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揺れる異世界 ―戦乱のフォンス編―
強者求む~二人の仲間集め~ その2
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二人がいるのはレギナの中心に近い場所で、水の宮殿からもそう離れていない。
たしかに、自分が目につくのはよくないかとクルトは思った。
見こみがどれぐらいあるのか分からないが、通行人の数はそれなりに多い。
通り過ぎる者たちの何割かは、シモンが掲げる内容に視線を向けていた。
もっとも、5000レガルという金額を目にして、ほとんどの者は胡散臭そうな顔をして遠巻きに見ているだけだった。
それを見てクルトは、やはり難しいかと思った。
特に何も起きないまま、しばらく時間が経過した。
シモンの様子に変化はなく、愛想笑いにも見える表情を浮かべて立っている。
そんな彼の隣でクルトは辛抱強く待っていた。
知り合いや他の騎士に見られたら恥ずかしいという羞恥心もあったが、クルトの中でシモンに賭けたいという思いが大きく作用していた。
その場でシモンが立ち続けていると、大柄で目つきの鋭い男が立ち止まった。
男は興味ありげに看板の内容を見ていたが、やがて侮蔑の表情を浮かべた。
「ははっ、馬鹿にしてるのか。お前を倒したら5000レガルって」
「いやー、ホントですよ。そこに出資者がいますし」
シモンはクルトを指さした。
クルトはこの場の展開に戸惑いながら成り行きを見守った。
「まあいいぜ。ぶっ飛ばして、有り金全部出してもらうからな」
「……クルト、これを」
「あ、ああっ……」
クルトが看板を受け取って確認すると、強者求むの下に小さく『私を倒したら』と条件が付けられていた。
彼はくだらなさに笑いそうになりながら、シモンの様子に目を向けた。
すでに両者の間合いは近い。
脱力しているシモンに比べて、男は血の気の多そうな顔をしている。
先手を切ったのは男の方で、力任せに右の拳を突き出した。
シモンが細身の体格で油断したのか、クルトから見て雑な動きだった。
シモンはその一撃を軽々とかわし、相手を挑発するように手招きした。
それを見た男は怒りで顔をこわばらせて、連続の打撃を繰り出した。
しかし、シモンはそれを意に介さず、軽い身のこなしでかわしていく。
クルトが今までに見たことがない身体の使い方だった。
――そもそも、どうやって動いているのかわからない。
シモンの動きを目で追いながら、クルトは大きな疑問を抱いた。
彼がその考えに意識を奪われる間に、男は息を切らすようになっていた。
通行人は距離をおいており、離れたところから様子を見守っている。
巻きこまれそうな人がいないのを見て、クルトは安心した。
「クルト、一人目は空振りでした。残念です」
シモンは汗一つかかず、涼しげな様子でいった。
それを見たクルトはとんでもない戦力を得てしまったと、畏怖の念に近いものを感じるような気持ちになっていた。
「……この野郎、なめやがって」
すでに勝負は決したように見えたが、男は腰に携えた剣を鞘から引き抜いた。
シモンはすぐさま向き直り、男と対峙した。
「――剣を抜いていいのは、殺す覚悟と殺される覚悟ができた時。それ以外の場面で抜くのは滑稽というもんです」
シモンは抑揚の少ない声で口にすると、素早い動作で前に踏み出した。
そのまま左足を振り上げ、男の剣を蹴り上げた。
男が呆気にとられている間に頭上から落下してくる剣をキャッチして、シモンは剣先を相手に突きつけた。
「はい、ごくろうさまでした。いい見世物になりました」
「……は、はひ」
男は顔面蒼白な状態で剣先に目を合わせた。
シモンは薄い笑みを浮かべたまま、突きつけた剣を手元に引いた。
「命は大切にしましょうね」
シモンはそういって、男に向けて剣を放り投げた。
男は戦意喪失しており、剣を鞘に収めて怯えるようにその場を立ち去った。
「――なんだ、何の騒ぎだ!?」
騒ぎを聞きつけたらしい衛兵が駆け寄っている。
それに気づいたクルトとシモンはその場を足早に離れた。
たしかに、自分が目につくのはよくないかとクルトは思った。
見こみがどれぐらいあるのか分からないが、通行人の数はそれなりに多い。
通り過ぎる者たちの何割かは、シモンが掲げる内容に視線を向けていた。
もっとも、5000レガルという金額を目にして、ほとんどの者は胡散臭そうな顔をして遠巻きに見ているだけだった。
それを見てクルトは、やはり難しいかと思った。
特に何も起きないまま、しばらく時間が経過した。
シモンの様子に変化はなく、愛想笑いにも見える表情を浮かべて立っている。
そんな彼の隣でクルトは辛抱強く待っていた。
知り合いや他の騎士に見られたら恥ずかしいという羞恥心もあったが、クルトの中でシモンに賭けたいという思いが大きく作用していた。
その場でシモンが立ち続けていると、大柄で目つきの鋭い男が立ち止まった。
男は興味ありげに看板の内容を見ていたが、やがて侮蔑の表情を浮かべた。
「ははっ、馬鹿にしてるのか。お前を倒したら5000レガルって」
「いやー、ホントですよ。そこに出資者がいますし」
シモンはクルトを指さした。
クルトはこの場の展開に戸惑いながら成り行きを見守った。
「まあいいぜ。ぶっ飛ばして、有り金全部出してもらうからな」
「……クルト、これを」
「あ、ああっ……」
クルトが看板を受け取って確認すると、強者求むの下に小さく『私を倒したら』と条件が付けられていた。
彼はくだらなさに笑いそうになりながら、シモンの様子に目を向けた。
すでに両者の間合いは近い。
脱力しているシモンに比べて、男は血の気の多そうな顔をしている。
先手を切ったのは男の方で、力任せに右の拳を突き出した。
シモンが細身の体格で油断したのか、クルトから見て雑な動きだった。
シモンはその一撃を軽々とかわし、相手を挑発するように手招きした。
それを見た男は怒りで顔をこわばらせて、連続の打撃を繰り出した。
しかし、シモンはそれを意に介さず、軽い身のこなしでかわしていく。
クルトが今までに見たことがない身体の使い方だった。
――そもそも、どうやって動いているのかわからない。
シモンの動きを目で追いながら、クルトは大きな疑問を抱いた。
彼がその考えに意識を奪われる間に、男は息を切らすようになっていた。
通行人は距離をおいており、離れたところから様子を見守っている。
巻きこまれそうな人がいないのを見て、クルトは安心した。
「クルト、一人目は空振りでした。残念です」
シモンは汗一つかかず、涼しげな様子でいった。
それを見たクルトはとんでもない戦力を得てしまったと、畏怖の念に近いものを感じるような気持ちになっていた。
「……この野郎、なめやがって」
すでに勝負は決したように見えたが、男は腰に携えた剣を鞘から引き抜いた。
シモンはすぐさま向き直り、男と対峙した。
「――剣を抜いていいのは、殺す覚悟と殺される覚悟ができた時。それ以外の場面で抜くのは滑稽というもんです」
シモンは抑揚の少ない声で口にすると、素早い動作で前に踏み出した。
そのまま左足を振り上げ、男の剣を蹴り上げた。
男が呆気にとられている間に頭上から落下してくる剣をキャッチして、シモンは剣先を相手に突きつけた。
「はい、ごくろうさまでした。いい見世物になりました」
「……は、はひ」
男は顔面蒼白な状態で剣先に目を合わせた。
シモンは薄い笑みを浮かべたまま、突きつけた剣を手元に引いた。
「命は大切にしましょうね」
シモンはそういって、男に向けて剣を放り投げた。
男は戦意喪失しており、剣を鞘に収めて怯えるようにその場を立ち去った。
「――なんだ、何の騒ぎだ!?」
騒ぎを聞きつけたらしい衛兵が駆け寄っている。
それに気づいたクルトとシモンはその場を足早に離れた。
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