていて狙いを誤る可能性がある。
エルネスも同じことを考えているようで、敵に気配を悟られないように注意しながら様子を窺っている。
「ふーん、なかなか大変そうなのね」
「一際腕の立つ方がいますが、集中的に狙われて苦戦していますな」
クリスタとヘルマンは半ば他人事のように、呑気な感想を述べた。
「……二人とも、敵に見つかりますって」
「カナタ様、我々にお任せを」
「さあ、はりきっていくわよー」
観察の時間は終わったとばかりに、二人は身を乗り出した。
カルマン兵はクルトたちに手一杯で気づく様子はなかった。
「カナタさん、実は僕自身も二人の実力を知らないところが多いのです」
「……えっ、本当ですか?」
俺たちの反応にかまわず、二人は少しずつ前に進んでいる。
個人差があるので正確には分からないが、マナのゆらぎと魔術発動の準備と思しき動きが確認できた。おそらく、これから魔術を使うのだろう。
「――せーの」
クリスタが片手をかかげると、雷の塊のようなものが発生した。
それらがピンポイントに敵の身体に飛んでいき、直撃した者から順番に痙攣を起こしていった。
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