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はじめての異世界 ―ウィリデ探訪編―
ひさしぶりの宿舎
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ほぼ寝たきりのような生活が数日間つづいた後、退院の許可がおりた。
最初にクラウスから言われたとおり、安静にしているだけでほぼ回復していた。
目覚めの鐘が鳴ってしばらく経った頃、俺は宿舎の様子を見に行くことにした。
クラウスの診療所から宿舎までの道のりは覚えていた。
その道すがらアリシアとのやりとりが脳裏をよぎった。
何日か前に日本に行きたいと聞かされた。
あれが一時的なものならよいのだが。
ウィリデほど人々が穏やかで明るい街はなかなか存在しないと思う。
日本どころか地球上探しても、同じようなところは見つかりにくはずだ。
田舎の女の子に君の地元は住みやすい町だよ、灯台もと暗し住めば都だよと説得したところで、なかなか聞く耳をもってもらえそうにないのは、日本もウィリデも共通しているのかもしれない。
色々と考えながら歩くうちに宿舎にたどり着いていた。
俺は入り口のドアを開けて、自分の部屋に入った。
「……予想通りというか何というか」
部屋の主が不在にしていたというのに、ずいぶん清潔で整頓されていた。
おそらく、ミチルが掃除や片付けをしてくれたのだろう。
特に荷物はないので、そのまま椅子に腰かける。
開け放たれた窓から入ってくる涼しい風が心地よかった。
「あっ、おかえなりなさい。カナタさん」
半開きのドアの向こうからミチルの声が聞こえた。
彼女はドアを開いて中に入ってきた。
「部屋をきれいにしてくれてありがとう」
「どういたしまして。エルネス様からクラウス先生のところにいることを聞いたのですが、お身体の調子は大丈夫ですか?」
彼女は少し心配そうな表情でいった。
その様子が本当の家族のように温もりを感じさせた。
「ああっ、大丈夫、大丈夫。安静にしてたら回復したよ」
「そうですか、それはよかったです」
ミチルは小動物のように愛らしい仕草で頷いた。
彼女は小柄で背が低いのでそれが強調される。
ミチルが部屋を出てから、魔術が発動できるか試してみようと思い立った。
すぐにマナの感覚を捉えることができたものの、エルネスの許可を得てから行うことにした。
クラウスは大丈夫だと話していたが、マナに関する知識が心もとない。
大事を取って、魔術の練習は中止にした。
それから、ベッドの上をごろごろしていると、コウモリと対峙したときのことを思い出した。
あの時は必死で分からなかったが、下手をすれば命の危険すらあったはずだ。
日本で普通に生活していたら、経験することのないような瞬間だった。
もしかしたら、クマやトラ、ライオンなどの人間を相手にしても怯まない動物と向き合った時、同じような境地になるのかもしれない。
あの時は全身の感覚が鋭くなっていた。
いつか機会があるのなら、怖いもの見たさで動物園なりサファリパークで試してみたい気もするが、地球へ戻ったら同じように魔術が使えるか予想できない。
魔術が発動できない状態で、猛獣に相対するのはやめておいた方がだろう。
とにかく、無事で済んだからよかったものの、今のままでは力不足だ。
繰り返し考えていたことの答えはこう集約される。
マナ焼けに阻まれながら、段階を踏なければいけないのはもどかしい。
オオコウモリとの戦いでは圧倒的に火力不足だった。
今後のことは師匠とも呼べるエルネスに頼ることになるだろう。
きっと、彼なら力になってくれるはずだ。
俺は明日に備えて、しっかり休むことにした。
最初にクラウスから言われたとおり、安静にしているだけでほぼ回復していた。
目覚めの鐘が鳴ってしばらく経った頃、俺は宿舎の様子を見に行くことにした。
クラウスの診療所から宿舎までの道のりは覚えていた。
その道すがらアリシアとのやりとりが脳裏をよぎった。
何日か前に日本に行きたいと聞かされた。
あれが一時的なものならよいのだが。
ウィリデほど人々が穏やかで明るい街はなかなか存在しないと思う。
日本どころか地球上探しても、同じようなところは見つかりにくはずだ。
田舎の女の子に君の地元は住みやすい町だよ、灯台もと暗し住めば都だよと説得したところで、なかなか聞く耳をもってもらえそうにないのは、日本もウィリデも共通しているのかもしれない。
色々と考えながら歩くうちに宿舎にたどり着いていた。
俺は入り口のドアを開けて、自分の部屋に入った。
「……予想通りというか何というか」
部屋の主が不在にしていたというのに、ずいぶん清潔で整頓されていた。
おそらく、ミチルが掃除や片付けをしてくれたのだろう。
特に荷物はないので、そのまま椅子に腰かける。
開け放たれた窓から入ってくる涼しい風が心地よかった。
「あっ、おかえなりなさい。カナタさん」
半開きのドアの向こうからミチルの声が聞こえた。
彼女はドアを開いて中に入ってきた。
「部屋をきれいにしてくれてありがとう」
「どういたしまして。エルネス様からクラウス先生のところにいることを聞いたのですが、お身体の調子は大丈夫ですか?」
彼女は少し心配そうな表情でいった。
その様子が本当の家族のように温もりを感じさせた。
「ああっ、大丈夫、大丈夫。安静にしてたら回復したよ」
「そうですか、それはよかったです」
ミチルは小動物のように愛らしい仕草で頷いた。
彼女は小柄で背が低いのでそれが強調される。
ミチルが部屋を出てから、魔術が発動できるか試してみようと思い立った。
すぐにマナの感覚を捉えることができたものの、エルネスの許可を得てから行うことにした。
クラウスは大丈夫だと話していたが、マナに関する知識が心もとない。
大事を取って、魔術の練習は中止にした。
それから、ベッドの上をごろごろしていると、コウモリと対峙したときのことを思い出した。
あの時は必死で分からなかったが、下手をすれば命の危険すらあったはずだ。
日本で普通に生活していたら、経験することのないような瞬間だった。
もしかしたら、クマやトラ、ライオンなどの人間を相手にしても怯まない動物と向き合った時、同じような境地になるのかもしれない。
あの時は全身の感覚が鋭くなっていた。
いつか機会があるのなら、怖いもの見たさで動物園なりサファリパークで試してみたい気もするが、地球へ戻ったら同じように魔術が使えるか予想できない。
魔術が発動できない状態で、猛獣に相対するのはやめておいた方がだろう。
とにかく、無事で済んだからよかったものの、今のままでは力不足だ。
繰り返し考えていたことの答えはこう集約される。
マナ焼けに阻まれながら、段階を踏なければいけないのはもどかしい。
オオコウモリとの戦いでは圧倒的に火力不足だった。
今後のことは師匠とも呼べるエルネスに頼ることになるだろう。
きっと、彼なら力になってくれるはずだ。
俺は明日に備えて、しっかり休むことにした。
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