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トリュフともふもふ
積極的なアデル
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パメラと試作をしてから数日が経過した。
町長のためにも何とかしなければと思う日々だった。
そんな中でも自分の店はおろそかにできない。
設備の改装や定休日の設定に関して、頭を悩ませる時期があったものの、今では落ちついて店を回すことができている。
それに加えて補助的な役割だったシリルが腕を上げており、彼の活躍で楽ができるようになっていた。
というわけで、今日も仕事終わりの休憩を満喫している。
この時間に冷えたアイスティーは欠かせない。
お客はもちろんのこと、フレヤを含めた従業員が帰ったので、店の敷地は静かなものだった。
俺はテーブル席の椅子に腰かけて、アデルを待っているところだ。
「あら、待たせてしまったかしら」
そろそろ来る頃かと思ったところで、彼女が現れた。
路地の方から敷地へと鷹揚に歩いてくる。
「休憩してたところなので、問題ありません」
「あなたが呼び出しなんて珍しいわね。もしかして、この前の続き?」
「はい、そうです。トリュフを使った料理は決まりつつあるんですけど、それ以外にスープや小皿料理についての助言をもらえないかと思って」
アデルは少し考えるような間があった後、こちらに目を合わせて頷いた。
「ええ、手伝ってもいいわ。ただ、私にもトリュフを食べられるようにしてほしいところね」
「それはもちろんです。善処します」
「そう、それならいいわ」
みんな大好きトリュフといったところか。
彼女を納得させる手札としての役割がある。
「うちの調理場は焼肉以外の料理を作るのに向いてないので、今からパメラさんの店に行って、場所を貸してもらいます」
「パメラ……紅茶を出す店の店主ね」
俺はエスカとフレヤの三人で、パメラの店を訪れたことがある。
その時、アデルは一緒ではなかった。
「今回、彼女の協力を得ていて、パスタとパンの試作は上手くいってます」
「とにかく、手伝えばいいのね」
アデルは自信を感じさせる態度だった。
「じゃあ、早速行きましょうか」
俺とアデルは店の敷地を出て、パメラの店へと移動した。
「こんにちは、今回もすいません」
店内の調理場に入ると、パメラと従業員が洗い場で片づけをしているところだった。
「マルクさん、ようこそ。後片づけでバタバタしてますが、調理場は使って頂いて構いません」
「ちょうどこの時間が動きやすかったんですけど、忙しいところに申し訳ないです」
「いえいえ、お気になさらず」
俺とパメラは互いに頭を下げ合い、ペコペコ合戦になっていた。
「こんにちは、ちゃんと話すのは今日が初めてね」
その膠着状態を解いたのはアデルだった。
彼女を目にしたパメラが驚くように固まってしまった。
「……パメラさん、どうかしました?」
「マルクさんのお知り合いとは、アデル様でしたのね」
「ええまあ、そうですね」
「王都でも食通として名高い方なのです。先日、お店にお越しくださったそうなのですが、ちょうど休日で」
とりあえず、パメラにとって、アデルは尊敬に値する人物のようだ。
俺は慣れもあってか、以前ほどは構えることはなくなっている。
「パメラ、堅苦しいのはなしにして。私はマルクにアドバイスをするために来ただけだから。調理場は料理人にとって聖域。他人が入ってくると緊張するわよね」
「なんて素敵なお人柄なの。美しいだけでなく、私のような一介の店主を気遣ってくださるなんて」
「パメラさん、少し大げさじゃないですか……」
この状況だとパメラの手を止めてしまい、こちらの作業も始められないので、自己紹介的な流れは切り上げることにした。
「では、調理場を借りますね」
「はい、どうぞ。食材で使いたいものがあれば、仰ってください」
「ありがとうございます。タダで使わせてもらうのは悪いので、パメラさんも完成した料理を食べてみてください」
話が済んだところで、俺は調理場に移動した。
追加する種類は決めているものの、アイデアは固まりきっていない。
「この前のガストロノミーでしたっけ? ああいう感じでトリュフだけでなく、バラムの食材を使えたらと思うんですけど」
「それを言い出したのは私だものね。あれから、この辺りで採れる食材を調べてみたのよ」
「へえ、ありがとうございます」
初対面の頃を思えば、ずいぶん協力的なことだと思った。
「ついでにレシピも大まかに考えたわ」
「おっ、それは聞きたいです」
「まずはスープだけど、ジャガイモのポタージュはどうかしら」
アデルは生き生きした声で言った。
彼女の提案を耳にしてから、先日の試作品のことを思い返した。
「すでに決まっている料理はそれぞれバターとチーズを使うものなので、少し偏りはあっても、バラム産の生乳を使っていると見ることもできますね」
「その組み合わせだと味つけが濃くなりがちだから、小皿料理はあっさりした青菜のソテーにすれば問題ないわよ」
アデルと話しながら提供する際の状況を想定する。
パスタとパンはどちらかを選んでもらって、それにスープとソテーを出す。
その組み合わせなら、重すぎることはないような気がした。
「そうですね。バランスは何とかなりそうなので、まずはポタージュを作ってみますか」
アデルに調理法を聞きながら自分が主導となるつもりだったが、彼女は周りにある調理器具と材料を確かめ始めた。
「……あれ、どうしたんですか?」
「えっ、そっちこそどうしたの。準備するわよ」
アデルの積極さに驚きつつ、俺もポタージュを作る準備を始めた。
町長のためにも何とかしなければと思う日々だった。
そんな中でも自分の店はおろそかにできない。
設備の改装や定休日の設定に関して、頭を悩ませる時期があったものの、今では落ちついて店を回すことができている。
それに加えて補助的な役割だったシリルが腕を上げており、彼の活躍で楽ができるようになっていた。
というわけで、今日も仕事終わりの休憩を満喫している。
この時間に冷えたアイスティーは欠かせない。
お客はもちろんのこと、フレヤを含めた従業員が帰ったので、店の敷地は静かなものだった。
俺はテーブル席の椅子に腰かけて、アデルを待っているところだ。
「あら、待たせてしまったかしら」
そろそろ来る頃かと思ったところで、彼女が現れた。
路地の方から敷地へと鷹揚に歩いてくる。
「休憩してたところなので、問題ありません」
「あなたが呼び出しなんて珍しいわね。もしかして、この前の続き?」
「はい、そうです。トリュフを使った料理は決まりつつあるんですけど、それ以外にスープや小皿料理についての助言をもらえないかと思って」
アデルは少し考えるような間があった後、こちらに目を合わせて頷いた。
「ええ、手伝ってもいいわ。ただ、私にもトリュフを食べられるようにしてほしいところね」
「それはもちろんです。善処します」
「そう、それならいいわ」
みんな大好きトリュフといったところか。
彼女を納得させる手札としての役割がある。
「うちの調理場は焼肉以外の料理を作るのに向いてないので、今からパメラさんの店に行って、場所を貸してもらいます」
「パメラ……紅茶を出す店の店主ね」
俺はエスカとフレヤの三人で、パメラの店を訪れたことがある。
その時、アデルは一緒ではなかった。
「今回、彼女の協力を得ていて、パスタとパンの試作は上手くいってます」
「とにかく、手伝えばいいのね」
アデルは自信を感じさせる態度だった。
「じゃあ、早速行きましょうか」
俺とアデルは店の敷地を出て、パメラの店へと移動した。
「こんにちは、今回もすいません」
店内の調理場に入ると、パメラと従業員が洗い場で片づけをしているところだった。
「マルクさん、ようこそ。後片づけでバタバタしてますが、調理場は使って頂いて構いません」
「ちょうどこの時間が動きやすかったんですけど、忙しいところに申し訳ないです」
「いえいえ、お気になさらず」
俺とパメラは互いに頭を下げ合い、ペコペコ合戦になっていた。
「こんにちは、ちゃんと話すのは今日が初めてね」
その膠着状態を解いたのはアデルだった。
彼女を目にしたパメラが驚くように固まってしまった。
「……パメラさん、どうかしました?」
「マルクさんのお知り合いとは、アデル様でしたのね」
「ええまあ、そうですね」
「王都でも食通として名高い方なのです。先日、お店にお越しくださったそうなのですが、ちょうど休日で」
とりあえず、パメラにとって、アデルは尊敬に値する人物のようだ。
俺は慣れもあってか、以前ほどは構えることはなくなっている。
「パメラ、堅苦しいのはなしにして。私はマルクにアドバイスをするために来ただけだから。調理場は料理人にとって聖域。他人が入ってくると緊張するわよね」
「なんて素敵なお人柄なの。美しいだけでなく、私のような一介の店主を気遣ってくださるなんて」
「パメラさん、少し大げさじゃないですか……」
この状況だとパメラの手を止めてしまい、こちらの作業も始められないので、自己紹介的な流れは切り上げることにした。
「では、調理場を借りますね」
「はい、どうぞ。食材で使いたいものがあれば、仰ってください」
「ありがとうございます。タダで使わせてもらうのは悪いので、パメラさんも完成した料理を食べてみてください」
話が済んだところで、俺は調理場に移動した。
追加する種類は決めているものの、アイデアは固まりきっていない。
「この前のガストロノミーでしたっけ? ああいう感じでトリュフだけでなく、バラムの食材を使えたらと思うんですけど」
「それを言い出したのは私だものね。あれから、この辺りで採れる食材を調べてみたのよ」
「へえ、ありがとうございます」
初対面の頃を思えば、ずいぶん協力的なことだと思った。
「ついでにレシピも大まかに考えたわ」
「おっ、それは聞きたいです」
「まずはスープだけど、ジャガイモのポタージュはどうかしら」
アデルは生き生きした声で言った。
彼女の提案を耳にしてから、先日の試作品のことを思い返した。
「すでに決まっている料理はそれぞれバターとチーズを使うものなので、少し偏りはあっても、バラム産の生乳を使っていると見ることもできますね」
「その組み合わせだと味つけが濃くなりがちだから、小皿料理はあっさりした青菜のソテーにすれば問題ないわよ」
アデルと話しながら提供する際の状況を想定する。
パスタとパンはどちらかを選んでもらって、それにスープとソテーを出す。
その組み合わせなら、重すぎることはないような気がした。
「そうですね。バランスは何とかなりそうなので、まずはポタージュを作ってみますか」
アデルに調理法を聞きながら自分が主導となるつもりだったが、彼女は周りにある調理器具と材料を確かめ始めた。
「……あれ、どうしたんですか?」
「えっ、そっちこそどうしたの。準備するわよ」
アデルの積極さに驚きつつ、俺もポタージュを作る準備を始めた。
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